ヒルガタワムシの一種
輪形動物門ヒルガタワムシ綱に属する生き物です。池でも堀でもちょっとした溜まり水でも、あまりきれいでない水を採ってきて顕微鏡で覗くと必ずといっていいほど見つかります。
スライドガラスを叩いたりして驚かせると素早く収縮して、しばらく静かにして見ているとやがてまたゆっくり体を伸ばしてきて頭部にある輪盤(一番下の画像に見えます)を拡げます。輪盤の周囲に生えた繊毛の推進力で泳ぐこともありますが大抵は何かに付着していて、シャクトリムシのようなスタイルで這い回るのもよく見られます。そのあたりの動きが和名の由来でしょう。
「利己的な遺伝子」で有名なリチャード・ドーキンスの書いた「祖先の物語」という本の中にこのヒルガタワムシをめぐる話題が紹介されています(垂水雄二訳・小学館、下巻152頁「ワムシの物語」)。
話はまずヒルガタワムシ綱の現生18属360種のすべてが雄無しの無性生殖しかしない(これまでに雄は1匹も見つかっていない)ということに始まります。無性生殖そのものは動物界の様々なグループで出現するのですがそれらはごく散発的で、大きなグループ全体がすべて無性生殖というのはヒルガタワムシ類の他には存在しないということです。さらに現生種の染色体の比較からは、この仲間はおそらく過去8000万年にもわたって「一貫して、普遍的に」雄無しの無性生殖で世代を重ねてきたという結論が得られているそうです。
これらの事実から何故ヒルガタワムシ類の存在が「進化上のスキャンダルである」と言われ「パラドックス中のパラドックス」とされるのか、興味のある方は是非前掲のドーキンスの本を読んでみてください。とっても面白いですよ。
話が長くなりましたが、動画も貼っておきます。
ちょっと露出不足でした。
(2013.02.21・明石公園で採集)
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