コキムネマルハナノミ?(改題)
* 2014.05.10・追記とタイトル変更 *
フッカーSさんからのご指摘で、写真の種はコキムネマルハナノミ Sacodes nankanei である可能性が高いことが分かりました。詳細は不明ですが私が参照した保育社の甲虫図鑑以降、マルハナノミ科の分類にかなり変更があったようです。詳しくはフッカーSさんのコメントをお読み下さい。「キムネマルハナノミ?」としていたタイトルを「コキムネマルハナノミ?」に変更しました。
アラカシの葉裏にとまっているのを見たときはハムシの仲間と思ったのですが、よく見ると体つきがどうもハムシらしくありません。例によって甲虫図鑑の標本写真を片端から見ていくと、よく似た種が見つかりました。マルハナノミ科のキムネマルハナノミ Helodes protectus です。
説明文には体下面は黒褐色、触角は黄褐色とあって矛盾はなく、体長も合っていますが、「前胸背板が橙黄色の種は、日本で上記のほか3種が知られているが、その差はあまり明確ではない」という但し書きが付いています。ひょっとしたら写真の個体はその別種なのかも知れません。とりあえず疑問符つきで出しておきます。
体長約4.1mm。この仲間は幼虫が水生だそうです。
(2014.05.03・明石公園)
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コメント
可能性としては、コキムネマルハナノミ Sacodes nakanei の可能性が高いと思います。私が知る限りでは、前胸背が黄褐色なのはキムネマルハナノミ Sacodes protecta 、コキムネマルハナノミ Sacodes nakanei 、ヒメキムネマルハナノミ Sacodes minima の3種なのですが、うちキムネとヒメキムネは触角が黒く、対するコキムネは触角が前胸背と同じ黄褐色になります。それ以外に同属の種がいる可能性もありますが、コキムネは今の時期に割とよく見かけ、今年も既に都内で3匹ほど撮ってるくらいの普通種なので、その点でも確率が高い気がします。確実な同定はおそらく交尾器の形状になりますので、断言は出来ませんが、外見を見る限りではコキムネっぽいです。
投稿: フッカーS | 2014年5月 9日 (金) 09時47分
フッカーSさん、こんばんは。ご検討ありがとうございます。
実は私も、キムネマルハナノミで検索して表示されるネット画像に触角や脚の色が黒っぽいものと黄色っぽいものが混在しているのが気になっていました。フッカーさんのサイトや「あおもり昆虫記」では黒っぽいタイプ、「石神井公園の蟲日記」に黄色い方、「甲虫マルガリータ」には両方のタイプが登場します。しかし上の記事に書いたように保育社の甲虫図鑑では触角は黄褐色とあって、標本写真も記述通りの色なので、この種の可能性があると考えました。ただ、やはりこの種名で検索すると「日本産マルハナノミ属とキムネマルハナノミ属の再検討(吉冨博之・1997)」という論文タイトルが出てくるので(内容は分かりませんが)、ひょっとしたら保育社の図鑑以降種名に変更があったのでしょうか。そのあたりの事情をご存知でしたらご教示いただければ幸いです。
投稿: おちゃたてむし | 2014年5月 9日 (金) 19時55分
おそらく日本産種の決定版は、同著者 Hiroyuki Yoshitomi(2005)の、「Systematic revision of the family Scirtidae of Japan, with phylogeny, morphology and bionomics 」でしょう。これらの中間に、吉富(2002)「日本産マルハナノミの解説」昆虫と自然37(13):32-35.があります。 とりあえずは、これを見れば何か判るかもしれません。
投稿: ezo-aphid | 2014年5月 9日 (金) 21時08分
「Systematic revision of the family Scirtidae of Japan, with phylogeny, morphology and bionomics」はネットでは見られないのですね・・・・。
私の推測では、「あおもり昆虫記」のは分かりませんが、「石神井公園の蟲日記」のはコキムネ(私が撮ったものも石神井公園撮影です)、「甲虫マルガリータ」の113はコキムネ、127はキムネ、甲虫雑感録54は不明種07/05/30はやはり不明、不明種07/05/29は体長と上翅の形状からおそらくチビマルハナノミ属の一種(Cyphon sp.)。
保育社の図鑑以降の種名変更の経緯は分かりません。
