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2012年10月19日 (金)

チビシギゾウムシの一種

* 2012.10.19・記事訂正 *

ezo-aphidさんから、この虫こぶは(クヌギハケタマフシではなく)クヌギハヒメツボタマフシであろうと教えていただきました。クヌギハヒメツボタマバチというタマバチが作るそうです。

クヌギハケタマフシ、だと思うのですがクヌギの葉の表に並んだ虫こぶを眺めていると、その中の一つに小さなゾウムシがしがみついていました。

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虫こぶの横っ腹に口吻で穴を開けていましたが、背中を撮っておこうと葉をひねくり回しているうちにポロリと落下してしまいました。
一見してチビシギゾウムシの仲間とまでは分かったのですが、甲虫図鑑を見るとよく似た種がいくつもあって、また背面像を撮り損ねたので尚更その先に進めません。とりあえずチビシギゾウムシの一種としておきます。体長は口吻を除いて2.2mmくらいです。

(2012.10.12・学が丘北公園)
 

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鞘翅目」カテゴリの記事

コメント

面白い光景ですね。実と勘違いして吻を差し込んでるのでしょうか(笑)。
虫を撮ってると何かと勘違いして頓珍漢な行為をしている場面に出遭うこともありますが、虫にとっては必死な行為が人の目には滑稽に思えて何とも微笑ましいです。

投稿: フッカーS | 2012年10月19日 (金) 09時56分

こんばんわ。
原色虫えい図鑑(湯川・桝田、1996)をご覧でしょうか? ブナ科の虫こぶは種類が多く、特定は難しいのですがクヌギハヒメツボタマフシにあたるものと思います。「葉表にできる扁球形(直径2.5-3.0mm、高さ1.5-2.0mm)、微毛があって上面中央がわずかに凹む」とあります。クヌギハヒメツボタマバチ Neurotes monzeniが作るそうです。虫えいは9-10月に発育し10月に落下するが、幼虫は内部で摂食を続け、少数は年内に大多数は翌々年の春に羽化するそうです。

チビシギゾウムシの方ですが、ジュウジチビシギゾウムシやミヤマシギゾウムシ、シギゾウの一種がタマバチの虫えいを食べるそうです(詳しいことは、矢野俊郎、1956、「新昆虫」6(12):27-28を見なければ判りません)。また、ヤドリチビシギゾウやシロオビチビシギゾウはヤナギのハバチゴールを食べるそうです。
 ひょっとして、大部分のチビシギゾウの食性ははっきりしていないのかもしれません。体のサイズからすると、このようなゴールか、微小な穀実類がふさわしいように思うのですが・・・・。

投稿: ezo-aphid | 2012年10月19日 (金) 18時10分

私がクヌギの葉で見かけた虫こぶとそっくりで、私もクヌギハケタマフシと同定していたのでちょっと心配になったのですが、おちゃたてむしさんの方は葉表なんですね。私の方は葉裏に出来ており、もう少し高さがありました。
虫こぶはよく見るのですが、なかなか宿主には出会えないので、ときどき虫こぶを採集したりもするのですが、上手く羽化してくれません・・・・orz

投稿: フッカーS | 2012年10月19日 (金) 20時28分

日本産ゾウムシ画像データベースでチビシギゾウムシを検索すると外見がよく似たゾウムシがいくつか出てきますが、幸い真横からの画像も掲載されてましたので比較したところ、最も似ていたのはジュウジチビシギゾウムシ(シンクロ率90%くらい)とクヌギチビシギゾウムシ(シンクロ率80%くらい)でした(10%は、頭部後方の白紋部分の違い)。両種の体長は、ジュウジチビシギゾウムシ体長 2.0-2.8 mm、クヌギチビシギゾウムシ1.7-2 mmとなってましたので、体長が「口吻を除いて2.2mmくらい」だったというのであればジュウジチビシギゾウムシの可能性が高そうです。そうなると、ezo-aphidさんの「ジュウジチビシギゾウムシ~がタマバチの虫えいを食べるそうです」という説明とも一致しますね。あくまで推測の域は出ませんけれども(笑)。

