ヒラアシキバチの産卵
9月から10月頃にエノキの立ち枯れや衰弱木で見かけるヒラアシキバチですが、これまでに見た時期は早くても9月の始めだったので、それよりもひと月以上早いこの時期に姿を現したことに驚きました。猛暑続きですでにお盆は過ぎたと勘違いしたんでしょうか。(一昨年の10月に見た産卵の様子はこちらに出しています。)
数年前からこのハチやそれに寄生するらしいオナガバチの一種の産卵を見ていたエノキです。体や翅に木屑を一杯つけて歩いたのですが、おそらくこの同じ木の中で羽化して出てきたばかりでしょう。
しばらく幹を上ったところで立ち止まり産卵を始めました。以前にもエノキの立ち枯れから羽化・脱出して来た雌がそのまま間を置かず(つまり雄と交尾せずに)同じ木で産卵を始めるのを見たことがありますが、このハチは通常雌だけの単為生殖を行っているようです。ただごく稀に雄が出現することもあるそうで、そよかぜさんのブログにはその珍しい雄が紹介されています。
産卵管が樹皮を穿孔していくにつれ周囲に木屑が盛り上がってきますが、何か液体でも分泌しているのか少し粘ついているように見えます。
またこの画像では分かりませんが、よく見ると産卵管は二つかそれ以上の部分が(竹筒を縦に割ったように)合わさったような構造になっているらしく、互いに摺り合わせるように運動してます。
キバチの産卵管は腹部の先から出ている部分だけ見ると随分短いようですが、実際には腹部の付け根のあたりから伸びているので体長の半分以上の長さがあります。
産卵管の付け根のあたりを見ているとその部分が前後に分かれて往復運動していることがよく分かります。この運動が先端まで伝えられて材に穴を開けるという仕事をしているのでしょう。
以前に見たときはもっと時間がかかっていたように思いますが、この時は意外に早く15分くらいで産卵管の根元まで入ってしまいました。
その後間もなく産卵管を抜き始めたのでこれで1回の産卵が終わったのかと思えば、再び少し挿入したりまた少し出したりという動作を繰り返していました。
産卵管を挿入している時もまた引き抜く途中にもハチは腹部を大きくねじるような動作をさかんにします。これまでは産卵管の抜き差しに渾身の力をこめているのだろうと思っていましたが、今回あらためて見ていると抜き差しの動作そのものにはそれほど大きな力は必要としないのではないかと思えてきました。腹部を捻る動作には他に理由があるのかも知れません。
このヒラアシキバチには大型のオナガバチの一種(Megarhyssa sp.)が寄生するそうで、先日同じ場所でエノキの立ち枯れに集まっていたオオホシオナガバチもこのキバチを寄主の一つにしているようです。
(2013.07.25・明石公園)
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