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2012年6月15日 (金)

タマゴクロバチの一種(Trissolcus japonics)・メスの羽化と交尾

* 2012.06.16・追記とタイトル修正 *

ひげぶとさんから、写真のハチはTrissolcus japonicus (Ashmead, 1904)で間違いないとのコメントをいただきましたので、タイトルの種名をTrissolcus sp.からTrissolcus japonicusに変更しました。

5月30日、明石公園のサクラの葉裏で寄生を受けているらしく黒ずんだカメムシ卵を見つけ、葉ごと自宅に持ち帰っていたのですが、その後その卵から予想通りタマゴクロバチの雌雄が出てきました。以前やはりカメムシ卵に産卵するのを見たのと同じ Trissolcus 属の一種だと思います。

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採集して帰ってから2日後の6月1日、夕方帰宅するとすでに2個の卵からハチの出た形跡があり、1匹は容器の隙間から逃げ出したらしく行方不明、残る1匹は写真のように卵塊に寄り添って離れません。おそらくメスの出てくるのを待つオスでしょう。

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翌朝(6月2日)、残り3個の黒化した卵で、内側からの貫通作業が始まったようです。ところが工事はこの状態で一時中断し、次の日も一日動きが見られませんでした。待ち構えるオスは撮影を始めると落ちつかなげにウロウロするものの、やはり卵塊から離れません。

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翌日は一日何の変化もなく、その次の日(6月4日)の早朝、ようやく工事が再開されました。3匹同時に脱出しようとしています。

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卵殻に小さな穴が開くとハチはその縁を内と外から大アゴで鋏み、円周にそってリボン状に噛み取っていきます。このあたりは以前に見たTelenomus gifuensis の脱出の場面と変わりがありません。

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まず最初のメスが脱出。待ち構えるオスがすかさず捉えて交尾します。

_dsc51042
後の2匹もやはりメスです。

2
2匹目のメスの脱出。オスが交尾器を伸ばすのがわかります。ずいぶん伸びるもんですね。
交尾を終えたメスは足早にその場を立ち去ってしまいました。最後、3匹目のメスの脱出は時間がなくて見届けることは出来ませんでした。

(2012.05.30・明石公園で採集/2012.06.01~04.・自宅にて撮影)

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膜翅目」カテゴリの記事

コメント

こんばんは。

 なんと素晴らしい時を捉えた写真なんでしょう。
あんな小さなハチの生態を捉えるって、想像も出来ません。

 一つ一つが・・・声もなし・・
  一杯書いたけど(笑)

投稿: syuichi | 2012年6月15日 (金) 19時29分

こんばんは。
一粒で二度美味しい...。どころではない見せ場てんこ盛りで素晴らしいですね〜。未だかつてタマゴクロバチの羽化はお目にかかっていませんので、そろそろ遇ってみたいです(^^

投稿: BABA | 2012年6月15日 (金) 21時34分

おちゃたてむしさん、こんばんは。
Trissolcus japonicus (Ashmead, 1904)で間違いないと思います。

投稿: ひげぶと | 2012年6月15日 (金) 22時13分

Syuichiさん、おはようございます。
タマゴクロバチ類に寄生されたカメムシ卵はこの時期葉裏を見上げていると結構見つかるもので、それを採ってきて自宅でハチの出るのを待っているだけなのでわりあい簡単な撮影です。小さなハチが殻を齧りながら顔を出してくるシーンは見ていて面白いものですから、一度お試しください。

BABAさん、おはようございます。
前のTelenomusの時は先に出たオスがカメラに驚いたのかどこかへ行ってしまいましたが、今回のオスはよく頑張ってくれました。どちらの場合もこちらの都合に合わせたかのように朝の仕事に出る前の時間帯に出てきてくれたのは幸運だったと思います。

ひげぶとさん、おはようございます。
今回は雌雄両方撮ることが出来て、触角の違いなどがよくわかりました。Trissolcus japonicusで確定ということですね。早速タイトルを修正しておきます。いつもありがとうございます。

投稿: おちゃたてむし | 2012年6月16日 (土) 06時45分

力作でしたねー、お疲れさまでした。
雌の羽化成虫が卵殻開封した後、48時間にわたって工事を中断するのが何を意味してるのか、考えこんでしまいました。成虫のテネラル期間の間、雄成虫を引き留める工作なのかな・・・・・、と思いつきました。しかし、そうすると確かに交尾の確実性は高まるのですが、近親交配率も高まるのは問題点になります。・・・・・・やっぱり、解釈は困難かも、です。

投稿: ezo-aphid | 2012年6月16日 (土) 21時04分

ezo-aphidさん、こんばんは。
以前Telenomusの羽化を見た際も、卵殻に小さな穴を開けた状態で丸一日休んでいた個体がありました。室内の不自然な環境によるものかとも考えましたが、おっしゃるようにオスを引き止める工作なのかも知れませんね。近親交配については、オスの少ないことと関係があるのではないかと思います。この卵塊から出てきた5匹の内少なくとも3匹、おそらく4匹はメスだったのではないかと思いますが、同じ母親からオス1匹に多数のメスというような性比の大きな偏りが進化する条件の一つはほとんどの交配が兄弟姉妹間で行われることである、というような説明を以前どこかで読みました。

投稿: おちゃたてむし | 2012年6月17日 (日) 06時47分

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