ヒラズゲンセイとクマバチ
この春にクマバチの巣穴を見た記憶のある枯れ木を覗きに行くと、数メートル手前からこの赤い色が目に入りました。初めて見るヒラズゲンセイ、クマバチに寄生する甲虫です。
巣穴のすぐ向かいにある枯れ枝でじっとしているだけですが、巣穴のメスのクマバチはかなり警戒しているように見えます。
撮影している間にもたびたび、クマバチはこのように腹部で巣穴の入り口を塞ぐ防御行動をとります。近づけたカメラに反応しているだけかも知れませんが、普段より過敏になっているように見えます。
大アゴを除いた体長が15mmくらいの、この種としては小型のオスです。おそらくこの場所でメスを待っているのでしょう。これまでの観察例では、クマバチの巣穴の外で交尾することも、またオスが巣穴に侵入して、そこで羽化してきたメスと交尾することもあるそうです。
巣穴の下の地面に死骸が一つ落ちていました。上の個体より少し小型のオスです。オス同士の争いの敗者の死骸が、クマバチの巣穴の下にいくつも転がっているのはよく見られることだそうです。この死骸は持ち帰りましたが、鮮やかな赤い色は間もなく赤黒く変色してしまいました。見つけたときは死後あまり時間がたっていなかったものと思われます。
本種はツチハンミョウ科の一員で、体液にはカンタリジンという毒素が含まれるということです。手のひらに載せたくらいでは害はないと思いますが。
最後に、生きていた方の顔のアップです。クワガタと同様、立派な大アゴはオス間の闘争のためのものでしょう。
このヒラズゲンセイは元来南方系の昆虫で、近年になって近畿地方にも分布をひろげてきたそうです。この明石公園でも採集の記録があることは知っていましたが、お目にかかれると期待していませんでした。
この記事には続きがあるのですが、長くなったので次回に回します。
(2010年6月29日・明石公園)
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コメント
こんばんは、いやぁ、すごいですね。
初めて見ました。派手な赤い色の甲虫、
オオハキリバチに寄生するキイロゲンセイと、
この(トサ)ヒラズゲンセイぐらいしか知られていないのだそうですが、
そのうちの一種をものにしたわけですか。
ファーブルの2巻に出ているのでゲンセイの名前は知っていましたが、
まだその生活史はほとんどわかっていないそうです。
のめり込みそうな映像です。
投稿: jkio | 2010年7月 7日 (水) 20時27分
jkioさん、こんばんは。
最初目にしたときは私も一瞬まさかと思いましたが、近畿地方では近年あちこちで見つかっているようです。そのうちそちらのご近所まで分布を拡げていくかも知れませんね。
折角の見つけ物なので、しばらくの間なるだけ頻繁に覗いてみるつもりでいたのですが、「つづき」の最後に書いたようにあっけない結末となってしまいました。
ファーブルによるゲンセイとツチハンミョウの観察は、推理ものを読むような趣もあって「昆虫記」の中でも特に印象深いものの一つだと思います。久しぶりに読みたくなりました。
投稿: おちゃたてむし | 2010年7月 8日 (木) 20時31分