オナガバチの一種・メスの誕生
夕方5時半頃、以前から注意していたエノキの立ち枯れに、オナガバチの一種のオスが集まっていました。間もなくメスが出てくるようです。ゆっくり腰をすえて待つことにしました。
総勢10匹ほどのオスが周りをうろうろしながら、体を曲げて腹の先を枯れ木の上の一点にこすりつけるような動作を繰り返します。
やがてその場所に穴が開いて、オスの一匹が腹部を深く差し入れます。この状態で穴の中のメスと交尾しているのではないかと思うのですが、メスは頭を外に向けているはずですから、そんなことは不可能かも知れません。
オスが腹部を引き抜いたあとには、すでに脱出してくるメスの頭が見えます。
メスがすでに顔を覗かせているのに、オスたちが再び集まってきて上と同じ動作を繰り返しています。この状態のオスは興奮状態で、指でちょっと触ったくらいでは場所を動こうともしません。
ひさしのように重なったキノコのすぐ下で、大変撮影しにくい場所でした。
どれがメスかわかりますか?長い産卵管はまだ穴の中に残っています。
ようやく開放されたメスが長い産卵管を後脚でしごいています。大型のメスでは体長4cm以上、産卵管を含めて10cmにもなりますが、これはかなり小さめです。撮影を始めてから2時間、すっかり暗くなってしまいました。
この公園では毎年どこかで見られる光景です。いつも大体今回と同じような経過をたどるようですが、多少の変化があって、中にはメスが出てきた時にはオスがすべて姿を消していたこともあります。
メスの誕生はこのようにオスが集まってしらせてくれますが、オスはいつ出てくるのか、まだ見たことがありません。
ネットで調べるとこの種はMegarhyssa属の未記載種ということです。
* 6月10日午後 追記 *
このハチの寄主ですが、キバチの一種のヒラアシキバチだと思われます。この公園では9月頃に同じエノキの立ち枯れの中から出てきて、産卵するのが見られます。
(2010年6月2日・明石公園)
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コメント
2019年6月の観察(京都府相楽郡精華町鳥谷公園)
1.オスの抜け穴は小さめで、顔が出るとスーと出るのが早い。
2.朝8時頃に出る事が多い。11時、2時にも出るのを見ました。
3.オスが集まる場合、指で軽くオスを除けると飛んでいきます。周りをうろつく事があります
が・・・・
4.オスがいなくてメスが直ぐに飛び去る場合と半分以上抜けた時にオスが来てメスの腹部にオス
の下半身を差し込み交尾する場合があります。交尾後メスは高い木の方に飛び去ります。
投稿: 安長 義高 | 2019年7月 1日 (月) 03時19分
安長 義高さん、はじめまして。
貴重な情報をありがとうございます。
この記事の後も何度か雌の産卵や羽化の場面を見ましたが、雄が出てくるところはまだ見ることが出来ずにいます。このハチが集まっているところを見つけた時にはすでに雄の羽化の時期が過ぎてしまっているせいかも知れません。
明石公園では適当な木が減ってしまったせいもあって、ここ数年はほとんどこのハチを見かけなかったのですが、つい先日、久しぶりに1本のエノキの立ち枯れで雌が産卵したり、雄たちが集まったりしているのを見つけました。オオホシオナガバチも同数程度来ていました。
このハチの習性では、羽化する雌が頭を出す前に雄がその穴に腹部を差し込むという行為にどんな意味があるのか、その際に交尾が成立しているのかどうかが長年の疑問です。
また何か分かれば是非教えてください。よろしくお願いします。
投稿: おちゃたてむし | 2019年7月 1日 (月) 20時50分