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2013年8月 9日 (金)

ヒメガガンボ科の一種(Trentepohlia sp.)(改題)

* 2013.08.12・追記とタイトル修正 *

ezo-aphidさんより「達磨大蚊天国」の達磨さまにご照会いただいたところ、写真の種はヒメガガンボ科ヒメガガンボ亜科のTrentepohlia属の一種であるとのご返事をいただきました。また東アジア産のTrentepohlia属には2亜属あるとのことで、そのうちのMongoma亜属であるらしいこともezo-aphidさんが調べて下さいました。詳しくはコメントをご覧下さい。当初「ガガンボの一種」としていたタイトルを上のように変更しました。

ハイキング道沿いの大きな岩の、前方にやや傾斜した垂直面で高速で体を振動させていたガガンボの一種です。

_dsc55402

_dsc55432
ストロボ撮影なのでちゃんと止まって写っていますが、非常な速さで体を振動させているので肉眼では左右に拡げた中脚の先の白い部分以外ぼやけてしまってほとんど何も見えません。よくクモの糸などにぶら下がって踊るように体を揺すっているガガンボは見ることがありますが、こんな動きははじめて見ました。撮影するにもファインダでピントを確認することは不可能なので、おおよその見当をつけて少しづつカメラを前後させながら100枚近くもシャッターを切った中でどうにかピントの合っていたのがこの数枚です。

_dsc5581
真横からストロボを焚いてみました。白い中脚の先とバックの岩しか見えていないファインダの視野にストロボのプレ発光で一瞬だけガガンボの姿が浮かび上がるのがとても不思議です。

Himegaganbo_1
1枚で翅脈の全体が見える写真がないので2枚並べました。ヒメガガンボ亜科だと思いますがそこから先が分かりません。翅端まで約8mmです。

(2013.08.02・再度谷)

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双翅目」カテゴリの記事

コメント

降参です。
遠目にはガガンボですが、胸にV字型が見えない、MNDには似た翅脈が見つからない、のです。
かなりの外れ者のようで、白神山地の達磨さんに伺うよりなさそうです。

投稿: ezo-aphid | 2013年8月10日 (土) 08時05分

ezo-aphidさん、こんばんは。
MNDのガガンボ科に似た翅脈がないとは思ったのですが、他の科の可能性は全く考えていませんでした。「中胸盾板のV字溝は完全」というのがガガンボ科の大きな特徴だったんですね。以前「双翅目の科の検索表」で読んでなるほどと思った記憶はあるんですが、完全に忘れていました。また何か分かりましたらご教示お願いします。

投稿: おちゃたてむし | 2013年8月10日 (土) 20時27分

白神山地の達磨さんに照会して、早速に教えて戴きました。
「ヒメガガンボ科Limoniidaeヒメガガンボ亜科のTrentepohlia属だそうです。東アジア産には2亜属あり、翅脈で区別ができるのでもう少し検討してみる」とのことでした。胸部のV字溝は、たぶん見る角度によっては見えにくいのでしょう。
日本の目録にも、ヒメガガンボ亜科Eriopterini族として次の2亜属2種が載っていました。T.(Mongoma) subpenndipes, T.(Trentepohlia) septemtrionalis。同属の翅脈は「Manual of Central American Diptera」の250頁Fig.8-50.に載っていました。ただし、むこうのは別亜属なのかM脈の数は一致していません。以上、とりあえずのお知らせです。

投稿: ezo-aphid | 2013年8月12日 (月) 18時51分

探してみたら「The Limoniinae of Australia」(THEISCHINGER,1996)に属への検索表と翅脈図などが載っていました。131頁のFig.8 のようにM支脈が3本あるものは Mongoma亜属となるようです。

投稿: ezo-aphid | 2013年8月12日 (月) 19時50分

すみません、シリーズものなのに特定していませんでした。「The Limoniinae of Australia Ⅷ、Stapfia 44: 117-144.」です。
東南アジアでヒメガガンボ亜科らしいと思ったら、この検索表と図を見ておく必要がありますね。

投稿: ezo-aphid | 2013年8月12日 (月) 20時11分

ezo-aphidさん、お手数おかけしました。
ご紹介いただいた「The Limniinae of Australia」を早速覗いてみましたが、確かにMongoma亜属の翅脈とよく一致しますね。こういう、あまり見たことのない行動を見せてくれた種の所属が判明するのは特に嬉しいことです。
それにしても、適切な資料を即座に探し出してこられる早業にはいつものことながら驚いてしまいます。私も今後また参考にすることもあるかと思い一応ダウンロードしておきましたが、例によって図の他はほとんど理解できないので宝の持ち腐れになりそうです。
胸部のV字溝が確認できないかとあらためて探してみると、この時何十枚も撮った中に1枚だけ、それらしいものが写っていました。写真では溝というより周囲より少し色の薄い筋くらいにしか見えませんが、その上に短い毛が間をおいて一列に並んでいます。
達磨さまにもこの場で御礼申し上げます。タイトルには属名を掲げておきます。ありがとうございました。

投稿: おちゃたてむし | 2013年8月12日 (月) 22時01分

T.(Mongoma) subpennipes Alexander, 1957という種は、Philippine Journal of Science 1957.349-388(371-372). に原記載があり、新潟県守門岳の吉ガ平で「25 Jun 1954」に1雄が馬場金太郎さんによって採集されています。

投稿: ezo-aphid | 2013年8月13日 (火) 09時22分

名前が絞られるといろんな情報が見つかってきます。下記の雑誌には、T. (Mongoma) guamensisという種の生態が、Limonia (Thrypticomyia)属2種とともに記されているそうです。  江崎悌三(1941) 南洋産ガガンボ数種の奇習. Mushi 13(2): 80.  手近にない雑誌なので見ていませんが、同じ亜属なので、同様の「体の高速振動」について述べているのかもしれません。
なお、T. guamensis Alexander の再記載と翅脈図は kontyu 14(4):133-148.(Tokunaga,1940)に載っていて、ciniiで(marine craneflies で検索) 見られます。


投稿: ezo-aphid | 2013年8月13日 (火) 12時18分

ezo-aphidさん、
再記載と翅脈図はciniiがなぜか繋がらなくてまだ見ていないのですが、江崎さんの「奇習」というのがどんな習性を指すのか興味深いですね。この高速運動にどんな役目があるのかも知りたいところです。

投稿: おちゃたてむし | 2013年8月14日 (水) 23時44分

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