私の方の道程の根拠は、東京都本土部昆虫目録に記録のあるSacodesがキムネとコキムネの2種だけであること、水生昆虫をメインに調べてる東海地方の昆虫サイトで交尾器の形状も含めて(おそらく文献も見てると思われる)触角が黄色いものをコキムネとしていることです。東海地方の昆虫サイトでは、「東海地方には近似種が三種程度生息していますが、本種は触覚と脚が黄色いことで他の種と見分けられます。」と書かれていますので、触角の黄色は同定の決定的なポイントになるのだと判断しました。
http://www.geocities.jp/tansuigyo_ofi_kke/konntyuurui.html
投稿: フッカーS | 2014年5月10日 (土) 01時27分
追記
先の東海地方の昆虫サイトですが、「参考文献」のページに「Hiroyuki YOSHITOMI(2005) Systematic Revision of the Family Scirtidae of Japan, with phylogeny, morphology and bionomics(Insecta: Coleoptera, Scirtoidea)」とありましたので、同定に際して文献もしっかり確認されていると思われます。
http://www.geocities.jp/tansuigyo_ofi_kke/sannkoubunnkenn.html
投稿: | 2014年5月10日 (土) 01時36分
多良岳の甲虫相2001
http://www.coleoptera.jp/modules/tinyd1/index.php?id=25
上記の報告でも、「従来多良山系より記録されていたキムネマルハナノミと、キムネマルハナノミの近似種は上記種のいずれかの誤認の可能性があり」として、「(長崎県大村市狸ノ尾):(追)コキムネマルハナノミ」となっておりましたので、古い図鑑などではキムネとコキムネが混同されて解説されている可能性が考えられます。
投稿: フッカーS | 2014年5月10日 (土) 02時08分
ezo-aphidさん、おはようございます。
甲虫図鑑にも「この類の研究はまだ充分でなく、云々」とありますから、30年の間にはかなりの変更があったのんでしょうね。
件の論文は私には見ることが出来ませんが、フッカーSさんが参照されたサイトで参考文献に挙げられているということなので、フッカーさんのご指摘どおり触角の黄色いものはコキムネの可能性が高いようです。
フッカーSさん、おはようございます。
大変詳しい解説をありがとうございます。いつものことながらよく調べておられることに感嘆しています。
ネット上で色々な画像が見られるわりにははっきりと典拠を示した記事が見つけられず、とりあえず古い図鑑の説明に従っていたのですが、ちゃんと調べれば参考になる資料があったんですね。ご指摘どおり写真の個体はコキムネの可能性が高いと思われますので、タイトルを変更しておきます。
投稿: おちゃたてむし | 2014年5月10日 (土) 07時35分
日本産マルハナノミの解説」昆虫と自然37 をコピーしてきました。最近号(2014年、4月号:24-27)の解説も加えると、国産は9属で、マルハナノミ Elodes,(以下の和名は「マルハナノミ」を省略) キムネ Sacodes, ケシ Hydrocyphon, トビイロ Scirtes, エダヒゲ Prinosiphon, チビ Cyphon, クロ Odeles, ケマダラ Ora, などがあります。キムネ属はマルハナノミ属と近縁ですが、前胸が黄色い種が多いので容易に区別できるそうです。国内のキムネは6種で、本州にはそのうち4種が分布しています。上記の3種に加えて、ルイスキムネ Sacodes dux (Lewis)が北海道~九州・対馬に分布とのこと。
キムネ属幼虫の生息環境は他属と違っていて、落葉と雨水の溜まる樹胴に生息するのだそうです。
投稿: ezo-aphid | 2014年5月12日 (月) 19時01分
ezo-aphidさん、こんばんは。
お手数をおかけしてすみません。
本州のSacodes属が4種ですか。今回撮った個体はおそらくフッカーさんのご指摘のようにコキムネで当たりなんだろうと思いますが、とりあえずタイトルの?印はそのままにしておきます。
「落葉と雨水の溜まる樹洞」というと明石公園にはいくらでもありそうな環境なので、そのうち産卵行動でも見られないか気をつけておきます。ありがとうございました。
投稿: おちゃたてむし | 2014年5月12日 (月) 20時50分