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2012年10月15日 (月)

虫こぶに産卵するカタビロコバチとタマバチ

* 2012.10.22・記事訂正 *

コメントにあるように、ezo-aphidさんが調べてくださったところ写真の虫こぶはクヌギハケタマフシではないようです。

たくさんの虫こぶ(クヌギハケタマフシ?)のついたアベマキの葉裏を見ていると小さな黒いハチが2、3匹うろついています。おそらく2年前の同時期にも同じ虫こぶに産卵するのを見ているタマバチの一種だろうと思ってまず1匹、カメラを向けてみるとタマバチではなくカタビロコバチの一種のようです。

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虫こぶの周囲を歩き回って場所を決め、産卵管を刺し込みます。体長2.1~2.2mmくらい、こんな腹部だけ黄色い種は初めて見ました。虫こぶ形成者のハチに寄生するんでしょうか。

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同じ個体です。虫こぶの頂部の凹んだ場所に産卵しています。

同じ場所で、タマバチの一種も産卵していました。
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これは以前に掲載したものと同種だと思います。体長約1.5mm。

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こちらは別個体でやや小さく、体長1.2mmくらいですが同種でしょう。

(2012.10.09・明石公園)


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コメント

こちらが「アベマキハウラケツボタマフシ」ではないかというご質問がありましたので。

虫えい図鑑の記述の抜粋すると「扁球形で直径3.5mm、高さ2.5mm。葉裏に生じ、上面中央部はわずかに凹み、その外方に銀白色の微毛が円輪をなす。クヌギ葉表に生じるクヌギハケツボタマフシに酷似する。」となります。確認は、他の類似ゴールとの比較も必要なので、軽々には決められませんが、それらしくはあります。ただし、ゴール色彩の詳しい記述とは違うようにも思われます。(同居蜂がいると、ゴールサイズが小さくなることがあるそうです)
「クヌギハケタマフシ」:関東以北のクヌギ葉裏に生じ、ほぼ球形で直径約8mm、頂端が凹み、表面に白色微毛がある。「クヌギハオオケタマフシ」はこれに酷似するが、関東以南~九州に分布する。

(管理人より)投稿者からのご連絡により、一部コメントを削除しました。

投稿: ezo-aphid | 2012年10月21日 (日) 22時41分

ezo-aphidさん、おはようございます。

「クヌギハケタマフシ」は関東以北、しかもかなり大きいようなので、少なくともこれではないということですね。
「アベマキハウラケツボタマフシ」の方も、この記述からすると別種のように思われます。やはり難しいですね。

カタビロコバチの方は、以前上條先生に同定していただいた2種のうちひとつがEurytoma属でしたが、これとは別種のようです。その後同じ虫こぶで全身黒色のカタビロコバチが産卵するのを見ていますが、ひょっとしたらそれが以前出したEurytomaと同じなのかも知れません。写真は近いうちに掲載しますのでまた見てください。

投稿: おちゃたてむし | 2012年10月22日 (月) 06時53分

おちゃたてむしさん
ezo-aphidさん

ご無沙汰しております。
以前、アラカシの堅果に寄生するタマバチについて色々と教えて頂いたYankonovitchです。
その節は、どうもありがとうございました。

実は、今月の初めに、私のHPで紹介しているコナラの殻斗の付根付近にタマバチが形成した虫瘤からタマバチではない虫(たぶんハチの仲間だと思うのですが...)が出てきましたので、その素性についてぜひアドバイスを頂けたらと思いメール致しました。
虫の写真については、お手数掛けますが、私のHP [ すばらしいドングリの世界:acorn.hiroimon.com ] のセクション8(雑記124)を御覧下さい。

小さなハチの仲間を鮮明な写真で数多く紹介されている貴殿のHPに、何か手がかりがあるかと思って検索していたところ、アベマキの葉裏に形成された虫瘤に産卵するカタビロコバチ科の一種が目に付きました。
今回現れた昆虫と形が良く似ているように思えるのですが、実際のところはどうなのでしょうか?
もしもカタビロコバチ科の一種だとすると、この昆虫も虫瘤を形成したタマバチに寄生していたと考えられるのでしょうか??

大変恐縮ですが、アドバイスして頂けると幸いです。

以上

投稿: Yankonovitch | 2013年6月25日 (火) 03時53分

Yankonovitchさん、おはようございます。こちらこそその節はありがとうございました。
早速記事を拝見しました。
気長で綿密な調査・観察には敬服しております。
いずれezo-aphidさんからもっと信頼できるご意見がいただけると思いますが、とりあえず私に分かりそうなことだけお答えします。
問題のハチの写真を見るとご推察どおりカタビロコバチ科に間違いないと思います。タマバチゴールに関わるカタビロコバチ類についてはこのブログの2012.10.23の記事にezo-aphidさんから詳しいコメントが寄せられていますが、その中でカシ類Quercus属にかかわるものとしてSycophila属とEurytoma属が上げられています。写真のハチは前胸側面の黄色部や前翅の黒い縁紋などがキイロカタビロコバチSycophila variegata(2012.01.04の記事)に似ていますので、同じSycophila属の一種ではないかと思います。
Yankonovitchさんが紹介されている「コナラの殻斗の短枝に形成される虫瘤」というものをまだ見たことがないのですが(見ても気付いていないんでしょうね)、これから注意しておきます。
後はezo-aphidさん、宜しくお願いいたします。
(いただいたコメントの中のURLが違っていたようなので修正しておきます。)

