チャタテムシ幼虫に産卵するハラボソコマユバチ亜科の一種(?Leiophron sp.)
* 2017.06.12・追記 *
いつも拝見しているクマGさんのブログに、チヤタテ幼虫の腹部から黄色いイモムシが出てくる瞬間を捉えた見事な写真が掲載されました。ezo-aphidさんからのコメントによればチャタテムシに寄生したハラボソコマユバチ亜科の蛹は土中で越冬するそうですから、クマGさんが撮影された場面は同じハラボソコマユバチ亜科の、まさに蛹化のために寄主から脱出する瞬間なのかも知れません。
* 2012.06.20・追記とタイトル変更 *
ezo-aphidさんが調べて下さったところ、チャタテムシ類に寄生するコマユバチはハラボソコマユバチ亜科 Euphorinaeのみで、翅脈からはその中でもLeiophron属あたりではないかというご意見をいただきました。詳しくはコメントをご覧下さい。タイトルの「コマユバチ科の一種」を「ハラボソコマユバチ亜科の一種」に変更します。
* 2012.06.20・追記とタイトル再変更 *
その後のezo-aphidさんからのコメントによると、チャタテムシ幼虫に寄生するコマユバチはLeiophron属のみだそうなので、タイトルに属名を入れておきました。
アラカシの幹で、チャタテムシの幼虫に産卵する小さなハチを見つけました。
幹の上を走り回って小さな獲物を見つけては産卵管を突き刺します。このアラカシでは毎年ダルマカメムシが発生するので今年もそろそろ成虫が見られる頃だと思って眺めていたのですが、初めて見るハチの行動にカメムシの方はすっかり忘れてしまいました。
肉眼ではほとんど気がつかなかったのですが、ハチの行動をカメラで追っていると獲物のチャタテ幼虫は樹皮の割れ目などでいくらでも潜んでいます。
かなり早いペースで次々と獲物を見つけては産卵するのでチャンスは何度もあるのですが、樹皮の凸凹が邪魔になり、また動きの速いことも手伝ってなかなか双方にピントの合った写真が撮れません。周囲に赤く点々と見えているのはカシノアカカイガラムシで、ハチの口元にも一匹くっついています。
ハチは体長約2mmで、コマユバチの一種だと思います。寄生を受けたチャタテムシはおそらく成長してからマミー化するのだろうと思いますが、これまでそれらしいものを見た記憶がありません。ひょっとして人目につかないような場所に移動してマミーになるのか、単に見落としているだけかも知れませんが、しばらくして同じ場所で探してみようと思っています。
(2012.06.05・明石公園)
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コメント
おはようございます。
これまた、すごい現場ですね。また1つ寄生蜂の産卵の実体が見られるとは...興奮。様々な昆虫の生態写真がありますが、私的には寄生蜂の生体への産卵がドラマチックでドキドキします(^^
投稿: BABA | 2012年6月20日 (水) 08時20分
あれぇ、この翅脈はどっかで見たなぁ、と思ったら「旧北区コマユバチ科の亜科図解検索(Achterberg,1990)」に載ってたもの。・・・・・「key Holarctic Braconidae」で検索すると出てきます。そこで、亜科ごとに寄主を見ると、チャタテムシ類に寄生するのはハラボソコマユバチ亜科Euphorinaeだけでした(17頁)。
この翅脈を探してたどり着いたのが「Leiophron Nees Corsica」で呼び出したSimboletti et al.(2002)です。そこには、Euphorini族(Euphorina, Leiophron, Peristenus, Euphoriella, Euphoriana)はカスミカメムシ科やチャタテムシ類に寄生する(339頁)とあります。図を見るとLeiophron属内でもずいぶん翅脈が違っていますが、おおよそこのあたりと思って良いのではないでしょうか。残念ながら、これらのどの属も、国内からの記録はなさそうです。
図解検索をご覧になってお判りと思いますが、コマユバチを見分けるのは難しいことですねー。
投稿: ezo-aphid | 2012年6月20日 (水) 10時03分
調べてみるとWatanabe(1937)がLeiophron属で aino, antennalisの2種を国内から記録していますが、Belokobylskij(1992)によってCentistes(Ancylocentrus)属に移されました。
