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2010年12月 1日 (水)

ニッポンオナガコバチ(改題)

少し前に同じタイトルで出したものと同種ですが、これまで私には不明だったハチの出どころが、今回ようやくわかったようなので再度の登場です。

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10月末から公園内のいたるところで見かけていたオスバチですが、赤い実をつけたクロガネモチに特に多く集まっていることに気がつきました。
実には脱出口らしき穴の開いたものも多く、このハチはこの実に寄生していたのではないかと思わせます。
以前出したイスノキの実から出てきたハチのように、
オスたちはここでメスの出てくるのを待っているように見えます。
ただかなり時間をかけて探したのですが、実際に実から顔を覗かせている現場を見ることはできませんでした。


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すでに生まれてきたメスもいて、枝の下の草の葉で交尾をしているのもいます。

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やはりここでも、1匹のメスをめぐって複数のオスが争う光景が見られました。

クロガネモチの実からメスが出てくるのを確認するのは今シーズンはもう無理かも知れませんが、個体数の多い種なので来年の春か夏には産卵が見られるかも知れません。何とか機会を逃さず撮影しておきたいと思います。

(2010年11月19日・明石公園)

* 12月3日追記 *

これまで全く種名の見当がつかなかったのですが、ezo-aphid さんが多くの資料を調べて下さった結果、オナガコバチ科のニッポンオナガコバチがこれに該当するのではないかということになりました。検討の詳細についてはコメントをご覧ください。タイトルを「オナガコバチの一種」から「ニッポンオナガコバチ?」に変更しました。

* 2011.1.23 追記とタイトル変更 *

上條博士に標本を検討していただいた結果、ニッポンオナガコバチに間違いないとのご返事をいただいたので、タイトルから疑問符をはずしました。詳しくはこちらの記事の追記をご覧下さい。

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膜翅目」カテゴリの記事

コメント

 小型昆虫の細部が判るとても素敵な写真だったので、コバチには素人ながら少し調べてみました。11月6日掲載の、イスノキの実のオナガコバチ科はMegastigmus distylii Kamijo,1979 のようです。これまでは、宮崎県からのタイプ標本しか知られていないのでは・・・、と想像します。
 クロガネモチのコバチはさっぱり見当がつきませんが、暗色の翅とこん棒状の触角が眼につきますね。この写真を専門家に紹介してみます。綺麗な写真ですので、ある程度の見当を伺えるかもしれません。昆虫の判別のポイントは生態写真では見えにくい部分にも多いので、大きな期待はできませんが・・・・・。

投稿: ezo-aphid | 2010年12月 1日 (水) 09時31分

 その後、ネットを探ってみたところ、モチノキタネオナガコバチ Macrodasyceras hirsutum Kamijo, 1962
という種に出会いました。和歌山・千葉・埼玉県のモチノキ実から採れていて、幼虫越冬、生育不斉一な果実で年2回発生らしい、とのことです。Kamijo, K.(1981) Akitu(n. ser.)38:1-4.に、雄の記載と簡単な生態が載っています。これなのかも・・・・・。

投稿: ezo-aphid | 2010年12月 1日 (水) 18時16分

ezo-aphidさん、はじめまして。
わざわざ調べていただいてありがとうございます。私には手のつけようがありませんでした。
正直なところ科名にも自信がなかったので、どちらもオナガコバチ科で良さそうだということがわかっただけでも朗報です。
なにぶん手当たり次第に目についた昆虫を撮っているだけの素人なので、専門の方(と思います)に関心を持っていただいたことに驚き、また感謝しています。
イスノキの実のハチを見たのは今年が初めてですが、クロガネモチのほうは毎年かなり多くの数が見られます。これまで見た限りでは、メスが成虫で越冬し、オスは10月頃に初めて出現するようです。また同じ公園内でこれと良く似たハチがモチノキの実に産卵しているのを6月に見ていますが、別種ではないかと思っています。写真はこちらに出しています。
http://mushi-akashi.cocolog-nifty.com/blog/2010/06/post-451a.html
お教えいただいた原記載は参照できませんでしたが、ひょっとしてこれがモチノキタネオナガコバチではないかと想像しています。

