ワモンアカヤドリトビコバチ?(Anicetus ?annulatus)(改題)
* 2014.01.12・追記とタイトル修正 *
ezo-aphidさんが調べてくださった資料ではワモンアカヤドリトビコバチの小楯板の剛毛の数は10から14本とされているそうです。大図鑑の記事は誤植と考えてこの種を有力候補としてよいのではないかとのご意見をいただきましたので、タイトルを変更して?つきで種名を掲げておきます。
今日もまたトビコバチですが、これは初見だと思います。
一昨年の夏にルビーアカヤドリトビコバチ Anicetus beneficusとして掲載した種によく似ていて同じAnicetus属の雌だと思いますが、一回り小型で、他にも異なる点があるので別種でしょう。
体長1.1mm、翅端まで1.3mmくらいです。ヤツデの葉裏にいました。
北隆間の大図鑑にあるAnicetus属4種の検索表の項目でこの写真から一番確認しやすいのは体長ですが、この体長に近いのは4種のうちワモンアカヤドリトビコバチA.annulatusだけです。
北隆間の大図鑑にあるAnicetus属4種の検索表の項目でこの写真から一番確認しやすいのは体長ですが、この体長に近いのは4種のうちワモンアカヤドリトビコバチA.annulatusだけです。
次にルビーアカヤドリトビコバチの同定に使った小楯板上の毛の数ですが、上の写真では10本しか見えません。検索表によればannulatusでは22~30本、他の3種でも22~46本で、10本というのは完全にその範囲から出てしまいます。おそらくこの写真では見えない細かい毛が存在するんでしょうが、写っている10本がわりあいはっきり見えるだけにちょっと疑問が生じます。
「ルビー」と同様翅の先3分の1ほどが腹部に沿うように折れ曲がっていますが、上の写真ではその部分がドーム状に膨らんでいるように見えます。1枚目の写真で分かるように実際は平らなのですが、翅を通して金色に光る丸い腹部が透けて見えて、そんな錯覚を引き起こしているようです。
この写真では首のあたりから頬の下を通って伸びた黒い線が触角の繋節に達しているように見えます。まるで黒い糸で触角を引っ張っているようですが、日本産トビコバチ類画像データベースの顕微鏡写真を見るとこれも触角の一部のようで、頬の下の部分はただ色がついているだけなのではないかと思います。
顔面は他の部分と同じようにオレンジ色ですが、光の角度によって真珠色に輝きます。他のコバチ類ではあまり見た覚えのない色合いです。
最後は写真を3枚だけ使った大雑把な深度合成画像です。
(2013.12.29・舞子墓園)
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コメント
こんばんは。
これまた面白い種ですね!頭部の角度による輝きはかなり不思議です。冬場の葉めくりの醍醐味ですね。
投稿: BABA | 2014年1月11日 (土) 22時04分
BABAさん、おはようございます。
この冬はいくら探しても見覚えのある顔ぶればかりでうんざりしていましたが、たまに新顔が見つかるとご近所巡りも捨てたものではないという気になります。
あとしばらくは葉めくりが続きそうです。
投稿: おちゃたてむし | 2014年1月12日 (日) 06時49分
おはようございます。
私も「この冬はいくら探しても見覚えのある顔ぶればかりでうんざりしていまし」なんてことを、ブログの記事に書いてみたいです。
確かに、逆三角おむすび顔のコガネコバチは去年に比較したら良く見ますが、それでも数は少ないです。ウスクモリバヒメコバチや、タマゴクロバチ亜科のGryon属も良く目にしますが、その他のお馴染みさんの数が逆に少ない気がします。
投稿: そら | 2014年1月12日 (日) 08時05分
こんにちわ。
何か手掛かりを、と思ってTachikawa(1963)を見たところ、Anicetus属4種の翅・触角の写真と、比較対照図が載っていました。驚いたことは、ワモンアカヤドリの小楯板の剛毛(bristle)数は「10-14本」と記されていたことです。翅の毛列と触角の細部は比較検討できませんが、大図鑑は誤植と考えて、ワモンアカヤドリコバチを有力候補と考えていいように思います。
なお、「 Taiwan Anicetus 」の画像検索で、台湾農業試験所標本館にあるルビ-アカヤドリコバチの乾燥標本をいろんな角度から見られます。模様の理解に役立つように思いますが、どうでしょうか。
投稿: ezo-aphid | 2014年1月12日 (日) 10時30分
そらさん、こんばんは。
ちょっと表現がオーバーでしたかね。
新顔に出会う回数に比べて、という程度のことなんですが、それでもこの冬に入ってからかなりの数を撮っています。
すでに何度も撮った種だとは思ってもその場で見ただけでは確信を持てないことが多いので、面倒でもとりあえず撮影しておくのですが、まあこれまでのお勉強のおさらいと考えれば無駄にはなりませんね。
投稿: おちゃたてむし | 2014年1月12日 (日) 19時51分
ezo-aphidさん、こんばんは。
日本産のAnicetus属が4種だけだとすればそのどれにも該当しないのはおかしいなと思っていたのですが、小楯板の毛の数は図鑑の誤植ですか。写真の写りが悪いせいでなくてほっとしまた。
教えていただいた台湾のルビーアカヤドリトビコバチの標本写真を見ましたが、顔面の黒い線は頬から触角のつけ根にかけて顔の下部をぐるりと取り巻いているようですね。私の写真ではそれが触角柄節下面の黒い線に繋がっているように見えるのだと納得しました。
いつも適切な資料を探し出していただいてありがとうございます。タイトルには?付きで種名を入れておきます
投稿: おちゃたてむし | 2014年1月12日 (日) 20時24分