アシナガバエ科の一種(Medetera sp.)(改題)
被写体としてはあまり魅力的とは言い難い地味なハエです。
いつもこのように頭を上に仰向けにそっくり返ったような姿勢で、木の幹をとり囲むように何匹もとまっているのをよく見ます。体長3.5mmほどです。
アシナガバエ科の一種だと思います。例のMNDの翅脈図で絵合わせを試みましたが、いくつかの属の間で判断がつきかねています。
(2011年12月31日・明石公園)
* 1月15日・追記とタイトル修正 *
ezo-aphid さんから、Medetera 属でいいだろう、との助け舟が来ましたので、タイトルに属名を加えました。
* 1月16日・追記と写真追加 *
ezo-aphid さんがこの属の習性についていろいろ調べて下さいました。詳しくはコメントと、そこで紹介されている diptera.info の該当箇所ををご覧下さい。
また、以前同じ場所で同種または近縁種と思われるハエの捕食の場面を撮った写真が出てきたので、追加しておきます。
赤いダニを捕えています。この写真だけでは正確な比較はできませんが、見える範囲では上の種と異なる部分はないように思います。
(2007年6月13日・明石公園)
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コメント
こんにちわ。明瞭で滑らかな曲線の翅脈がいいですねー。
A1が明瞭なのでMedetera属でいいと思います。日本では1998年当時で15種の記録があります(ciniiでMedeteraと検索すると論文が出ます)。それには、「採集はまだ不十分で、もっと多くの種がいるだろう」とありますので、画像による同定は無理でしょうね。
投稿: ezo-aphid | 2012年1月15日 (日) 12時10分
ezo-aphidさん、こんばんは。
Medeteraはキマワリアシナガバエ属という和名がついているんですね。少なくともこの写真の種に関しては成虫の習性を良く表した名称だと思います。ただ上の写真ではMNDの翅脈図に見えるCuA2が確認できないので迷っていました。Medeteraで検索すると非常によく似た画像がたくさん出てくるので間違いなさそうですね。タイトルに属名を加えておきます。ありがとうございました。
投稿: おちゃたてむし | 2012年1月15日 (日) 20時50分
なんて妙な和名、と思って少し調べました。どうやら樹幹の一定の高さで、集団がエサ待ち状態にいるのを指しているようです。
「Medetera jacula」で検索すると、diptera.infoにこの種の捕食・交尾・産卵などの生態観察が多数の写真とともに載っていました(英文の長文なのでひろい読みです)。ほとんどの時間帯は、樹高1mほどで、空を見上げて待ちの姿勢でいるそうです。餌はダニ・トビムシなどの小型昆虫(アブラムシ・クロバチ類・ヌカカ・クロキノコバエ・タマバエなど)で、手当たりしだいのようです。驚くのは食べ方で、吸汁ではなく、丸ごと飲み込む(トンボ幼虫の口器に近いのでしょうか)のだそうです。ちなみにウンコは液状なので、相当な消化力なんですね。求愛のときは前脚で背中を叩いています。 生態を観察して類似点が多ければ同定にも自信を持てますね。
投稿: ezo-aphid | 2012年1月15日 (日) 22時49分
追伸: M. aldrichi では、幼虫がキクイムシ類を捕食するとのことです。そういう食性なので、この属では雌雄ともに樹幹にいるのかもしれません。
投稿: ezo-aphid | 2012年1月16日 (月) 00時40分
ezo-aphidさん、おはようございます。
詳しく調べていただいてありがとうございます。
diptera.infoの写真を見て、地味な昆虫でもよく観察すればいろいろ面白い習性を見られるというこをあらためて認識しました。獲物が口器の中に消えていく連続写真や求愛行動など、時間さえかければ私にも見る機会はいくらでもあるはずだと考えると、虫探しの楽しみが一つ増えた気がします。
そう言えば、夏によく見るマダラアシナガバエの食事作法を見ていて、ムシヒキアブやオドリバエのようにときどき獲物を持ち替えながら静かに吸汁するのではなく、口元をもぐもぐ動かして噛み潰しているように見えるのを不思議に思っていました。同じ科であれば食べ方も共通しているのかもしれませんね。
過去の写真を調べてみるとよく似た種がダニを捕えているのが出てきたので追加しておきます。横からのカットしかないので正確な比較はできませんが、場所も同じなので同種の可能性もあると思います。
投稿: おちゃたてむし | 2012年1月16日 (月) 06時54分
この大きい獲物を、そのまま丸のみというのは不可能ですよね。
エサを丸のみ(swallow)するのはどういう口器なのかと思い、MNDでアシナガバエの図を探してみました。21頁のCondylostylus属(50-52図)の例を見ると、2叉の尖った犬歯状突起を伴う上あごと、噛むとそれを包み込みそうに大きな袋状(?)の下あごがあります。上あごのキチン構造は複雑で、食道(口腔)はこの間にあり、大きなエサはとても飲みこめそうにありません。くわえた獲物を下あごで支えつつ、上あごで表皮を切り裂いて体液を飲んでいる、というのがホントではないでしょうか? 噛みつぶしながら体液を絞り、内部の柔らかい組織も飲み込んでいるかもしれませんが。とすると、表皮など硬いキチン質部は、飲み込まれずに吐き捨てられるのだろうと想像します。
食後に、くしゃくしゃの殻をペッと吐いている姿を確認できるといいのですが・・・・・・。
投稿: ezo-aphid | 2012年1月17日 (火) 10時59分
ezo-aphidさん、こんばんは。
MNDの図を見てみました。この図を見ながら食べ方を想像するのは私には無理ですが、たかが小さなハエの口器といっても複雑な構造をしているものだと感心しています。おっしゃるように、一度食事の一部始終を観察したいものですね。ただアシナガバエの仲間はフラッシュ一発で跳び上がってしまうことが多いので、連続写真は難しいかも知れません。動画が撮れればいいのですが。とりあえず今度獲物を捕えた場面に遭遇したら、食べかすをどう処理するのか、驚かさないようにしてじっくり眺めてみたいと思います。
投稿: おちゃたてむし | 2012年1月17日 (火) 20時39分