投稿: おちゃたてむし | 2010年12月 1日 (水) 22時19分

 ごあいさつなしで失礼しました。ずいぶん以前から、同じ虫を観察し続けておられるのですねー(無名のままでも、というところがすごいです)。生態を垣間見た昆虫の種名が判ることはとても重要なことですので、いささかのお役に立てたのなら嬉しいことです。
うっかり調べ落としていましたが、日本からはこの属からもう一種だけ知られています。
ニッポンオナガコバチ Macrodasyceras japonicum (Ashmead,1904)
 参照 Kamijo, K.(1962) Insecta Matsumurana 25(1):18-40.・・・・これは「cinii 論文情報」から読めます。
 それによると、ニッポンオナガの雄は10-12月に、雌は11-3月と、冬場にしか得られていません。既知の餌植物はウメモドキ・ナナミノキの実となっていて、瀬戸内周辺で採れています。Akituにも述べられていますが、モチノキタネ雌では産卵管(鞘)が体長とほぼ同じですが、ニッポンオナガ雌では短い、とあります。
標本を見ながら記載と一致することを確認しないと同定はできないのですが、撮られたコバチ類が新種でないと仮定すれば、産卵管(鞘)の長い方がモチノキタネ、短い方がニッポンオナガとなりましょう。
 この確定は、今後の宿題、というところ・・・・・・

投稿: ezo-aphid | 2010年12月 2日 (木) 10時04分

なんかないかと探したら、産卵中の写真付きの論文を見つけました(雑誌は今年のものですね~)。
モチノキタネオナガコバチ Macrodasyceras hirsutum Kamijo の千葉県における生活史(と戦略?)。

http://www.eje.cz/pdfarticles/1528/eje_107_2_197_Takagi.pdf

検討のご参考までに、(ちょっとしつこいですかねー)・・・粘り強いと言っておきましょう。

投稿: ezo-aphid | 2010年12月 2日 (木) 21時54分

ezo-aphid さん、本当に粘り強くご検討いただき感謝にたえません。
ニッポンオナガコバチは北隆館の図鑑にも載っているので以前から似ているとは思っていました。ただ雌の腹部の色が暗褐色とされていることや、雄の色についての記述が特にないことなどから別種だろうと考えていました。
しかし(英語の論文は私には歯が立ちませんが)、雌雄の出現時期はぴったり一致しますし、分布域も瀬戸内周辺ということであれば、同種である可能性は大でしょうね。
ご紹介いただいたモチノキタネオナガコバチに関する論文も、残念ながら私に理解できるのは写真だけなのですが、それを見れば確かに以前モチノキの実で産卵中を撮影したものに大変良く似ていると思いました。

投稿: おちゃたてむし | 2010年12月 2日 (木) 23時08分

ひぇ~・・・・・、(図鑑のこと)知りませんでした。つけ焼き刃の「虫プロもどき」はすぐ馬脚がでますね。
早速、図鑑を眺めて見ましたが、ご意見のとおりです。雄の翅色・体色がこんなに違うのに、全く触れていないのはどうしたことか、不思議です。
 記載文はおっしゃる通り、部位などの専門用語が混じっていて、読解は難儀です。しかし、もっとも判別しやすい点を書いてあるはずなので、同定には比較標本(この場合、ニッポンオナガとモチノキタネらしき2種の雌雄)を並べて、Kamijo(1962、1981)を読むしかないようです。
 ご不満でしょうが、当面の解決策として、しばらくは「ニッポンオナガコバチ?」「モチノキタネオナガコバチ?」という標題にしておいてホントのプロの意見を期待するという、羊頭狗肉作戦というのは・・・・・。

投稿: ezo-aphid | 2010年12月 3日 (金) 00時32分

ezo-aphid さん、
多くの資料に目を通してまで調べていただいて有難うございました。
私にはついていくのが難しい世界ですが、大変勉強になりました。
とりあえずご助言にしたがって疑問符つきの種名にタイトルを変更したいと思います。
また何かお気づきになることがあれば是非ご教示ください。

投稿: おちゃたてむし | 2010年12月 3日 (金) 21時51分

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