カシハツトタマフシと同居蜂(?Ufo shirakashii)(改題)
* 2013.03.28・追記とタイトル変更 *
ezo-aphidさんにお調べいただいて、この虫こぶはカシハツトタマフシと呼ばれるものでカシハツトタマバチ(種名未同定)の単性世代が作るものだということが判りました。また同居蜂としてシラカシタマバチという種もいるらしいので、2枚目のタマバチ成虫がどちらなのかはわかりません。形成者であるカシハツトタマバチの生活史はかなり複雑だそうで、詳しくはezo-aphidさんからのコメントをご覧下さい。
* 2013.03.31・追記とタイトル再変更 *
ハンマーさんから、写真のハチは虫えいの形成者ではなく同居蜂であろうと教えていただきました。このカシハツトタマフシは本来冬までに葉から脱落するのですが、同居蜂に侵入された場合は脱落しないのだそうです。そしてこの同居蜂は下の写真によく似た形でシラカシ枝に形成された虫えいからハンマーさんが羽化させた Ufo shirakashii と同種であろうとのことです。
詳しくはコメントをお読み下さい。タイトルを再度変更しました。
アラカシの葉裏に出来ていた虫こぶです。
同じ木でいくつか見つかりましたが、いずれも葉の主脈の上に形成されています。
上の写真左が6.5mm、右が6mmくらいの長さです。
中身を見たくなって一つ開けてみました。
硬そうに見えましたが意外に脆く、ポケットナイフで削っているとぽっきり真ん中から折れてしまいました。現れたのはタマバチの一種のようです。蛹の状態だったのだろうと思いますが、虫こぶの壁と一緒に蛹の殻も一緒に取れてしまったのでしょう。羽化直前だったように見えます。体長1.6ミリくらいですが、向きを変えて撮ろうとしているうちに葉の上から転がり落ちて見失ってしまいました。
この場所のアラカシではこれまでに春に新梢に産卵するマスダアラカシタマバチや9月頃にドングリに産卵する種(?Synergus itoensis)、それに10月に芽に産卵していたものを見ています。脚や触角の色を見ると1番目の種に似ているようですが、産卵部位が違うので恐らく別種なのでしょう。
この虫こぶの若い段階と思われるものを昨年の10月に撮っていました。
まだ白っぽくて柔らかそうです。大きさは左の大きいので約6.8mm、右の二つ(ひょっとして二つで一つ?)は小さくてどちらも1.6mmくらいの長さです。
自然状態とは異なる条件で羽化させるのは難しいとは思いますが、今回見つけた虫こぶの内の二つ(1枚目の写真)を持ち帰って様子を見ています。今のところ変化は見られませんが、運良く成虫が出てきたら改めて報告します。
(2013.03.22/最後の写真のみ2012.10.24・明石公園)
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コメント
虫えい図鑑に載っていましたので、要約してみました。
これは「カシハツトタマフシ」と言う名で、カシハツトタマバチの単性世代が作るものだそうです。虫えいは20~30日で発育し、完熟したものが6月~11月に落下し、多くは幼虫のまま越冬して翌年秋に(虫えい内で)羽化して、翌々年の春に脱出する、とのことです。羽化個体(両性世代)は新芽に産卵し、それによる「カシワカメコムレタマフシ」が発芽と同時の4月上旬から現れ、新梢は集団寄生のため短縮肥大化して芯止め状態となります。この虫えいは4月中旬に完熟状態となって、羽化した成虫は若葉の裏面葉脈に産卵します。 ・・・・・そういうのを付近で見つけたことがおありでしょうか?
ということから、1枚目のツトは形成3年目の羽化直前、3枚目のツトの大小は1年目の産卵時期のずれによるものなんでしょう。なお、成虫はこの形成者(種名未同定だそうです)のほかにシラカシタマバチという同居蜂もいるとのことです。 なかなか複雑でむずかしいですね。
投稿: ezo-aphid | 2013年3月28日 (木) 19時09分
こんばんは。
前から気になっていたゴールですがタマバチだったのですね。2月に持ち帰ってみたのですが現在も何の反応もありません。生育の段階によっては茎から切り離すと駄目なんでしょうか。おちゃたてむしさんの、お持ち帰り分、楽しみにしております。
投稿: BABA | 2013年3月28日 (木) 20時32分
ezo-aphidさん、こんばんは。
つまり今回虫えいから取り出した成虫は一昨年春に単性世代によって産み付けられ、完熟後も葉から落ちずに昨年秋頃虫えい内で羽化し、この春に脱出した後新芽に産卵する予定だった、と言うことですね。要約していただいたものを読んだだけで頭が痛くなりそうです。
この場所では春に例のマスダアラカシタマバチが新梢に産卵するのでアラカシには気をつけているつもりなのですが、葉に産卵しているのはまだ見たことがありません。芽の部分に産卵するのも10月に一度だけ見ていますが、これは触角や脚の色がかなり違うので別種ではないかと思っています。また新梢に虫えいらしきものが出来ているのも見た覚えがありませんが、見落としているだけかも知れません。
ちょうどこれからが産卵シーズンなので、注意しておきたいと思います。いつもありがとうございます。
投稿: おちゃたてむし | 2013年3月28日 (木) 20時49分
BABAさん、こんばんは。
開けてしまったものを見た限り既に羽化を終えた段階のようなので、枝から切り離しても影響はないように思いますが、湿度や温度などの条件が難しいかのも知れませんね。まあ、あまり期待せずに毎朝様子を見ることにしています。
投稿: おちゃたてむし | 2013年3月28日 (木) 20時56分
こんにちは
九大の安倍先生によると、カシハツトタマフシは本来、冬までに葉から脱落するのに対して、同居蜂に侵入された場合は脱落しない、とのことです。従って、今回のタマバチは同居蜂と思われます。この同居蜂はAndricus shirakashiiとして記載されたそうですが、安倍先生らによってUfo shirakashiiに変更されました。
また、U. shirakashiiだとすると、今回の虫えいとよく似た形で、シラカシの枝に形成されていた虫えいから羽化したタマバチ
http://hanmmer.cocolog-nifty.com/blog/2012/02/1-1858.html
と同種ということになります。 虫えい形成者も、ひょっとすると同種かもしれません。
なお、Ufoという変な属名については、上記のリンク先の記事にezo-aphid さんからコメントをいただいています。 また、shirakashiiの属名変更は Ann. Entomol. Soc. Am. 104(4): 620-626 (2011)で報告されていますが、残念ながら有料のようです。
投稿: ハンマー | 2013年3月31日 (日) 18時09分
おちゃたてむしさん。
申し訳ありません。リンクが変になってしまいました。ご面倒でなければ修正してください。
投稿: ハンマー | 2013年3月31日 (日) 18時12分
ハンマーさん、こんばんは。
やはりこれは同居蜂でしたか。本来は葉から脱落するものなのに同居蜂に侵入された場合には脱落しないと言うのは面白いと思います。
リンク先の記事を拝見すると、Ufo shirakasiiが出てきたシラカシの虫えいも部位は違うものの形はよく似ていて、おっしゃるように形成者も同じという可能性もありそうですね。ただ私の虫撮りの範囲ではまだこの形の虫えいは見たことがありません。
タイトルを変更しておきます。ありがとうございました。
投稿: おちゃたてむし | 2013年3月31日 (日) 20時01分