タマバチの一種
* 2020.05.13 追記 *
最後の写真の虫こぶはアベマキハイボタマフシと呼ばれるもので、形成者はナラタマバチ族の Latuspina abemakiphila という種であることが分かりました。TAMABACHI JOHO-KANで紹介されています。 L.abemakiphila はコメントで ezo-aphid さんが挙げて下さった Cynipini 族の一種で、2016年に井手博士と九州大学の阿部芳久教授によって新種記載されたものです。こちらの記事にその雌雄の画像を掲載しましたが、下の写真のタマバチはまた別種のようです。
以前にも同じ時期に一度だけ撮ったことがあるのですが、アベマキの新葉に産卵するタマバチです。
探せば同じ木で数匹産卵していて、写真は複数の個体が混じっています。
この公園のアベマキでは例年同じ時期にこんな虫こぶがよく見られます。関係があるのかどうかわかりませんが、産卵時期に既にここまで成長しているのはおかしいですね。
(ハチ:2012.05.07/虫こぶ:2008.4.28 明石公園)
| 固定リンク
「膜翅目」カテゴリの記事
- モチノキタネオナガコバチ(2019.07.27)
- ナガコバチ科の一種(?Metapelma sp.)(2019.07.23)
- ウスマルヒメバチ亜科の一種(Lissonota sp.)(2019.07.18)
- フサトビコバチの一種(?Cheiloneurus sp.)(2019.07.12)
- アミメアリ(2019.07.04)
コメント
タマバチ科Cynipidaeは、「寄生蜂の解説」に説明がある通り、ゴールに関係するものですが、生活史が複雑、日本では同定が混乱中、同居者という(一種の栄養寄生)群がいるなど、現状ではとても難解ですね。「日本原色虫えい図鑑」には、虫えいと詳しい生態について多くが載っていますが、Abe, Melika & Stone(2007)によれば、それらを含めて日本産種の多くは学名を見直す必要があるとのことです。その内容を、カシ類Quercusに関係する属を拾い出して整理すると、Cynipini族(Andricus, Neuroterus, Dryocosmus, Callirhytisなど8属)とSynrgini族(Synergus, Saphonecrus, Ufoなど4属)の2群にわかれます。前者はゴール形成者で、側面から見た前胸の長さが中胸の長さの1/7以下と短かく、後者はそれらのゴールを利用する同居者で、前胸は中胸の長さの1/6以上(多くは1/3程度)だそうです。
この形から、(2010.10.20)の2種は、上段が同居者、下段がゴール形成者、ということが判ります。 ・・・・・属名までは勉強不足で判りません。
原色虫えい図鑑にある「クヌギハウラシロケタマフシ、C-087」が怪しいので、これについて抜粋します。「虫えいはアベマキ葉裏の脈上に形成される2mm前後の楕円体。展葉と同時に出現し、5月上旬には完熟して葉面から脱落。5月上中旬には成虫が出現して葉表!に産卵する」。なお、これは両性世代なので、単性世代は「クヌギハスジコタマフシ、C-082」となり「虫えいはアベマキ葉裏の脈側方にでき、2mmほどの楕円体。7月下旬から出現、8月上旬~10月下旬に落下する。成虫は晩秋に羽化、翌春に出現して芽に産卵する」とあります。クヌギハウラシロケタマバチという和名がありますが、学名不詳です。
投稿: ezo-aphid | 2012年5月19日 (土) 14時26分
ezo-aphidさん、こんばんは。
以前「虫こぶ入門」(薄葉重著・八坂書房)という本を読んだことがありますが、虫こぶをめぐる生き物の連鎖の複雑さに頭が混乱してしまいました。たまに目についたものを撮影しているという程度のかかわり方ではとても近づけない世界ですね。でもカシ類に関係するタマバチの中でゴールの形成者と同居者が胸部の形態で見分けられるというのは参考になります。
上に掲載したアベマキの虫こぶですが、これまで見た限りでは径5mm前後はある上に古くなっても色が黒ずんでくるだけで脱落せず、脱出口のような穴が開いたものが葉に残っています。葉表に産卵するという成虫も含めて、ご紹介いただいたものとは別種のような気がします。
投稿: おちゃたてむし | 2012年5月19日 (土) 20時27分
こんなのもありました。「クヌギハマルタマフシ、C-094:単性世代、ゴールはアベマキの葉表・裏の脈上に生じ、表面はややなめらかで球形、5-7mm。6月上旬から9月下旬まで出る。成熟したものは6月下旬から落下し始めるが、未成熟のものや同居蜂の被害にあったものは晩秋にも葉に残る。幼虫は10月に蛹化、11月に羽化し、12月に出現して花芽に産卵する。」 これは名前が判明しており、クヌギハマルタマバチ、Aphelonyx acutissimae Monzen です。その付記として、西日本のマルタマフシの中には、1)橙赤色の美麗なもの、2)中脈の両側に規則正しく列生するものがあり、これらは別種類なのかもしれない、とあります。
ゴールを観察するだけでも多様性があり、とても一筋縄では捕らえられそうにありません。
投稿: ezo-aphid | 2012年5月19日 (土) 21時46分
ezo-aphidさん、こんばんは。
詳しく調べていただきありがとうございます。クヌギハマルタマフシはネット上で画像がたくさん見られますが、形がほとんど球形で、やはり写真のものとは違うようです。クヌギ類にできるものだけでも実にさまざまなゴールがあるものですが、ひととおり探してみた限りではよく似た画像が見つかりません。持ち帰って羽化させられるようなものならいいのですが、そう簡単にいくはずはないでしょうね。
投稿: おちゃたてむし | 2012年5月20日 (日) 06時45分