Leiophronの寄生例は、カスミカメムシ幼虫が多く、チャタテムシの例は見つけられません。報告の中に「土中で越冬したコマユバチ繭は・・・・」とあります(多くは脱出して蛹になる?)ので、チャタテムシの寄生マミーは作らない可能性があります。
投稿: ezo-aphid | 2012年6月20日 (水) 14時09分
BABAさん、こんばんは。
初めて見る寄生の習性には確かに興奮します。この時期、野外ではいたるところでこんな寄生バチが活躍しているんでしょうが、運良く目にとまるのはごく一部なんでしょうね。個人的には狩りバチにも大変興味があるのですが、このところあまりお目にかかれません。
投稿: おちゃたてむし | 2012年6月20日 (水) 19時47分
ezo-aphidさん、こんばんは。
こんなに素早く調べがつくとは、びっくりしました。コマユバチの一種らしいとは見当がついたものの、寄主で検索しても何もひっかからず、それ以上の追求はお任せするより仕方がないと考えていたところでした。さすがですね。
ハチや寄主の大きさなどからの連想で、当然アブラバチのようなマミーを作るのだろうと思ったのですが、土中で越冬、と言うことはやはり寄主から脱出して蛹化するんでしょうね。道理でそれらしい物を見かけないはずです。しかしその場合、ハチと寄主との関係を解明するのはとても困難な作業になるだろうと想像します。また、ハチの大きさから見て最後には脱出するとしても、おそらく寄主が終齢近くになってからだろうと思われます。探せばその残骸くらい見つかるかも・・・と考えましたが難しいでしょうね。
タイトルにはとりあえず亜科名を加えておきます。ありがとうございました。
投稿: おちゃたてむし | 2012年6月20日 (水) 20時17分
その後、あれこれ論文の要約を覗いたところ、チャタテムシ幼虫に寄生するコマユバチはEuphoriella、Leiophronの2属のみで、前者は(後者の)synonym処理により消えてしまいました。なので、まったく絵合わせできていないのですが「?Leiophron sp.」としてもいいことになります。 ところで、このチャタテムシの成虫はどのくらいの体長でしょうか(種は判りますか?)。産卵されてる幼虫がかなり小さそうなので、寄主として少し不安です。
投稿: ezo-aphid | 2012年6月20日 (水) 21時41分
ezo-aphidさん、
ありがとうございます。寄主でそこまで絞り込めるとは思いませんでした。タイトルに属名を入れておきます。チャタテムシは一見アブラムシと同じように数が多くしかも無防備な印象が強いですが、寄生者は多くはないんでしょうか。
寄主の大きさは私も気になったのですが、この時は成虫が見られなかったので一週間後訪れた際に同じ木で探してみました。そしてハチが産卵していたものと同種と思われる多数の幼虫の近くに、羽化直後らしき成虫が数匹いたのを撮影してきました。それを過去の写真と比較すると、2011.08.05の記事に出してpsocodeaさんから「多分Neoblasteの一種」と教えていただいたものと同種のようです。翅端まで約4mm、体長約2.7mmですが、ハチに比べるとずんぐりした体型なので寄主としてはどうにか間に合うのではないかと想像します。
投稿: おちゃたてむし | 2012年6月20日 (水) 23時41分
記事にコメント頂き、ありがとうございます!
こちらの記事、大変参考になりました。
こちらの記事のコメント欄にもあるように、もしもハチの幼虫が蛹化のためにチャタテムシの身体から脱出するならば、まさにそのシーンだったのかもしれませんね。
もう少し、幼虫とチャタテムシの様子を見守るべきだったと後悔しております。
記事にリンクを貼らせて頂いてよろしいでしょうか??
それにしても、いつもながら凄いシーンを撮影されていらっしゃいますね!
感動的(@_@;)
投稿: クマG | 2017年6月11日 (日) 23時59分
クマGさん、こんばんは。
この、チャタテムシに寄生したコマユバチ幼虫がその後どうなるんだろうと考えていたのですが、先日のクマGさんの、チヤタテ幼虫から出てくる寄生虫の記事を拝見してこれがそうなのか、と思いコメントさせていただきました。
同じ仲間である可能性が高いと思いますので、そちらの記事にリンクを貼っていただければ有難いです。こちらの記事からもリンクさせていただきます。
よろしくお願いいたします。
投稿: おちゃたてむし | 2017年6月12日 (月) 20時39分
記事へのリンクありがとうございます。
こちらも追記させて頂きました。
ブログのリンクもさせて頂きました!・・今後ともよろしくお願いいたします(^^♪
投稿: クマG | 2017年6月13日 (火) 08時16分