ヒメコバチ科Tetrastichinaeの一種・産卵
冬の間葉裏などでただじっとしている姿ばかり撮ってきたヒメコバチですが、その一種の産卵行動を見ることが出来ました。Tetrastichinae亜科のようです。
見つけたのは沢山の赤い点のようなカシノアカカイガラムシが歩き回るアラカシの幹です。触角で足元を探りながらゆっくり歩くハチを見て、さてはこのカイガラムシがお目当てかと考えてしばらく追いかけてみました。やがてハチは白っぽくて半ば苔や木屑に覆われたような、一見樹皮の瘤のようにしか見えない塊をしばらく調べた後、産卵管を突き刺しました。
同じ木の幹では他にも2、3匹同種のハチが歩き回っていましたが、周囲にいくらでもいる1mmばかりのカイガラムシや綿に包まれた卵塊(?)には全く興味を示さず、上の写真と同様の小さな瘤状の塊に産卵する行動を何度も繰り返していました。
上の産卵シーンとは別の場所ですが、産卵管が突き刺されたのを確認した後でこの瘤のような塊を開いて見ました。色を見ればやはりカイガラムシのようですが、ただの不定形の塊のようにも見えます。以前の記事へのezo-aphidさんからのコメントに「ほぼ球形の中間幼虫(無脚!で口吻あり)」とあったのが、ひょっとしてこれのことでしょうか。
産卵していたハチを一匹採集して深度合成撮影をしました。
いつものようにCombineZPによる深度合成です。倍率を上げるほど処理の不完全な部分が目立ってきます。また磁力線のような縞模様の出る原因もわかりません。元画像の露出のばらつきに原因があるのかも知れません。レタッチすればいいのですが、時間がかかるのでそのまま出しています。
(2012.05.03・学が丘北公園)
| 固定リンク
「膜翅目」カテゴリの記事
- モチノキタネオナガコバチ(2019.07.27)
- ナガコバチ科の一種(?Metapelma sp.)(2019.07.23)
- ウスマルヒメバチ亜科の一種(Lissonota sp.)(2019.07.18)
- フサトビコバチの一種(?Cheiloneurus sp.)(2019.07.12)
- アミメアリ(2019.07.04)
「半翅目」カテゴリの記事
- ホシヒメヨコバイ(2019.07.28)
- ミズムシ科の一種・幼虫(2019.07.26)
- ヒゲナガサシガメ幼虫(2019.07.25)
- トサカグンバイ(2019.07.22)
- クサギカメムシ1齢幼虫(2019.07.19)
コメント
よく見ていますねー、いつもながら、すごいです。
コバチ上科のデータベースでKuwania属の寄生者を探したところ、ヒメコバチ科の記録はありませんでした(AphelinidaeとEncyrtidaeの各1種のみ)。種名が判れば新記録になりますね。
このカイガラムシの生育経過を、河合さんの図鑑から次のように読みました。「年1回の発生で、越冬は楕円球形の中間幼虫(有吻・無脚)でなされる。有脚・無吻の雌成虫が4-6月に現れ、白色綿塊状の卵嚢を作って産卵する。孵化幼虫(有脚・有吻)は5月下旬から出始め、2齢から終齢(?3齢)までは無脚で枝や幹に固着し白色綿状物でおおわれる。」中間幼虫というのはよく理解できませんが、特定のステージではなく、2齢~終齢までの不特定の無脚幼虫を指しているようにも思えます。
投稿: ezo-aphid | 2012年5月 8日 (火) 06時58分
ezo-aphidさん、こんばんは。
さっそくお調べいただいてありがとうございます。ハチが産卵していた塊の被覆物は「綿状」と言うには硬かったような気がしますが、ご紹介いただいた生育過程に照らせばこれが2齢~終齢の固着性の幼虫にあたるんでしょうか。越冬態の中間幼虫というものがどんな外見をしているのかも気になります。季節から考えるとどちらの可能性もありそうにも思えます。ひとつ気になるのは寄生者に比べて寄主のカイガラムシが小さいことですが、ハチの孵化幼虫は複数の寄主を食べて成長するんでしょうかね。
投稿: おちゃたてむし | 2012年5月 8日 (火) 20時12分
こんばんは。
冬場の葉裏の小さなハチの活動期の生態を垣間みるのは感動&何か感慨深いものがあります。たまに顔なじみ?に出会いますが、すぐ飛び立ってしまいます。こういうシーンに出会いたいですね。
投稿: BABA | 2012年5月 8日 (火) 22時00分
BABAさん、こんばんは。
全く同感です。NeanastausやPediobiusなど、是非一度その活動シーンを見たいものですね。もっと現実的には、今年は何とかニッポンオナガコバチの産卵時期が確認できればと期待しています。昨年は春以降いつもの公園を訪ねる度にクロガネモチの枝を見上げていたのですが、ついに産卵を見ることが出来ませんでした。
投稿: おちゃたてむし | 2012年5月 8日 (火) 22時30分
画像に見入ってると、つい大きさのことを忘れてしまいます。
お尋ねの疑問点については判りません。ヒメコバチ科の幼虫では、種によって外部寄生と内部寄生の両者があって、前者の場合は複数(個体や種)を寄主として利用できるとのことです。ただし、これは閉鎖環境(まゆ、蛹殻、潜葉痕、坑道、介殻など)に限られるので、このアカカイガラの場合では(たぶん1個体ずつの綿まゆでしょうから)難しそうです。では、これは雌親の失敗や間違い事例かというと、そうとも言い切れません。寄主が小さい場合には小型成虫が羽化するヒメコバチ種もいるとのことなので。
投稿: ezo-aphid | 2012年5月 9日 (水) 18時55分
ezo-aphidさん、おはようございます。
ハチが産卵していた綿まゆ(幼虫?)はちょっと触ってみた限りではかなり硬そうで、ハチの幼虫がその一つから脱出して他の綿まゆに侵入するのは確かに不可能のように思えます。「寄主が小さい場合は小型成虫が羽化する」とは意外ですが、そう言えば狩りバチ類でもそんな現象がありますね。同じ木で同時に数匹が産卵していたので、親バチの間違いということはないと思います。いつもながら勉強になります。ありがとうございました。
投稿: おちゃたてむし | 2012年5月10日 (木) 06時55分