オドリバエ科Chelipoda属の1種(改題)
* 2013.11.18・追記とタイトル変更 *
「オドリバエ科絵解き検索」の三枝豊平先生が下の写真をご覧になり、オドリバエ科Chelipoda属の1種と確認してくださいましたので、当初漠然と「捕食性のハエの一種」としていたタイトルを表記のように改めました。
山道で、イタドリの葉の上を歩き回っていた小さなハエです。同じ場所で同じ季節に何度か見ているのですが、名前がわかりません。
体長3mmほどでかぼそい感じですが、前脚はカマキリのようです。ちょうどアシナガバエの仲間のように、地上からあまり高くない葉の上を、パトロールするように歩き回ります。
この日は道沿いにざっと数十匹は見たのですが、食事中のものが見つかりませんでした。それで次に古い写真を載せておきます。
10年前に撮ったものですが、場所は同じです。獲物もハエのようです。
(1・2枚目:2010年6月4日 / 3・4枚目:2000年5月22日 ともに神戸市中央区 再度谷)
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コメント
翅脈を見られると、素人でも科の分類にそこそこ自信が持てるのですが・・・・・。かなり大胆なあてずっぽうですが、オドリバエ科 Empididae の Platypalpus属なのかもしれません。1枚目は未硬化状態(teneral)、4枚目は硬化ずみ、の雌でしょうね。下記「一寸のハエ・・・・」のサイトにPlatypalpus属の雄2種が載っていますので眺めてみてください。この科は「一寸のハエ・・・・」のサイトに常駐されている三枝豊平さんに伺うのが最も確実です。ただし、この属とすると、(国内産)60種の標本に対して1種しか名前が付いていない状態だそうで、迷宮入りはほぼ確実です。
http://diptera.jp/usr/local/bin/perl/dipbbs/joyful.cgi?list=pickup&num=3881#3881
投稿: ezo-aphid | 2011年1月 7日 (金) 17時21分
ezo-aphid さん、
実はこのハエも前々から気になっていたものの一つです。
1~2枚目はデジカメ、3~4枚目はポジフィルムをスキャンしたものなので、体色の違いはそのせいかも知れません。
素人なりに「一寸のハエ・・・・」のPlatypalpus属と比べてみると、このハエでは腿節が肥大化してカマキリの前脚のようになっているのがPlatypalpusのように中脚ではなく前脚であること、転節が非常に短い(特に前脚)こと、オドリバエにしては口吻が短いことなどが気になります。
こういうものを撮る時にはどうしても真横から狙いたくなるのですが、翅脈のわかるカットがないかどうか、一度調べて見ます。
投稿: おちゃたてむし | 2011年1月 8日 (土) 00時00分
おおっと、そうですね。中脚の太さなんぞ、まったく見落としてました。Platypalpusの雄は捕獲時に中脚も使うんでしょうかねー。おっしゃる通り、たくさんの相違点があるので、この属は無理かもしれません。しかし、雌雄差とか、Synopeas 雌のような属内多型の例とかも、可能性としてはありますよね。オドリバエの雄は求愛に雌へのプレゼントを用意しなくちゃいけないので、捕獲道具が特化しているとか。もっと、調べないとわからないことが多いです。
もうひとつのオドリバエ科と一緒に、「一寸のハエ・・・・・」の三枝さんにお伺いを立てる方が手っとり早そうですね。
投稿: ezo-aphid | 2011年1月 8日 (土) 00時47分
三枝先生が作ったオドリバエ科の絵解き検索が見つかりましたので、お示ししておきます。それによると、翅脈は属を判別するにはとても重要な形質で、捕獲脚の発達程度、口吻の長さなども使われています。別の参考書によると、脚のはっきりした雌雄2型はよくあるとのことですが、Platypalpus では雌も中脚腿節が膨らむ種がいるので、どうやら画像の雌は別属のようです。
http://furumusi.aez.jp/fly/dl/etoki-empididae.pdf
投稿: ezo-aphid | 2011年1月 8日 (土) 11時37分
ezo-aphid さん、