投稿: おちゃたてむし | 2013年6月25日 (火) 07時40分

Yankonovitchさん、こんばんわ。
おちゃたてさんのお見立てに追加するものはありません。
キイロカタビロコバチの場合、その寄主はタマバチ科の(Synergus属を含む)12属約30種が知られています。どうやら広汎なタマバチ類幼虫に外寄生しているようです。したがって、このSycophilaもタマバチに寄生していたと考えていいと思います。
ただし、図9-2-6 の幼虫はコバチ類ではないように思えてなりません。頭殻が体に比べて大きく、消化管に大量の食物が見えることに(植物を大量に食べていることを窺わせて)違和感があります。このゴール内の幼虫が全てこのようならば、タマバチ幼虫とせざるを得ないのですが、いかがでしょうか。
成虫の体長2-3mmのチビシギゾウ類(Archarius属, Koreoculio属)というゾウムシがいますが、数種の幼虫がヤナギ類のハバチゴール、クヌギ類のタマバチゴールを食べています。15種ほどのうち、ほとんどは幼虫の寄主不明ですが、成虫はヤナギ類とクヌギ類でそれぞれ半数ずつ採れているそうです。
 「コナラの殻斗の短枝ゴール」の内容に、タマバチとチビシギゾウの2つのパターンがないものか、ご検討いただけると幸いです。

投稿: ezo-aphid | 2013年6月25日 (火) 21時32分

おちゃたてむしさん
ezo-aphidさん

こんばんは。
早々の御返信、誠にありがとうございました。
アドバイスして下さった内容を見れば見るほど、この種のハチの仲間の生態は複雑なんですね。
大変勉強になりました。

ezo-aphidさんのコメントにありました図9-2-6の幼虫についてですが、初めて採集した虫瘤で2つだけ解体したものには、この図の形態の幼虫しか見られなかったのですが、それ以降は他の堅果に寄生しているものと同じ形態のものしか目にしておりません(その後の解体結果については、セクション8の雑記71にある通りです)。ezo-aphidさんのご指摘にあるように、タマバチではない別種の昆虫の幼体である可能性が高いと思われます。虫瘤を解体してしまうと、中の幼虫が死んでしまうので、どの幼虫がどういう成虫になるのかまでは追う事ができないのが残念ですが、これからも手法を変えて調査してみたいと思います。

最後になりますが、おちゃたてむしさんが撮影されている小さな虫達の写真は本当にすばらしいですね。こんなに美しく鮮明に撮影されるテクニックに感心させられます。私も今年からタマバチと同じぐらい小さなドングリの花を直に観察する為に、友人に聞いて一眼レフのカメラやマイクロレンズ等を購入して撮影しているのすが、おちゃたてむしさんの写真のようにはなかなかうまく撮影出来ません。これからもミクロの世界の素晴らしい写真をたくさん掲載して下さい。期待してます。

投稿: Yankonovitch | 2013年6月26日 (水) 04時42分

ezo-aphidさん、Yankonovitchさん、こんばんは。
図9-2-6の幼虫写真は私も見ていたのですが、何の疑問も抱いていませんでした。勉強が足りません。
同じ虫こぶに形成者であるタマバチの上に寄生者、或いは同居者としてカタビロコバチやチビシギゾウムシ、ひょっとしたら他にも関係者が存在するのかも知れませんが、ほんとに複雑な関係ですね。私のように気まぐれに目に付いた虫を撮っているだけではその一端を窺うこともなかなか出来ません。
キイロカタビロコバチも冬場に越冬中のものを見たことしかなかったので、Yankonovitchさんの記事をとても興味深く見せていただきました。これからもドングリと昆虫の不思議な関係を紹介していただけるのを楽しみにしています。

投稿: おちゃたてむし | 2013年6月26日 (水) 19時52分

初めまして。20年以上経って大木になってしまった隣のクヌギですが、今年から、クヌギハケタマフシが、毎日たくさん落ちてきています。何かと思い調べてみたら、ハチの幼虫が入っているとか・・・。
あんなにたくさんのハチが成虫になったら、失神しそうです。
成虫は人を指すのでしょうか?11月が怖いのですが。教えてください。

投稿: 松原 | 2014年10月 9日 (木) 08時55分

松原さん、はじめまして。
クヌギなどに虫こぶを作るタマバチ類や、それに寄生すると思われるコバチ類などが人を刺すことはないはずです。
試したわけではありませんが、おそらく手で握っても大丈夫でしょう。
いずれも体長が2mm前後のごく小さなハチで、屋内ででも発生しない限りほとんど気づかれないのではないかと思います。

投稿: おちゃたてむし | 2014年10月 9日 (木) 20時10分

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