クロフチャタテ科 Aaroniella sp. とその卵?
以前から気になっていたのですが、下の写真のように木の幹にクモの卵のうか何かの繭のような小さな天幕がたくさん張られているのを見かけることがあります。差し渡し2~3mm前後という大きさから推してチャタテムシの卵のうではないかと思って一度二つ三つ開けてみたことがあったのですが、天幕の下には樹皮以外何もないように見えたので不思議に思いながらもそのままになっていました。
これはアラカシの幹ですが、写っているものだけでなくこの周囲広い範囲に無数に散らばっています。しかしかなり丹念に探しても作り主らしき生き物の姿は見当たりません。
そのうちの一つ。天幕の差し渡しは2.5mm前後です。表面はほぼ平らで膨らみがありません。
* 2013.11.14・写真追加 *
ezo-aphidさんからのコメントに、上の写真で天幕の左に見える数珠状の物体について言及がありましたので、下に拡大画像を追加しました。
1個の長さが0.15~0.18mmくらいです。糞でしょうか。ezo-aphidさんはこれと同じ材料で卵を覆っているのではないかと推測しておられますが、確かに色や質感は同じに見えます。
白い天幕をそっと剥がしてみました。10倍のルーペで覗いた限りではやはり何もないように見えたのですが、とりあえず何枚か撮影してカメラのモニタで確認すると周りの樹皮よりやや黒っぽい、塊のようなものが見えます。
ルーペの助けを借りてポケットナイフの刃先でそっと崩してみると、黄色い卵のようなものが出てきました。長さ0.4mmほどです。木屑か糞のような物質で覆われてうまく樹皮に同化しているので、以前に見たときには気づかなかったのでしょう。
同じ日少し離れた場所のモッコクの幹で、どうやらこれらの卵を産んだ主と思われる虫を見つけました。
以前にも一度掲載したことのあるクロフチャタテ科・Aaroniella属の一種です。
傍らの天幕の下からは、やはり先にアラカシで見たのと同じ黄色い卵が出てきました。ただし発掘作業で粗相をして卵を潰してしまったので写真はありません。右の成虫は雌のようなので、産卵をしてその上を絹糸で覆ったのはこの個体ではないかと推測できますが、確かな根拠はありません。
記事の最初に出したアラカシの幹の卵もこの種のものである可能性は高いと思うのですが、樹皮上を住処にしているチャタテムシはこの公園で見つかるものだけでも10種前後はいると思われるので、別の種のものなのかも知れません。
同じ幹にいた2匹。左上の黒っぽくて複眼の大きいのが雄だと思います。
イダテンチャタテほど徹底してはいませんが、このチャタテも概ね頭を下に向けて静止する習性があるようです。
また別の個体ですが、雌の顔。これだけ糸を張りめぐらせた中ではちょっと動くにも不自由だろうと思うのですが、そのせいかどうかカメラを近付けてもほとんど動きません。
雄は雌に比べて細面で色黒、複眼が大きくて触角には長い毛が生えています。
同じモッコクの幹で10匹以上の成虫を見つけました。中には産卵や糸張り作業をしているものもいるかと探したのですが、どの個体も石のように動きません。夜行性なんでしょうか。
(2013.11.08・明石公園)
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コメント
面白いカムフラージュのしかたですねー。
2枚目:天幕の左上に6個(の糞?が吐糸?で)数珠状に連なっていますが、このようなモノを綴りあわせて卵を覆ったように見えます。単に絹糸でおおわれた卵塊よりも(天敵などによる)ロスが少ないので、1卵塊の数が少ないのかもしれませんね。卵越冬なのかなぁ。
投稿: ezo-aphid | 2013年11月13日 (水) 18時32分
ezo-aphidさん、こんばんは。
さすが、よくご覧になっていますね。
2枚目に写っている糞のような物体は私も気になったのでアップで撮っておいたのですが、写真が多くなったので割愛しました。でも折角目に留めていただいたのであらためて追加しておきます。こんなにきれいに並んでいるのはあまり見かけませんが、チャタテムシが張りめぐらせた糸にはよくこのようなものがくっついています。やっぱり糞でしょうか。
投稿: おちゃたてむし | 2013年11月13日 (水) 22時39分