ご紹介いただいた検索表を見ると、やはり前脚が捕獲用に肥大したものがあるんですね。しかし翅脈の特徴が不明ではその先に進めないようなので、とにかくそれがわかりそうな写真がないか探してみます。出てこなければ来年の初夏に再挑戦としましょう。
投稿: おちゃたてむし | 2011年1月 8日 (土) 20時36分
相変わらず、翅脈の重要性は変わらないのですが・・・・。
Cherifera属に近そう、ということでHemerodromiinae亜科に所属すると仮定しました(ちなみPlatypalpus属はTachydromiinae ハシリバエ亜科に所属)。MNDの検索表を読むと、この亜科では前腿節の内側に毛列があって捕獲脚となり、前基節は中・後基節の2倍以上の長さになってる、のだそうです。次に、arista(触角棘毛)がやたら長いのでChelipodini族に進み、Chelipoda属とPhyllodromia属が有力候補となりますが、両属とも本邦未記録です。どちらも「絵解き検索」に載ってるので、翅脈さえ見られれば確定できるでしょう。
梅雨時前が発生期なのですね、期待していまーす。
投稿: ezo-aphid | 2011年4月23日 (土) 10時16分
ezo-aphid さん、
他力本願ながらだいぶ近づいてきたようで嬉しいです。この種は同じ季節に同じ場所で何度も見ているので多分今年も、と楽観的に期待しています。翅脈の確認ということもありますが、個人的には食事中の姿を是非もう一度撮りたいですね。
投稿: おちゃたてむし | 2011年4月23日 (土) 21時18分
おちゃたてむしさん、
少し似ているコバエが撮れたので、リンクしておきます。あいかわらず解像度低くて、こちらから飛ぶとレベルの差がはっきりしてしまうのですが、、、。
こちらのものとは、中脚の腿節の太さと、触角の形状が異なるので、かなり離れた関係かもしれませんが。
投稿: tukik | 2011年8月24日 (水) 02時05分
tukikさん、おはようございます。
記事拝見しました
別属だと思いますが、オドリバエ科には違いなさそうですね。
ちなみに上の写真のオドリバエは再度今シーズンに撮り直して掲載しています。
http://mushi-akashi.cocolog-nifty.com/blog/2011/07/chelipoda-sp-2d.html
そこでもリンクしていますが、三枝先生の「オドリバエ科の絵解き検索」という資料があるので参考になると思います。
http://furumusi.aez.jp/fly/dl/etoki-empididae.pdf
投稿: おちゃたてむし | 2011年8月24日 (水) 06時53分
偶然にこのサイトを拝見する機会がありました。
この画像のオドリバエはChelipoda属の1種です。日本にはこの仲間は数種生息していますが、研究が進んでいません。
これまで本属のハエは数限りなく採集してきましたが、生態を見る機会を持たず、この画像を拝見して、初めて本属の種も捕食性で、捕獲脚の前脚を実際に用いるということを確信しました。大変貴重な画像であると思います。
なお、拝見するといずれも素晴らしいマクロ撮影の画像ですね。出来れば撮影機材など撮影条件を教えていただければ参考にしたいと思います。
投稿: 三枝豊平 | 2013年11月17日 (日) 02時44分
三枝さん、お目に留めていただきありがとうございます。
写真のハエは過去に何度か同じ場所で撮影していたものの所属が分からず、ezo-aphidさんにChelipoda属かPhyllodromia属あたりとお見立ていただいていましたが、前者と確認していただきすっきりいたしました。
このハエの捕食の現場はまだ数回しか見たことがないのですが、ご参考になったとすれば光栄です。
お尋ねの撮影機材ですが、等倍以上では概ね次の記事に載せたものを使っています。
http://mushi-akashi.cocolog-nifty.com/blog/2011/01/post-d97e.html
上の写真では1・2枚目がニコンD200にベローズを介してズイコーマクロ38mmF2.8を付け、F8で、また3・4枚目は古い写真で、カメラがフルムカメラのオリンパスOM2、レンズがズイコー1:1マクロ80mmF4、f11で撮っています(かなりトリミングしています)。どちらもストロボを使った手持ち撮影です。
投稿: おちゃたてむし | 2013年11月18日 (月) 21時17分