キモグリバエの一種(Conioscinella subdivitis)(改題)
冬の初め、ツバキの葉裏でセミの抜け殻の陰に集まっていたのと同じキモグリバエです。今度はすぐ近くの、やはりツバキの葉裏で集団を作っていました。
100匹は軽く超えているでしょう。近くに発生源があるのか、それとも別にこのハエを惹きつける原因があるんでしょうか。
まだ寒いといっても冬に見た時よりよほど活動的になっていて、アップで撮るために手前の邪魔な枝に触れると途端に解散してしまいました。そこで残っていた2,3匹を持ち帰り、深度合成写真を撮ってみました。
上から3枚は同じ個体ですが、翅脈がよく見えないので4枚目に別個体を追加しました。冷凍庫に放り込んでいたせいかお腹が縮んでしまって生時とはかなり違った姿になってしまいました。
(2012.03.27・奥須磨公園)
* 2012.04.03・写真追加 *
単眼三角部の短毛の状態(ezo-aphidさんのコメント参照)を見るために頭部を撮りなおしました。無理な拡大率なのでひどい画質ですが、下に追加しておきます。
* 2012.04.05・追記とタイトル変更 *
写真のキモグリバエにつき研究者の上宮先生から、Oscinellinae亜科の一種のConioscinella subdivitis Nartshuk, 2006と同定していただきました。類似属との区別点や生態についてもご教示いただきましたので詳しくはコメントをお読みください。タイトルに種名を加えました。上宮先生、ありがとうございました。
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コメント
深度合成にお手数をおかけ頂きありがとうございます。
お陰さまで、翅脈のようす、頭・胸・小楯板の毛がよく見えるようになりました。しかし、こちらの経験不足で(どうやらAphanotrigonum属あたりという感触があるものの)やっぱり詰められません。 前回の大集団の中に、羽化直後で発色不足らしい個体もいたので、付近の腐植有機物で育ったのだろう、とみているのですが・・・・・。
投稿: ezo-aphid | 2012年4月 1日 (日) 19時11分
ezo-aphidさん、こんばんは。こちらこそ、いつもお手数かけてすみません。
Aphanotrigonum属と聞いて早速いつものMNDで頭部と翅脈の図を見ましたが、キモグリバエ科はどの属もほんとによく似ているんですね。私にはさっぱり見当がつきません。
これだけの数が集まるのは、やはりご指摘のように近くに発生源があるということでしょうね。
投稿: おちゃたてむし | 2012年4月 1日 (日) 22時18分
あー、そういえば、キモグリバエだけは旧北区むけの資料ばかり見て、MNDは全く見ていませんでしたねー。
実はIncertella属との迷いもあったのですが、MNDの頭部の2図を見ると両属の違いも判り、この画像に「?Aphanotrigonum sp.」と表示できるくらいよく似てると思います。頭部の単眼を含む三角域に2列の短毛があることがポイントで、それは頭部の微細画像とMND図を見なければ判りませんでした。ありがとうございました(すっきりして消化不良の疲れがとれました)。
投稿: ezo-aphid | 2012年4月 2日 (月) 00時24分
ezo-aphidさん、おはようございます。
写真の解像度が足りなくてもどかしいのですが、「2列の短毛」は私の写真では三角域の外側にあるように見えるのですがいかがでしょうか。
投稿: おちゃたてむし | 2012年4月 2日 (月) 06時36分
言われてみるとビミョーですね。拡大しても毛は認識しづらいので、このままのサイズで見て暗色の点を毛基と解釈しています。境界あたりの点列のほかに、単眼との中間に数個の暗点があるので、これをカウントして2列と判断しました(現物を見ないとダメかもしれませんねー)。
投稿: ezo-aphid | 2012年4月 2日 (月) 07時14分
ezo-aphidさん、おはようございます。
何とか写真で確認出来ないものかと思って撮りなおして見ましたが、細かい毛のような物はなかなかうまく写りません。あまり役に立たないかもしれませんが、写真を追加しておきます。
投稿: おちゃたてむし | 2012年4月 3日 (火) 10時05分
おちゃたてさん、個人的な右往左往におつき合い下さりありがとうございます。
