アオモンツノカメムシ?(改題)
* 2013.2.11・追記とタイトル変更 *
ezo-aphidさんから下の画像を小樽博物館の山本亜生さんに照会していただいたところ、「おそらくアオモンツノカメムシ」というご返事をいただきました。決め手はやはり腹端の形態だそうですが、「雄を見れば完璧にわかる」ということですので、タイトルは元の「ツノカメムシ科 Elasmostethus 属の一種」から?付きでアオモンツノカメムシに変更しました。詳しくはコメントをご覧下さい。
ムクノキの樹皮下で越冬中のカメムシで、この場所では秋にカクレミノに集まるのが見られる普通種です。このブログでは何度も登場していて(2010.10.14、2010.11.01 、2010.11.08、2012.10.01)、私は長い間これがアオモンツノカメムシ Elasmostethus nubilus だと考えていました。
ところが最近になってezo-aphid さんから、カクレミノはアオモンの寄主として記録が無いので別種の可能性があるとのご指摘をいただきました(こちらの記事のコメント)。その時に教えていただいた資料(Aki YAMAMOTO/A REVISION OF JAPANESE ELASMOSTETHUS FIEVER)にElasmostethus属8種の雌雄尾端の図が載せられているので一度実物で確認してみようと思ったのをそのまま忘れていたのですが、今回越冬中で動かないのをよいことに初めて腹面を撮ってみました。
こうして見ると2匹とも雌のようです。
この写真を上記資料でElasmostethus属8種の雌尾端腹面図と見比べると、やっぱりアオモンの尾端部に最も良く似ていると言う結論に達してしまいました。
さてどんなものでしょうか。
(2013.01.30・明石公園)
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コメント
こんばんわ。
さすがにこれは分かりませんね・・・・。既知の8種以外で生殖器なども図示されてないとすれば(あるいはアオモンとの外見上の違いが無いのであれば)、活動サイクルや寄種植物でしか判断出来ませんが、そういった情報は観察者が最も詳しいわけですからね(笑)。
こうなったらもう、標本を専門家に送るしかないでしょうね・・・・。
しかし、既知の8種の中では、私もアオモンが最も近いと感じました。寄種も含めて考えれば、8種のうちウコギ科に付かない5種はすぐに切れるし、残る3種のうちベニモンは腹部の気門が黒いので、最終的にアオモンとヒメアオモンの比較になり、ヒメアオモンは腹板末端節の両側の突起の内側のカーブが斜線に近い(あまり半円状にくびれない)ので、消去法ではアオモンが残りますね。
もしこれが9種目のElasmostethusだったら凄いことです。
投稿: フッカーS | 2013年2月 9日 (土) 00時27分
フッカーSさん、おはようございます。
ご考察ありがとうございます。
やはり寄主の記録が無いだけでこれもアオモンなのではないかという気がしてきました。ただこのあたりでは数は少ないのですが春にヤツデの葉の卵から孵化してくる種もあって、そっちが本物のアオモンだとすればこちらの秋にカクレミノで孵化する方はやはり別種の可能性があるようにも思えます。それと関連して、カクレミノの種が成虫で越冬したあと秋の産卵期までほとんど姿を見ないのですが、その間何をしているのかも気になります。ヤツデの種は成虫を撮ったものが少ないので今のところ詳しい比較ができませんが、機会があれば尾端部も含めてきちんと撮影しておこうと思います。
投稿: おちゃたてむし | 2013年2月 9日 (土) 07時17分
小樽博物館の山本亜生さんに画像を見ていただきました。以下のコメントです。
「おそらくアオモンツノカメムシ E. nubilus だと思います。アオモンツノカメムシとヒメアオモンツノカメムシの違いは以下のとおりですが、雌による同定は慣れないと難しいかもしれません。雄が見つかれば完璧にわかります。
1.雄交尾器の把握器 アオモン 先端に角が二ヶ所 ヒメアオモン 一ヶ所
2.雄生殖節後縁の毛 アオモン 密 ヒメアオモン 疎
3.腹部第7節後端の突出 アオモン 生殖節を超える ヒメアオモン 超えない
4.小楯板 アオモン 通常暗色紋がある ヒメアオモン 通常淡色
5.前胸背側角 アオモン 突出する ヒメアオモン 突出が弱い
今回の写真で決め手となるのは3番目で、第7腹節後端を結んだ線よりも生殖節が内側にある点がポイントです。またヒメアオモンは本州では山地性で、平野部ではほとんど見られないようです。ホストはウコギ科を広く利用しているようですので、カクレミノにいても不自然ではありません。
ちなみに、アオモンツノカメムシの近縁種は日本からインドまで多数存在していて、分類の整理は今後の課題です。台湾にも別種がいます。日本で3番目が見つかることも、あるかもしれませんね。」
つまり、「この雌は(ヒメアオモンではなく)アオモンの可能性が高いが、(同定には)雄の交尾器を見るのが確実」ということですね。ところで、昆虫では(生活史などが違っていて)外観で区別しにくい別種というのは、よくあることなので、おちゃたてさんの違和感は重要なことだと思います。雄の現物で、山本さんに決めてもらいましょうかねー。
投稿: ezo-aphid | 2013年2月 9日 (土) 11時16分
ezo-aphidさん、こんばんは。
またまたお手数おかけしました。件の論文の著者の方に写真を見ていただけたとは光栄です。
確実には雄の交尾器を見るしかないということですが、昨日近所の別の公園で見つけた数匹の越冬集団でもすべて雌だったので、秋の出現期までお預けになりそうです。またヤツデで見つかるものが同種なのかどうかも是非確認したいところですが、このあたりではヤツデでは稀にしか見ていないので、すぐには難しいかも知れません。アオモンはウコギ科を広く利用しているのでカクレミノにいても不自然ではないということですが、毎年カクレミノには多数集まるのにヤツデではほとんど見かけないということも気になるところです。
ということで、とりあえずヤツデの種の雌雄成虫と、カクレミノの雄成虫を確認することが宿題ですね。山本先生にもこの場を借りて御礼申し上げます。ありがとうございました。
投稿: おちゃたてむし | 2013年2月 9日 (土) 20時52分