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2012年6月11日 (月)

マルズヤセバエ科の一種(Rainieria sp.)(改題)

* 2012.06.11・追記とタイトル修正 *

写真のハエについてezo-aphidさんから、琉球列島のマダラアシナガヤセバエとは別種ではないかとのご指摘がありました。さらに茨城_市毛さんより、これはマダラアシナガヤセバエの属するナガズヤセバエ科とは別の、マルズヤセバエ科に属するマエジロアシナガヤセバエの近縁種(Rainieria sp.)であるとのご教示をいただきました。詳しくはコメントをご覧下さい。タイトルを「マダラアシナガヤセバエ」から表記のように変更しました。

十数年ぶりに撮影したハエです。初めて見た時は図鑑類にも似たものが見当たらず私にとっては謎のハエだったのですが、今回改めて調べてみるとネット上に同種らしき画像が多数見つかりました。それらはすべてマダラアシナガヤセバエ Gymnonerius sp.ということで一致していますが、詳しい記述が見つからず、また分布は琉球列島とされているものの本州各地でも見られているようです。

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林の下草の上を、先の白くなった長い前脚を指揮棒のように振り動かしながら歩いていました。

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翅には黒っぽい斑紋があります。体長約10mmです。

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これは別個体。
ミバエの仲間が翅をひらひらさせながら歩き回る様子を思わせる動きですが、誰に見せるためなのでしょう。

(2012.06.01・明石市 松陰新田)

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双翅目」カテゴリの記事

コメント

おはようございます。触角の色と前胸の形が、琉球列島のものとは違っているような・・・・・。お腹の太さは雌雄差なんでしょうかね。

投稿: ezo-aphid | 2012年6月11日 (月) 07時15分

写真のハエはマダラアシナガヤセバエ Gymnonerius sp.ではなく,Rainieria latifrons マエジロアシナガヤセバエです.北隆館の原色昆虫大図鑑に載っています.
本種については,多数のHPで間違いが多く困っています.GymnoneriusはNeridaeナガズヤセバエ科の1属で,Micropezidaeマルズヤセバエ科の1属であるRainieriaとは触角刺毛の位置が全く異なります.

投稿: 茨城_市毛 | 2012年6月11日 (月) 19時13分

標本箱を確認してみたら,追加情報のメモがありました.
近年,Rainieria latifrons が2種に分かれ,日本に分布しているはRainieria hennigi M. Kriv. et N. Kriv., 1996と変わっています.
また,中・後脚の付節が白い種類はRainieria sp.で,本州産と沖縄産で脚の色が異なるので♂交尾器の比較検討が必要とメモってありました.
従って,写真のアシナガヤセバエはマエジロアシナガヤセバエに近縁なRainieria sp.となります.

投稿: 茨城_市毛 | 2012年6月11日 (月) 20時38分

ezo-aphidさん、こんばんは。
ご指摘のとおりですね。沢山のよく似た画像が同じ種名で出てきたので喜んでしまって、はっきりした違いを見落としていました。改めてこの和名を冠した画像を点検してみると、黄色っぽい触角・短い前胸=琉球列島、黒褐色の触角・長い前胸=本州各地、ときれいに分けられるようです。更に茨城_市毛さんよりコメントをいただきこちらの種名も判明しましたので、タイトルを変更しておきます。有難うございました。

茨城_市毛さん、こんばんは。
お名前はかねがね拝見しておりましたが、直接ご教示いただけるとは思いもよらぬことでした。ezo-aphidさんからのご指摘で、琉球の種とはどうやら別種らしいとまでは分かったのですが、科のレベルで異なるとは予想外でした。北隆館の大図鑑でも全く気付いていなかったのですが、写真で見ることの出来る範囲では記載文によく一致することがわかります。触角刺毛の位置の違いは、虫ナビさんのところのGymnonerius sp.の画像と見比べて確認することができました。早速タイトルと記事を修正しておきます。有難うございました。

投稿: おちゃたてむし | 2012年6月11日 (月) 20時40分

茨城_市毛さん、
ちょうどコメントが行き違いになってしまいました。
タイトル表記は"マルズヤセバエ科の一種(Rainieria sp.)"としておきます。有難うございました。