三角域の定義がわからなくなってきましたが、ご指摘の通り、毛列は三角の暗色域より外にしか無いようですね。検索表を見るときに、画像に見えない部分などは過小評価して無理に進んでしまいますが、今回は、5枚目の「立派な口吻」を見落としていました。Aphanotrigonumグループ11属中のTrachysiphonella属について検討すべきなのかもしれません。とりあえずは退却(転進?)し、頭を冷やしてみます。
投稿: ezo-aphid | 2012年4月 3日 (火) 19時17分
ezo-aphidさん、おはようございます。
とても詳しく検討していただいて、こちらこそ感謝しております。しかしやはり写真では痒いところに手が届かない部分がどうしても残りますね。MNDなどで使われている図と比べれば、写真で得られる情報は僅かなものだと実感しますが、私としては少しでもましなものをお見せできればと願っております。
投稿: おちゃたてむし | 2012年4月 4日 (水) 06時50分
キモグリバエ科の分類をかじっている者です。偶然にも、自分の関心のある写真の掲載されたサイトを目にしました。明瞭な写真に敬意を表して、コメントさせて下さい。この種は台湾、南西諸島から九州、四国、北関東まで広葉樹林帯に生息するOscinellinae亜科の1種で、未記載種として関心を持っていました。古い時代にBecker, Duda, Freyなどがアジアから何か別の属で記載した可能性により、そのままにしていました。しかし、本種を南西諸島で最近採集したロシアの人がいて、同国の分類学者の手で新種として記載されました。顔の額に中央隆起が弱いことと、顔の頬が側面からみて前に突出していないことなどで、Aphanotrigonum属などの類似属と区別されます。胸背に2−3本の明瞭な点刻条がないのも特徴です。本種が写真のように集合した理由として、ノメイガ類の幼虫がカシ類の枯れた葉を絹糸で集めて作った大きな巣の中で群棲することに関係すると考えています。それらの巣内の有機質(集まった膨大な糞)で生育するのではと想像しています。本種の成虫は蜘蛛の糸にかからない能力を具えています。種名は Conioscinella subdivitis Nartshuk, 2006 と同定しました。和名はないですが、蜘蛛の巣の回りも平気でうろつくハエです(上宮)
投稿: 上宮健吉 | 2012年4月 5日 (木) 13時54分
上宮先生、(以前にも大変お世話になりましたが)お出まし頂きありがとうございます。
図版の少ない資料と格闘するのに疲れてましたので、種名に加え、類似属との区別点、生態などのご教示ありがたく存じます。図を見たいと思いましたが、原文はロシア語で、ネットでは英訳の1頁目しか見られませんでした。
Siphunculina属が鵜の糞から発生するという報文がありますが、昆虫の「ため糞」でも育つことには思い至りませんでした(ツゲノメイガやスガにも居るのかも)。
ところで、専門家の方にネット上の画像を見ていただくのに、記事に(間違っていても)学名が入ってることが役立つと思っているのですが・・・・。
おちゃたてさん、深度合成を頑張ったご褒美がありましたねー、お祝い申し上げます。
投稿: ezo-aphid | 2012年4月 5日 (木) 17時12分
上宮先生、このような素人のブログをお目にとめていただき光栄です。
以前にもezo-aphidさんのお取り計らいでご意見を頂戴したことがありましたが、同定をしていただいた上に形態上の判別点や生態にいたるまで詳しくご教示いただき、ありがとうございます。
形態の細部は私には少々難しいですが、ノメイガ類の巣の中に群生するとのこと、大変興味深く思いました。育った場所を離れた後も、手頃な場所があれば集合する傾向が残っているのでしょうか。クモの巣の周りを平気でうろつくという習性とともに、出来れば写真に収めたいものだと思います。
ご教示いただいた種名は早速表題に掲げておきます。
投稿: おちゃたてむし | 2012年4月 5日 (木) 20時31分
ezo-aphidさん、こんばんは。
直接上宮先生からコメントをいただいた上に種名の同定までしていただけるとは、ほんとに思いがけないことでした。手間のかかる撮影ですし実物の代わりにはなりませんが、ひとまず役に立って良かったと思います。
たとえ間違いがあったとしても、記事や表題に学名が入っていたほうが詳しい方の目にとまり易いというご意見はもっともだと思います。ただ他力本願の多い素人としては、?印を付けるにしても蓋然性の度合いの判断が難問ですね。
投稿: おちゃたてむし | 2012年4月 5日 (木) 20時51分