ヒラアシキバチとヨコヅナサシガメ
例年なら今頃すでに出てきているはずのヒラアシキバチを探して、心当たりの立ち枯れのエノキを何本か見てまわると、まずこんな光景に出くわしました。
ヨコヅナサシガメの幼虫が2匹、樹皮に開いた穴に口吻を差し込んでいます。
サシガメにちょっと場所を譲ってもらって覗いてみると、穴の中にはやはりヒラアシキバチが。残念ながらすでに死んでいます。外界への脱出口を開いた途端に待ちかまえていたサシガメに襲われたんでしょう。
実はこんな光景はヨコヅナサシガメの多いこの公園では珍しいものではありません。次の写真は5年前のものです。
3匹のサシガメのお腹が、憎らしいほど膨らんでいます。この時は同じ木で他にも多くのヨコヅナサシガメと犠牲になったヒラアシキバチを見ています。サシガメは樹皮下のキバチの動きをある程度察知することが出来るのか、まだ穴の開いていない場所を2~3匹で取り囲んでいるのを見ることもあります。
次は更に古い写真です。
外の光は見たものの、3匹の敵に取り囲まれて出るに出られぬキバチです。
キバチに助太刀をしてサシガメを追い払ってやると、間もなく開通工事を再開し、やがて頭が出てきました。
出ました。このハチが脱出してくる場面を撮影したのはこの時が初めてで、私が見つけるまでハチを待機させていてくれたヨコヅナサシガメには感謝しなければなりません。
(1枚目:2011.10.11/2~3枚目:2006.9.12/4~8枚目:1993.10.12・明石公園)
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コメント
うーん、弱みにつけこんで集団で襲うなんて・・・・・・、まるでハイエナみたい。 と思ったけど、ハイエナ集団は家族なのでお互いに助け合ってるはず。
ところで、サシガメさんたちは一匹狼(血縁不明ですが)なのに共食いをせず、仲良く?お食事してる・・・・。餌を前にして、空腹時にも仲良く待ってるんでしょうか? どうやって共食いを防いでるんでしょうね。新成虫脱出の察知の方法も、匂いなのか振動なのか・・・・。
投稿: ezo-aphid | 2011年10月17日 (月) 17時18分
ezo-aphidさん、こんばんは。
ヨコヅナサシガメはこのあたりでは非常に多いのですが、共食いは一度も見たことがありません。
血縁関係ということでは、このサシガメは羽化して成虫になるまでの間は、同じ卵塊に由来する集団からあまり遠くへ出歩くことがないのではないかと思っています。
マーキングして追跡したわけではないので確かなことは言えませんが、冬場の越冬集団も多くは元の卵の抜け殻を取り囲むようにして集まっていますし、暖かい季節でも脱皮や羽化の際にはほとんど集団の中心部に戻って来るようで、集団から離れた場所での脱皮・羽化はほとんど見られません。
ということでこの写真の幼虫達も同じ卵塊から生まれた兄弟の可能性が高いと思うのですが、それが共食いをしない理由になるかどうか・・・。テントウムシなどは兄弟同士で盛んに食い合っていますね。
以前に一度だけですが、このサシガメの幼虫がクヌギの白く濁ってクリーム状になった樹液の中に深々と口吻を差し込んで、小さな蛆虫を引っ張りだすのを見たことがあります。また、サクラの幹に生えたキノコの傘に口吻を差し込んでいるのを見たときは、キノコを割ってみると中に甲虫のものらしき幼虫(おそらくキノコムシ?)が数匹入っていました。結構微妙な感知能力をを持っているのかも知れないと思いました。
投稿: おちゃたてむし | 2011年10月17日 (月) 22時24分
おちゃたてむしさん、有難うございます。
この虫は1928年ころに中国から九州へ入った帰化昆虫なんですねー。「ヨコヅナサシガメ」でciniiを検索すると、京大の井上弘さんの講演発表が見つかり、様子が少しわかりました。1)1・2 齢期に共食いが起きやすいが、卵殻があるとなぜか抑制される、2)1卵塊の幼虫は、中齢期以降に4頭前後の集団で餌探索をする、3)飢餓耐性は強く、集団では(1頭では襲えない)大型の餌でも捕食成功率が高い、とのことです。
おちゃたてさんのお見立ての通り、兄弟姉妹の意識はなくとも、プログラムに従って仲良く大物を探索するマタギ集団ということのようです。餌探知能力も、熟練のハンターとして特異なものがある、ということなんでしょうね。やっぱり「ハイエナ」といってもいいのかなー。
投稿: ezo-aphid | 2011年10月17日 (月) 23時09分
ezo-aphidさん、おはようございます。
早速件の講演要旨を読んでみました。
卵殻があると共食いが抑制されると言うのは面白いですね。アリのように直接相手の匂いによってではなく、自分が生まれた卵殻の近くにいることによって兄弟であることを「知る」というわけでしょか。
また、数匹が一つの獲物から吸汁している場面はよく見かけるのですが、それが集団の狩りの結果なのか、或いは他人の狩りのおこぼれに与っているだけなのか、襲う瞬間を見たことがないので疑問に思っていました。やはり集団で協力しあって狩りをするんですね。
他にも母虫の産卵習性と幼虫の共食いの関係など、とても興味深く読みました。面白い資料を紹介していただいてありがとうございました。
投稿: おちゃたてむし | 2011年10月18日 (火) 06時43分