投稿: おちゃたてむし | 2012年6月11日 (月) 20時46分

市毛さん、お出ましありがとうございます。日本のMicropezidaeは、まだまだ整理不十分ということが判りました。Gymnoneriusで検索して現れる画像の多くは虫ナビさんも含め、ほとんどはマルズヤセバエ科のようですね。
シロ―トの頼りはいつものMNDと、翅脈を見るとRainieria属にぴったり合いますね。Neridaeナガズヤセバエ科のモンキアシナガヤセバエ(大図鑑ではGymnonerius属)Nerius femoratus のきれいな側面画像は Acleris(2009.08.22)さんとこで見られます。こちらは、触角刺毛が節の先端部から出ていること、前脚がわりと長めという、科の特徴が判りやすいです。

投稿: ezo-aphid | 2012年6月13日 (水) 19時15分

ezo-aphidさん、こんばんは。
少々頭が混乱してきました。実は虫ナビさんのところの「マダラアシナガヤセバエ」こそがGymnonerius sp.(Neridae)だと理解していたのですが・・・。この属名で検索をかけても同様の画像しか出てこなかったのですが、大図鑑ではモンキアシナガヤセバエがGymnonerius属となっていることには気付きませんでした。確かに、ネット上の「マダラアシナガヤセバエ」と同属とは思えませんね。以前このブログでも「モンキ」を掲載したことがあって(2010.07.12)、その際にAclerisさんの記事も参照させて貰ったように憶えています。

投稿: おちゃたてむし | 2012年6月13日 (水) 20時58分

あーれ~、これは失礼しました、以前にご報告済みとは気づきませんでした。
マダラアシナガヤセバエ Gymnonerius という組合わせの根拠は印刷物だろうと思うのですが、いったい何なのでしょう。「一寸のハエ・・・・」ではRainieriaが話題になったことはありますが、マダラ・・・、Gymno・・・、の語で検索しても反応はありません。Neriidaeの方もどうなっているのか、わからないですねー。

投稿: ezo-aphid | 2012年6月14日 (木) 00時24分

ezo-aphidさん、おはようござます。
不可解な現象ですね。そもそも「マダラアシナガヤセバエ」とは何者なんでしょうか。ところで、NeridaeとNeriidae、どちらが綴りが正しいんでしょうか。MNDでは後者になっていますが、前者で検索しても同じものが出てきます。

投稿: おちゃたてむし | 2012年6月14日 (木) 06時35分

Nerius属が科の代表種らしいので、それ由来でNeriidaeが正解ですね。大図鑑など、多くの参考書ではそうなっています。
ところで情報の発信元のあたりがつきました。「西表島フィールド図鑑(横塚眞己人、2004年)実業之日本社」の索引にこの和名がありましたので(学名が載っているかは判りませんが)。これを虫ナビさんが引用したものが、ネット上であっという間に流布したのだろうと想像します。ネットの影響力おそるべしですねー。

投稿: ezo-aphid | 2012年6月14日 (木) 12時01分

おちゃたてむし様, ezo-aphid様.

最初に,マダラアシナガヤセバエGymnonerius sp.が出てくる書籍は,1987年発行の「沖縄昆虫野外観察図鑑」です.
この図鑑は双翅目に詳しい人が関わっていなかったようで,シオヤアブ(ムシヒキアブの1種),ミナミオオハナアブ(オオハナアブ),ツマグロキンバエ(ハラアカツマグロキンバエ)等の間違いがあります.
ついでに,虫ナビさんも双翅目は間違いが結構ありますので御注意下さい(^_^;)

投稿: 茨城_市毛 | 2012年6月14日 (木) 19時07分

ezo-aphidさん、こんばんは。
やはりNeriidaeが正解ですか。他の昆虫を調べていても綴り違いというのは時々ありますから、そう厳格に考えることもないんでしょうかね。
さすが、誤情報の出どころを突きとめられましたか。と思いきや、市毛さんより更に大本の出処を示していただきまた。仮にも図鑑と名のつく出版物にはどうしても信頼感を持ってしまいますね。

