クロアナバチと?アナバチヤドリニクバエ(改題)
* 2014.06.24・追記とタイトル修正 *
下に写っている寄生バエの方は当初「ヤドリバエの一種」としていましたが、ezo-aphidさんより「?アナバチヤドリニクバエ」とした方が良いのではないかとのご意見をいただきました。この種の属するヤドリニクバエ亜科はヤドリバエ科ではなくニクバエ科に属しているそうなので、確かに「ヤドリバエの一種」のままでは不正確です。ご意見にしたがってタイトルを修正しました。
このところ小物しか撮れていなくて、たまには大きめのも欲しいので2年前の写真を引っぱりだしてきました。
獲物のサトクダマキモドキを抱えて巣穴に帰って来たクロアナバチです。
普通このハチが捕えるのはツユムシとかクビキリギスの幼虫といったもう少し小型のキリギリス類で、クダマキモドキを捕えたのは初めて見ました。少し大型のキンモウアナバチが主な獲物にしているのがこのクダマキモドキだということですが、私はまだ見たことがありません。
狩りのあいだ巣穴は一時閉塞されているので、ひとまず運んできた獲物を置いて巣穴を開き、中に入っていきます。このハチは本物の巣穴の左右に一つづつ、カモフラージュのためといわれる「偽穴」を掘る習性があって、その一つがハチの向こう側に見えています。
巣穴を開く作業のあいだにも、ハチは時々獲物を置いた場所まで戻ってきて点検します。しかしやがてハチの姿が巣穴の奥に消えた途端、それまで周囲を飛び回っていたヤドリバエが一匹、すかさず獲物に着地して産卵しました。
写真では見えにくいですが、中脚の上あたりに産みつけられた卵からは早くも数匹の白いウジが孵化してうごめいています。あるいは母バエの体内ですでに孵化していたのかも知れません。
巣穴から出てきたハチは向きを変え、何事もなかったかのように寄生虫のついた獲物の触角をくわえて後退りに運び入れます。残念ながらハチの労働は徒労に終わることになります。
「偽穴」を掘るというような巧妙な習性を進化させてきたこのハチが、文字通り目と鼻の先の災厄を見つけてとり除くことができないと言うのはちょっと不思議な気がします。
近くの枯葉の上で、頭をハチの巣穴に向けて見張りについているヤドリバエです。ネットで検索してみるとアナバチヤドリバエとか、アナバチヤドリニクバエとかいう名が見つかりましたが、このハエがそれらに該当するのかどうかよくわかりません。体長6mmくらいです。
(2008年8月22日・神戸市須磨区 奥須磨公園)
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コメント
こんにちは!
こんなことってあるんですか、また一つ知識が増えました(^^)。
狩られる虫も災難ですが、狩った虫にも災難が起こりうるんですね!
日曜日にウマオイをみつけたのですが、チョッと目を離した隙に黒いハチに連れ去られてしまいました。
自然界は、本当に厳しいですね!
投稿: そら | 2010年8月26日 (木) 12時34分
そらさん、こんばんは。
私などが知ることの出来るのは氷山の一角に過ぎないと思いますが、虫の世界に寄生関係が蔓延していることには驚きます。
折角のウマオイをさらっていった黒いハチは、クロアナバチかコクロアナバチでしょうか。そんな狩りの瞬間を見たいですね。
投稿: おちゃたてむし | 2010年8月26日 (木) 21時33分
ファ、ファーブル昆虫記に載ってた絵が写真で見れるなんて!!!!
すげー迫力ですね・・・さっすが・・・
投稿: ぺろぽんぱ | 2010年9月 2日 (木) 16時43分
ペロポンパさん、
クロアナバチはこのあたりでは珍しいものではありません。
同じ場所で何匹も巣穴を掘っていることが多いので、そんな場所を見つければ、時間さえかければこんな光景は必ず見られます。
一度探してみてください。
投稿: おちゃたてむし | 2010年9月 2日 (木) 20時14分
いまさらですが、なんともニクバエらしくない姿が不思議でした。大きな眼、小さな触角、長剛毛がほとんどない頭部・胸部・腹部、きゃしゃな脚、これらはよく見かけるニクバエ・ヤドリバエ・クロバエなどとは違っています。この形は狭い坑道にもぐってゆくために便利だろうと思います。
ヤドリニクバエ亜科Miltogramminae は、かつてヤドリバエ科に所属していたため、和名にもヤドリバエを用いたのでしょう。日本の20種余り(Wikipedia の「ニクバエ」参照)の幼虫は、狩り蜂類やハナバチの獲物を食して育つようです。産卵のしかたも多様で、狩り蜂が持参した獲物にすきを見て産む、狩り蜂に産みつける、坑道に入って獲物に産みつける、などの方法があるとのことです。
祖先型は坑道内にもぐって産卵していたのが、しだいに外で産みつけるように進化したけれど、いまだに(不都合が無いので)昔の姿を維持してる、と解釈しました。
状況からみて、「ヤドリバエの一種」を「?アナバチヤドリニクバエ」にしませんか。
投稿: ezo-aphid | 2014年6月24日 (火) 00時00分
ezo-aphidさん、おはようございます。
実は私も昨日、tukikさんのところに登場したハエを見てこいつによく似ていると思い、あらためて見直していたところです。ヤドリニクバエはヤドリバエ科ではなかったんですね。お勧めにしたがってタイトルを修正しておきます。ありがとうございました。
投稿: おちゃたてむし | 2014年6月24日 (火) 06時35分