オナガバチの一種(Megarhyssa sp.)・メスの脱出
立ち枯れのエノキでメスの誕生を待つ大型のヒメバチ(Megarhyssa sp.)のオスたちです。同じ情景は一昨年にも記事にしていますが何度見ても面白いもので、今回も2時間近く付き合ってしまいました。
画面右上にかたまっている数匹はメスの開けた脱出口に既に腹端を差し込んでいます。
初めてこんな状態を見た時は複数のメスが同じ穴に産卵しているのだと思ったものです。枯れ木の中で羽化したメスが外界に向かって脱出口を貫通させた瞬間に、そのメスが顔を出す間も与えず待ち構えていたオスたちが争って腹部を穴に差し入れるようです。近づくと周囲のオスたちはほとんど逃げてしまいましたが、腹部を穴に入れた連中は動じません。
見たところオスたちの間に争うような動きは全くありませんが、それでも何らかの競争があるのでしょう。一匹また一匹と去って行き、最後に残った一匹が腹部を深々と差し入れます。
しばらくして上のオスが穴から出ると、舞い戻ってきた一匹が同じように腹部を差し入れました。
やがて2匹目のオスの立ち去ると、ようやくメスが顔を出してきました。オスたちはすでに関心を失ったようで、別の場所に集まっています。
穴の内側を大アゴでひとしきり削っては頭を出してみる、という動作を何度か繰り返します。
ようやく全身が出てきました。同じ木の別の場所では相変わらず数匹のオスがたむろしていますが、メスを出迎えるものはいません。
一昨年の記事の例ではこの時まで多数のオスが待ち受けていて、メスは出てくるなりもみくちゃにされていました。この違いは何によるのでしょう。
(2012.06.13・明石公園)
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コメント
こんばんは。
最近のおちゃたてむしさんの濃厚な記事内容にお腹いっぱいであります(^^)昨年の記事の時も思いましたが立ち枯れのエノキを舞台にしたドラマ見てみたいですね。雰囲気的にヤブ蚊が凄そうです。
投稿: BABA | 2012年6月30日 (土) 18時15分
BABAさん、こんばんは。
何度も見ている光景なのですが、こんな大型の虫がたくさん集まっているとつい見入ってしまいます。ヤブカはほんとに多いですね。体にとまった奴を叩こうとして肝腎の被写体を追い払ってしまうことも度々です。
投稿: おちゃたてむし | 2012年6月30日 (土) 21時19分
私のブログにオオホシオナガバチのオスを載せましたが、やはり微妙に模様が違いますね。
このようなメスの誕生を待つオスの姿は他の季節にも見られているのでしょうか。
投稿: そよかぜ | 2012年9月11日 (火) 21時29分
そよかぜさん、こんばんは。
明石公園ではこのような光景は毎年どこかで見られるのですが、5月中旬から7月上旬あたりが最盛期のようです。古い写真を調べると7月28日という例もありましたが、お盆を過ぎてこのハチの姿を見たことはないと思います。
それに対して同じヒラアシキバチに寄生するオオホシオナガバチの産卵が6月と9月に見られたというそよかぜさんの観察は興味深いですね。ヒラアシキバチの羽化のシーズンは(明石公園では)9月初めからの一ヶ月半ほどなので、今頃はすでに蛹になっているものが多いでしょう。あるいはオオホシオナガバチの場合、ヒラアシキバチ以外にも寄主が存在する可能性はないでしょうか。
投稿: おちゃたてむし | 2012年9月11日 (火) 22時50分