投稿: おちゃたてむし | 2012年6月14日 (木) 20時11分

茨城_市毛さん、こんばんは。
1987年とはずいぶん古いんですね。ezo-aphidさんのコメントにある2004年の「フィールド図鑑」もここからの引用でしょうか。
昆虫関係のサイトを運営されている方の多くはプロではないと思いますが、こちらも素人なので複数のサイトの記述が一致していればつい鵜呑みにしてしまいます。このブログを同定の参考にされる方はまずいないと思いますが、誤情報を広めるお手伝いをしないように心したいと思います。有難うございました。

投稿: おちゃたてむし | 2012年6月14日 (木) 20時22分

おちゃたてむし様.

色々な文献を集めて調べてみましたが,沖縄産はMimegralla albimanaとなるようです.和名はマダラアシナガヤセバエが定着しているので,このままで良いと思います.(M. albimana galbulaと亜種を認める場合と,Mimegralla albimanaと亜種を認めないケースがあります)

本州に分布しているのは,Mimegralla属とRainieria属の両方の形質を持っており,どちらの形質を優先するかで属が変わりそうです.
東洋区のMimegralla属については,1959年以降再検討されていないようなので判断が難しいです.


投稿: 茨城_市毛 | 2012年7月 6日 (金) 08時42分

茨城_市毛さん、お知らせありがとうございます。
「みんなで作る双翅目図鑑」マルズヤセバエ科の追記を読みましたが、エゾ地に飛び火することになるとは・・・・・。さっそく、帯広市で2雄を捕えて眺めたところ、ここのRainieriaと概観は似ていますが、脚の模様が違っています。1)ふ節が白いのは前脚のみ、2)中・後腿節のほとんどは黒褐色で、基部5%長と端部直前の10%長の2か所のみが黄色(黄環という?)です。これは Rainieria hennigiの特徴にあうのでしょうか?  また、hennigiは本州にも分布するのでしょうか?   (おちゃたてさん、便乗質問をして、すみません)

投稿: ezo-aphid | 2012年7月 6日 (金) 13時22分

茨城_市毛さん、こんばんは。
詳しいご教示ありがとうございます。このあたりで見られるものはMimegralla属ともRainieria属とも断定は出来ないわけですね。まだ未解決の部分の多い分類群だということがよく判りました。ネット情報では和名のマダラアシナガヤセバエは広く行き渡っているようですが、多くの場合それにGymnoneriusの属名ががあてられているのは混乱の元ですね。

ezo-aphidさん、こんばんは。
どうぞ遠慮なくご利用下さい。さっそく採集できるところなど、そちらでは多いんでしょうか。脚の色分けはネット上で見る本州産のものの画像でも微妙に違いがあるようですが、何種くらい分布しているんでしょうね。

投稿: おちゃたてむし | 2012年7月 6日 (金) 20時48分

ezo-aphid様.
M.Kriv. et N. Kriv.,(1996)によると,Rainieria hennigiは,国後,北海道・本州に分布するとなっており,R. latifronsはヨーロッパ~国後に分布と記されていますが,意外と北海道は両種が分布しているのではないかと思われます.
両種の形態的な差については,頭部の形態と♂交尾器ですが,Micropezidaeの頭部形態用語が独特なので説明が困難です.必要ならば原記載等をお送りします.(syrphidae.jp あっと gmail.com)

おちゃたてむし様.
一人で燃え上がってしまいすみません.
日本は旧北区と東洋区の接点ですので,属の定義の例外となる種類が時折見られるのですが,このような難しい問題はアマチュア分類屋の限界を超えるので困りものです.

投稿: 茨城_市毛 | 2012年7月 8日 (日) 12時20分

茨城_市毛 さん、こんばんは。
いろいろお調べいただきありがとうございました。
属の判定は微妙でも、私には科名がはっきり判っただけでも進歩です。
これからもお気づきの点があればお教えいただければ幸いです。

投稿: おちゃたてむし | 2012年7月 8日 (日) 22時31分

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