ケチャタテ幼虫を襲うハエ(ヒメイエバエ科Fannia sp.)(改題)
ヤツデの葉裏でハエがしきりに何かを舐めていると思ったら、チャタテムシの幼虫です。撮影のために恐る恐る葉を裏返してフラッシュを浴びせても気にせず舐め続けています。
チャタテはケチャタテ科の一種だと思います。最初死んだものを舐めているのかと考えましたが、よく見るとまだ生きているようです。
ハエは体長約5mm、翅脈を見るとイエバエ科あたりかとも思いますが、判断がつきません。
撮影を続けるうちに最初の獲物を放り出したハエは歩いて葉の表に回りこみ、はじめより小型のチャタテ幼虫を小走りに追いかけて捕らえました。しかしそれはこちらが驚かせたのか、あるいは獲物としては小さすぎたのか、ピントを合わせる前に放棄し、すぐまた近くにいた最初と同じくらいの大きさの幼虫を追いかけて押さえ込みました。
これは舐めているというのか食っているというのかよくわかりませんが、ハエはこの獲物もやがて放り出して立ち去りました。その後もチャタテムシの幼虫はまだ脚を動かしていましたが、よく見ようとするとポロリと落下してしまいました。
ハエの仲間には捕食性のものも多くいますが、こんな習性は初めて見ました。
(2012.03.19・明石公園)
* 2012.03.29・追記と改題 *
ezo-aphidさんから、写真のハエはヒメイエバエ科・ヒメイエバエ属(Fannia)の一種のメスであると教えていただきました。詳しくはコメントを。タイトルに科名と属名を加えておきます。
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コメント
チャタテムシを押しつぶして滲み出た体液を摂食してるのでしょうか、アシナガバエのような特殊な口器は持っていないと思うのですが・・・。
いつもの参考書(MND)でイエバエ科の翅脈を見ると、26 Euryomma属ではなく 25 Fannia属に一致しますね。いまは、Piezura属とともにヒメイエバエ科Fanniidaeとして独立しています。日本ではFanniaでは60種近くの記録があり、雄の交尾器を見ないと判別できないようです。ヒメイエバエ属(Fannia sp.)の雌、としておいていいように思います。
投稿: ezo-aphid | 2012年3月29日 (木) 18時35分
こんばんは。
決定的な写真ですね。
ケチャタテを舐めるハエ・・・いつもながら説得力のある写真。
ケチャタテとアブラムシの区別が付かない?ケチャタテは体表に何か分泌してる・・たまに口で潰せる生物がいる?
何でしょうね。
凄く興味深い行動です・・・気になります。
投稿: syuichi | 2012年3月29日 (木) 22時31分
ezo-aphidさん、こんばんは。
今回はイエバエ科あたりらしいというだけで少々恐れをなして、いつもの参考書に目を通すのもサボっていました。ご指摘のとおりMNDのFanniaの翅脈が、微妙な曲線にいたるまで良く一致し、これなら間違いないと思います。タイトルに属名を入れておきます。ありがとうございました。
このハエの食事方法はただ舐めているという風にしか見えませんでしたが、ezo-aphidさんのおっしゃるように押しつぶして体液を吸うというのが正解かも知れませんね。おそらく専門化した捕食者ではなく、機会があればチャタテムシの幼虫のような小型で無力な獲物を襲うこともあると言う程度だと思います。
投稿: おちゃたてむし | 2012年3月29日 (木) 22時33分
syuichiさん、こんばんは。
最初はただ舐めているだけかと思って見ていたのですが、その後2度にわたってチャタテ幼虫を追いかけて捕らえたのには驚きました。普段気にもとめないような、見るからにごく普通のハエがこんな面白い行動を見せてくれたのは意外です。
投稿: おちゃたてむし | 2012年3月29日 (木) 23時20分