ヒメコバチ科の2種(Pediobius atamiensis 、P.?crassicornis)(改題)
冬場の葉裏探しでは毎年必ず見かけるコバチです。
こんなものの種名がわかるとは予想していませんでしたが、1月にそらさんの「ご近所の小さな生き物たち」の記事に同種と思われるハチが登場して、おかげで名前がわかりました。ヒメコバチ科の Pediobius atamiensis (Ashmead) です。
上からのカットをもう1枚。胸部背面の彫の深い彫刻が気に入っています。
次も同じような環境でよく見かける種で、上の種とよく似ています。実はこれまで同種の色違いと思っていたのですが、よく見ると明らかに別種です。
上の種より少し小さく、体長約1.6mmです。胸部背面の彫刻はほとんど同じように見えますが、細部に少し違いが認められます。
はっきり違いが見られるのは触角で、珠状の節が1個足りません。上の種に近い、恐らく同属の種だと思うのですがどうでしょうか。
(2011年3月2日・明石公園)
* 3月17日・追記と写真追加 *
上の2種について、上条さんからコメントをいただきました。
それによれば最初の4枚は間違いなく Pediobius atamiensis 、次の2枚は Pediobius crassicornis という種のようにも見えるが、胸部背面の彫刻が不鮮明なので断定はできないとのことです。また Pediobius atamiensis で”珠状”の節(繋節)が一つ多いのは触角先端の棍棒状部(3節よりなる)の節が一つ遊離したためで、これは P.atamiensis だけの特徴であり、他の Pediobius の繋節は3節だそうです。ご教示に基づいて、タイトルを表記のように変更しました。
また、この2種の胸部背面の彫刻については、かなり特徴のあるものだと思うので、次に拡大画像を出しておきます。どちらも同じ撮影倍率で撮ったものを、ピクセル等倍で切り出しています。とてもよく似ていますが、少し違います。
P.atamiensis。上の、2枚目の画像からトリミングしました。
P.?crassicornis。上の画像は不鮮明なので、別の日に撮ったものから探してきました。同種には間違いないと思います。(2011年2月25日・学が丘北公園)
| 固定リンク
「膜翅目」カテゴリの記事
- モチノキタネオナガコバチ(2019.07.27)
- ナガコバチ科の一種(?Metapelma sp.)(2019.07.23)
- ウスマルヒメバチ亜科の一種(Lissonota sp.)(2019.07.18)
- フサトビコバチの一種(?Cheiloneurus sp.)(2019.07.12)
- アミメアリ(2019.07.04)
コメント
お久しぶりです♪
公立高校の入試が昨日ようやく終わったので来ました
合格発表は来週の月曜日(入試の1週間後ですね)です。
正直不安ですが(´д`;)・・
ヒメコバチですか、私あまり知らないんですが可愛いですね(^^
でも私、蜂って怖いから苦手なんです(--|||)
このヒメコバチも刺したり・・・するんでしょうか?
(↑思いっきり素人の質問になってすいません)
投稿: ぺろぽんぱ | 2011年3月15日 (火) 11時04分
ぺろぽんぱさん、お久しぶりです。
高校入試ですか。合格していればいいですね。
ヒメコバチの仲間はどれも小さくて虫眼鏡がなければ目鼻立ちもわかりませんが、きれいなものが多いですよ。
このハチが人様を刺すことはないと思います。この仲間はどれも他の昆虫に卵を産みつける寄生バチのはずですからメスが針(産卵管)を持っているのは確かですが、毒腺まであるのかどうか知りません。不勉強ですみません。
毒針を持ったハチでも、スズメバチやアシナガバチの仲間以外は滅多なことで人を刺すものではないですから、あまり怖がることはないですよ。
投稿: おちゃたてむし | 2011年3月15日 (火) 20時26分
こんばんわー。拡大画像をありがとうございます。
先生に尋ねたところ、「手元の P. crassicornisと網目模様の彫刻が多少違いますが、これが変異内に収まるかどうか不明」とのことでした。表題はこのままですね。
しかし、これがジャスピンなら、ツァイスの顕微鏡にも負けませんねー。カラー撮影ができない走査電顕にも勝てるでしょう。ところで、この網目もようは、ゴルフボールのディンプルみたいなものなんでしょうか(飛翔がスムーズ??にできる・・・・)。
ぺろぽんぱさんが「怖い」のは、なぜなんでしょうね。社会性を持たない大多数の蜂は、哺乳類を襲いません。襲えば自分が(子孫の継続が)危ういからです。社会性を持つ(大きなコロニーで暮らす)昆虫では分業が進み、防御専門の兵隊などがいて、彼らは死ぬ危険を冒しても子孫を守ろうとします。ハチやアリ、シロアリなどですね。台湾の大きなゴールを作るアブラムシでは他人の皮膚をチクチク刺すそうですが、痛がゆいだけのようです。 相手をよく知れば、怖いものは減ってゆきます。勉強しましょう。
投稿: ezo-aphid | 2011年3月18日 (金) 19時41分
ezo-aphidさん、
岩田久仁雄さんの著書に、ヒメバチ類の分類のために胸部背面の模様を描いた図が多数掲載されていましたが、コバチ類でもそのあたりの特徴が同定の決め手になることがあるんでしょうか。
ところでこの拡大画像は2枚とも同じ倍率なんですが、atamiensisは絞りF8、?crassicornisの方はF5.6で撮っています。ピントの深さを考えるとF8で撮りたいところですが、拡大するとやはり解像力の低下が目立ちます。
投稿: おちゃたてむし | 2011年3月18日 (金) 21時41分
こんにちわ。かけだしの私には、とても難しい質問です。
手元にあるコバチ上科「属への検索表」で、ヒメコバチ科の参考図には、顔面・触角・口器・翅・胸部背面・前伸腹節・尾端など、さまざまな部位が載っています。このうち眼につくのは、やはり胸部背面と前伸腹節でしょうか。しかし、種の判別にはこのほかの要素を使っているのかもしれません。ヒメコバチ科の族の事例ですが、種の類縁関係を解析するのに使われた形質の数は、「頭部14、触角13、胸部13、翅10、脚3、腹3」となっていて、頭・胸・翅の部分が判別点として使いやすいようです。判別に用いる形質は、「種内で変異が小さく、種間では安定的に違うこと」が望まれる点が難しいところでしょう。この理由から、使われる形質は分類群によって少しづつ違ってくると思います。
焦点深度と解像力、どちらを優先するか?ということは、見せたい部分によって違いそうです。今回の場合、1枚の画像で情報量が多いのは、きれいな網目もようの ?crassicornisよりは、眼毛と前伸腹節の彫刻が見えるatamiensisと思います。しかし、美しい姿を見せたいという願い(撮影目標)からは、やはり解像力を優先すべきなのでしょうね。
投稿: ezo-aphid | 2011年3月20日 (日) 16時12分
ezo-aphidさん、こんばんは。
やはり一つ二つの部位の観察で判別するのは無理ということですね。ここであげて頂いた中でその特徴を写真で充分確認できる部位は多くないでしょう。しかも被写界深度というネックもあるので1枚の写真で確認できる部分は更に少なくなります。素人としてはなるべく多くの種に当たってみて、その制限内で大雑把な所属が推測できるようになれば上出来でしょうね。
ピントの深さと解像力については、可能な場合はいろいろな組み合わせで沢山撮っておくに越したことはないと思っています。デジタルさまさまですね。
投稿: おちゃたてむし | 2011年3月20日 (日) 22時54分