オオモンクロバチ科の一種(?Lagynodes sp.)
古い写真でしかも大幅にトリミングしているので不鮮明な画像ですが、以前から気になっていたものです。
少し前に「蜂が好き」のBBSに投稿したところ、ヒガナガクロバチ科の、おそらく Aphanogmus 属に近いものであろうとのご教示をいただいたのですが、この属名で検索しても似たものが見つかりません。一方、いくつかの海外サイトでオオモンクロバチ科の Lagynodes 属として類似した画像が多数出てきました。触角や腹部・胸部の形、顔面の角状突起など非常によく似ていて、むしろこちらの方に近いのではないかと考えています。
素人の絵合わせによる判断ですが、どなたか詳しい方のご意見をうかがえればと期待して表記のタイトルで出しました。
尚、大きさは記録していないのですが、体長3mm以下で、地上付近を徘徊していました。
(1997年12月1日・明石公園)
* 1月25日追記と写真追加 *
実はこれがLagynodes 属ではないかと指摘して、ここに出すように勧めて下さったのはezo-aphid さんだったのですが、早速フッカーSさん、ezo-aphid さん、kurobachi さんからコメントをいただきました。結論としては、いくつかの特徴から「Lagynodes 属にしておきましょう」(kurobachi さん)ということで、こんな画像からそこまで絞り込めたことは私としては大いに満足です。
コメントを貰ってからあらためて元のフィルムを調べてみると、ないと思っていた別のカットが出てきたので追加しておきます。角度が少し違うので腹部の形など最初の写真ではっきりしなかった部分が多少確認できると思いますが、不鮮明さは同じなので多くは期待できないかも知れません。
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コメント
オオモンクロバチ科のLaginodinae亜科に属するハチは、翅に縁紋が無く、メスは無翅だそうです。体長は0.6~3ミリの間で、触角は11節。腹部基部はくびれており、3本の短い縦筋があるようです。Megaspilinae亜科では前翅前縁に半円形の縁紋があるということなので、メスは有翅と思われます。
一方、ヒゲナガクロバチ科に属するハチは、触角は口器のすぐ上から出ていて、触角は9~11節(メスはオスよりも1節少ない)で、腹部の基部は幅広だそうです。
以上から推測すると、オオモンクロバチ科のLaginodinae亜科に属するハチのメスに該当しそうな気がしますね・・・・。属についての情報は、私では見つかりませんでした・・・・。
投稿: フッカーS | 2011年1月25日 (火) 08時20分
おはようございます。この風変りなヤツが、ようやくこのブログで陽の目を見られたので嬉しいです。
下記報文の5ページ、Fig.1 の9・11・12をご覧ください。これらは雌で、この画像の特徴(一本角、胸や腹の隆起部など)に合致する点が多いと思います。雄(10,13)はすべて有翅のようで、単眼があり、触角の節の大きさはそろっています。これらは草地やアリの巣で採れるだろう、とも記されてます。
ただし、本種をネットで見られる種などと比べると、1)複眼の間(=頭頂)に単眼のような隆起物がある、2)体毛が多く腹部に斑紋がある、などの相違点があります。この群は、生態がまだよく判らないそうですから、未知の種が少なくないのでしょう。この亜科の種は、九大目録に載ってないので日本では珍しいようです。なお、Aphanogmus hakonensis Ashmead,1904 は、有翅の雌で、体長0.8mmと記載されています。
http://www.v-zool.kiev.ua/pdfs/2001/3/01.pdf#search=
と、ここまで書いてたら、フッカーSさんのコメントが・・・・・。賛成のご意見をありがとうございます(亜科名のスペルは、属名からしてLagynodinaeだと思います)。
投稿: ezo-aphid | 2011年1月25日 (火) 08時53分
フッカーSさんが言われるように,Lagynodes属で宜しいかと思います.こんなに黒くて,腹部に2紋ある種は見たことがありませんでした.普段よく採れる種類は全身淡い黄褐色で模様がありません.写真のハチは胸部が細く,小楯板が帯状になっていますのでLagynodes属にしておきましょう.
ヒゲナガクロバチ上科には無翅の属が多く出ます.オスもメスも,ヒゲナガクロバチ科(Ceraphronidae)は腹部基部に多数の溝を持ちますが,オオモンクロバチ科(Megaspilidae)では数本の太い溝(隆起線)のみとなります.フッカーSさんが言われるように,Megaspilinae亜科の有翅虫は前翅に大きな縁紋があり,区別が簡単です.Laginodinae亜科は,私の標本を見る限り,メスはこのように無翅で,オスは有翅ですが,縁紋がないため,ヒゲナガクロバチ科と紛らわしい.
ヒゲナガクロバチ上科は種の記載も,寄主の記録も少ないので,ぜひ寄主を発見してください.