投稿: フッカーS | 2012年10月19日 (金) 20時50分

フッカーSさん、こんばんは。
最初この光景を見たときはひょっとして産卵準備か?と思ったのですが、この個体がオスかメスかも分からないし、虫こぶに産卵するシギゾウムシの話も聞いたことがないので、やはり食べ物と認識しているのだろうと考えていました。ezo-aphidさんのコメントによればチビシギゾウムシの仲間にはタマバチやハバチの虫えいを食べるものがいるそうです。虫こぶをめぐる昆虫たちの関係はとても複雑なようですね。

ezo-aphidさん、こんばんは。
クヌギハヒメツボタマフシというのは知りませんでした。原色虫えい図鑑は持っていなくて(近所の図書館にはあるんですが)、「虫こぶハンドブック」の写真との絵合わせでクヌギハケタマフシかな、と思ったのですが、まず「ほぼ球形」というのが引っ掛かるし、「葉裏に形成される」という記述は全く見落としていました。今度図書館に行った時によく見ておきます。
ヤナギのハバチのゴールと言えば、ハンマーさんのブログ(2012.06.13)でヤナギハムシがシダレヤナギハオオコブフシを齧る様子が紹介されていました。虫こぶを食べる昆虫は意外に多いんでしょうか。また植物組織だけでなく、形成者の幼虫や蛹もついでに(或いはそれが主目的?)食べてしまうんでしょうかね。

投稿: おちゃたてむし | 2012年10月19日 (金) 20時52分

フッカーSさん、
ご返事が行き違いになってしまいました。
いろいろお調べいただいてありがとうございます。
おっしゃるとおりジュウジチビシギゾウムシの側面画像はよく似ています。これかも知れませんね。
虫こぶの種類については、最初クヌギハケタマフシとしたのは全く勘違いでした。「ハンドブック」の写真を見て勝手に葉表に出来るものと思い込んでしまったのですが、説明文にはちゃんと葉裏と明記してありました。それにしても虫こぶの種類も多いんですね。どこかで「虫えい図鑑」を調達してこないといけませんかね。

投稿: おちゃたてむし | 2012年10月19日 (金) 21時19分

おちゃたてさん、ご質問はごもっともです。
実は上述のチビシギゾウの食性は、「Gall-attacking Coleoptera」でネット検索すると見られる Sugiura & Yamazaki(2009) のTable2の一部を引用したものです。この総説は、ゴール食の食植性昆虫(甲虫と蛾類)について整理したもので、ゴール形成者を捕食する昆虫は取り扱われていません。甲虫16種のほとんどは必然的ゴール食で、逆に蛾類82種のほとんどは偶発的ゴール食(葉だけでも育つ、らしい)のようです。つまり、そこに取り上げる昆虫は、基本的にゴール組織の栄養分が目的で、肉食はしないだろうと思っています。

ところが、本州のケヤキに普通に見つかるヤドリノミゾウ Orchestes hustachei の食性は理解し難いものです。関西の個体群はケヤキのアブラムシ(Paracolopha)ではなくゴールだけを食べ(Yamazaki & Sugiura, 2001)、札幌の個体群は内部のアブラムシ(ハルニレのTetraneura)を食べる(Tomisawa & Akimoto, 2004)とのことです。札幌の場合、開拓期に持ち込まれたケヤキのParacolophaも食べてるそうです。
この違いがホントだとすれば、これらが同種でいるのはおかしいと思っています。(幼虫の口器など)形態に違いが見つからないのか、あるいは食性に誤認がないのか、興味深い課題です。

原色虫えい図鑑は、タマバエ・タマバチの未同定情報など内容が盛りだくさんで、多くの研究未了を含む図鑑ですが、日本の虫えいの現状整理には必須だろうと思います。高いものですが、「日本の古本屋」さんでみたら1万円チョイで2冊ほどありました。

投稿: ezo-aphid | 2012年10月19日 (金) 22時34分

ezo-aphidさん、こんばんは。
早速のお答えありがとうございます。
やはりほとんどはゴール組織が目的だということですね。葉を食べるより効率的なのか、或いは葉では摂れない栄養分が含まれているんでしょうか。
ヤドリノミゾウの話も不思議ですね。素人が考えてもezo-aphidさんが不審に思われるのは尤もな気がします。それにしても、ゴールだけを食べているのか内部のアブラムシも食べているのかを調べるのも難しい作業でしょうね。
ご推薦の原色虫えい図鑑ですが、私が持っていても内容のごくごく一部しか利用できそうにないので、必要なときは図書館で、ということにしておきます。

投稿: おちゃたてむし | 2012年10月20日 (土) 06時49分

おちゃたてさん、すみません。Sugiura & Yamazaki(2009)は先の検索だと有料サイトの方に行ってしまいますね。なので、改めましてご紹介。
「gall biology Sugiura」で検索するとゴール食昆虫などを研究している杉浦真治さんのサイトに行け、そこの発表論文のひとつに載っています。そこにあった「昆虫と自然 39」を見てきましたので一部を抜粋・要約します。 ・・・・( )内は私の追記です。
「(チビシギゾウ類より大型の)ミヤマシギゾウムシ Curculio koreanus は(大型ゴールの)ナラメリンゴフシに産卵し、ゴール内部を摂食した老熟幼虫は、脱出して土中で蛹になる。ジュウジチビシギゾウムシ C. pictus の幼虫がアベマキ葉裏のタマバチゴール(?アベマキハウラケツボタマフシ)内で見つかっている。
 ヤナギのハコブハバチ類(Pontania spp. ヒゲナガハバチ亜科)ゴールからは、国内ではヤドリチビシギゾウやシロオビチビシギゾウが、欧州からは他に2種が見つかっている。この場合、ゾウムシ成虫が吻を使って(ゴール内部の)ハバチ卵を殺してからゴール(組織に)に産卵する。老熟幼虫はゴール外に出て土中で蛹化する。・・・・注(ハバチ雌成虫が産卵の際に組織中に注入する卵台液によってゴールは肥大するので、幼虫は不在もよいらしい)。
 チビシギゾウムシ類は、シギゾウムシ亜科の中で、ゴール食性に特殊化したグループである可能性が高いが、日本産の多くは生態が明らかになっていない。」

チビシギゾウ類は13種ほど知られていますが、これに対してタマバチ科の虫えいは、葉に作るものだけで、クヌギ17種、コナラ14種、このほかのブナ科8種となっています。それぞれのチビシギゾウが好みの寄生ゴールを持っているのか、あるいは多種のゴールを利用するのか、それらの関係に興味をひかれます。そのためにはまず、ゴール(できれば作成者)の分類がわかっていないと・・・・・、となるのですが。


投稿: ezo-aphid | 2012年10月21日 (日) 18時18分

ezo-aphidさん、こんばんは。
ほんとにお手数おかけします。
大きな勘違いをしていたのですが、ゴール食のゾウムシということはつまりゴール内に産卵して幼虫がその中で育つということなんですね。植物の実に産卵するシギゾウのことなど考えるとそれが当然ですが、これまで迂闊にも成虫のことしか頭にありませんでした。写真のチビシギゾウもゴールをただ齧っていたのではなく、途中で邪魔をされなければ産卵するところだったのかも知れませんね。そうだったとすれば最後まで見られなかったのが残念です。
それに関連しますが、「偶発的ゴール食」の蛾類幼虫の場合は外部から齧るだけなんでしょうか。
「タマバチ科の虫えいは、葉に作るものだけで、クヌギ17種、云々」と聞くと、ポケット図鑑やネット画像との絵合わせだけで名前を掲げるのは大胆すぎる気がしてきます。現にコメント中にある「アベマキハウラケツボタマフシ」など名前さえ知りませんでした。先日の記事でカタビロコバチが産卵していたのは(クヌギハケタマフシ?としましたが)ひょっとしてそれだったのかな?。やはり原色虫えい図鑑が要りますかね。

投稿: おちゃたてむし | 2012年10月21日 (日) 20時56分

チビシギゾウムシ類もCurculio属なので、生態の基本はドングリ・クリ食のシギゾウ類と同じだろうと思います。したがって、ご推測通り、産卵準備中だったのでしょう。
 蛾類の一覧表は、Sugiura & Yamazaki(2009)のTable3にありますが、そのうち9種だけが必然的(絶対的)ゴール食だそうです。詳しく調べていませんが、特定の関係にあるゴール食ではそれぞれ独特の産卵・食害法があるように思います。それ以外の73種のほとんどは偶発的(機会的)ゴール食ですが、ハマキガなど小蛾類はゴールを食害穿孔して内部から食べ、シャクガ・カレハガ・ヤガ・シャチホコガなどの大蛾類では外側からかじるようです。

 ゴールの一覧表(付表Ⅶー1、554p-631p)をコピーしておくだけでも、ある程度候補を絞ることはできるのですが、ゴールを特定するとなると、形成位置・サイズ・色合い・発生期・分布などの記述を読み、写真を参考にしないと難しいと思います。
  ・・・・ブナ科のゴールだけに絞れば、コピー可能な頁数だとは思いますが。

投稿: ezo-aphid | 2012年10月21日 (日) 23時15分

ezo-aphidさん、
いつものことながら素人っぽい疑問に丁寧にご返事いただきありがとうございます。
やはり蛾類にも必然的ゴール食というのがいるんですね。ゾウムシのように口吻で穿孔することは出来ないはずですが、どんな風にして産卵するのか見てみたい気がします。
図鑑の方は、いずれ入手したいと思っています。古本屋めぐりは好きなので、そのうち安いのが見つかれば、と期待しているのですが・・・。

投稿: おちゃたてむし | 2012年10月22日 (月) 07時06分

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