投稿: kurobachi | 2011年1月25日 (火) 11時19分
改めて画像を眺めると、無いものねだりなのですが、腹の基部や胸中央の太い溝(隆起?)、頭頂の構造物、触角間のツノなど、がよく見えるような、斜め上方からの写真があるといいなと感じますね。
先にあげた論文は、英字に不慣れなようで、タイプミスが散見されます。 Fig.1 の下段説明では、雄・雌を示すのに、それぞれ” { ・ } ”が使われています(珍しい、PDFなのに文字化け?)。
それにしても、どういう環境にこのような無翅の寄生蜂が棲んでるのでしょうね。
投稿: ezo-aphid | 2011年1月25日 (火) 16時37分
フッカーSさん、早速のコメントを有難うございます。
触角の節数や腹部基部の縦筋などが明瞭に確認できればいいのですが、この画像ではちょっと歯がゆいですね。
同時に撮った別カットを追加しておきましたが、新たに得られる情報は余りないと思います。
それにしても、こんな小さなグループについての情報を即座に探し出して来られることには全く驚きます。
私などは撮るばかりで、自分が撮った写真すら充分把握していないくらいなのが恥ずかしいです。
投稿: おちゃたてむし | 2011年1月25日 (火) 23時54分
ezo-aphidさん、
お世話をかけましたが、ようやく出しました。
あらためて探すと、ないと思っていた別カットが出てきたので大急ぎでスキャンして追加しました。
最初のとは少し角度が違うのですが、ezo-aphidさんが注目しておられる特徴を確認するには不十分ですね。
kurobachiさんからもコメントをいただいて、最初にご指摘いただいたようにLagynodes属に落ち着きそうです。
再度見つけることが出来ればもう少しましな写真を撮りたいと思いますが、そんな機会はなかなか来ないでしょうね。
投稿: おちゃたてむし | 2011年1月26日 (水) 00時16分
kurobachiさん、コメントありがとうございます。
先日のハラビロクロバチ科もそうですが、クロバチと名のつく仲間には面白いものが多いんですね。
今回のものなど、私には最初ハチかどうかさえ確信が持てませんでした。
出来ればまた出会いたいと思いますが、このサイズのものでしかも地表付近にいるとすれば、見つかる可能性はあまりなさそうです。
別カットを一枚追加しましたが、コメントであげて頂いた特徴を確認するのは難しそうです。
投稿: おちゃたてむし | 2011年1月26日 (水) 00時39分
追加画像では腹部後半が見えるのでよかったです。よく見ると、お腹の数か所、後頭部に水滴みたいなものが見えますねー(夜は、野宿だったのかな)。
投稿: ezo-aphid | 2011年1月26日 (水) 09時44分
ezo-aphid さん、
これは多分水滴でしょうね。
この時のフィルムの前後を見るとマルトビムシ(例のニシキマルトビムシSP.です)なんぞも撮っているので、湿気も多かったのだろうと思います。
顔面の角などがもっとはっきり確認できるカットがあれば良かったんですが、こんなものでご勘弁下さい。
投稿: おちゃたてむし | 2011年1月26日 (水) 20時44分
これはアリのように見えませんか? アリ図鑑をさらっと眺めると、色とサイズが似ているのが、ケアリ類 Lasius spp.のように思います。
スズメバチのような肉食性昆虫に擬態する昆虫が、カミキリ・ハナアブ・アブ・スカシバなど多くの分類群に現れるというのは理解できます。アリグモやヘリカメムシなどがヤマアリ類に擬態するのには、どういう意味があるのでしょう。ヤマアリ類にも攻撃性が高い種はいるので、それを利用してるのかも?とも思います。しかし、Lasius のような温和なしいアリを真似て、どんなメリットがあるのでしょうか? とても不思議に思います。
それとも、擬態とは関係なく生息環境に適応した結果として、無翅となりアリに似た形になったのでしょうか。いずれにしろ、採集地付近で最も似ているアリの種類と生態を知りたいものです。
投稿: ezo-aphid | 2011年1月27日 (木) 18時50分
ezo-aphid さん、
確かに、アリの中ではケアリ類に似ていますね。
でも無翅のハチはどれもアリに似ているので、どうなんでしょうか。
これを撮った場所ではヒゲナガケアリがいることは確かですが、トビイロケアリもいると思います。
実は以前、トビイロケアリだと思っていたのがヒゲナガだったので、写真をよく調べなおさないとはっきりしたことがわからないのです。
どちらも倒木や朽木、土中に営巣するそうですが、その生態はよく知りません。
同じ位の大きさのシリアゲアリ類などに比べればおとなしそうに見えますね。
投稿: おちゃたてむし | 2011年1月27日 (木) 20時30分