ツリガネムシの一種(Vorticella sp.)
ご存知ツリガネムシです。
ゾウリムシやラッパムシなどとだいぶ形は違いますが、同じ繊毛虫の仲間です。
ツリガネムシの仲間にも枝分かれした柄の先にそれぞれの細胞がついた群体性の種や透明のコップ状の殻に入った種、柄のない遊泳性の種などがありますが、写真のVorticella属は単独性で、収縮する柄を持っています。
ラッパムシと同じように釣鐘の口の周りの繊毛を運動させて水流を起こし、食物を取り込みます。
柄の中を通っている紐のようなものがスパスモネーム(マイオネーム)と呼ばれる繊維で、ツリガネムシが危険を感じるとこの繊維が急激に収縮して柄が螺旋状に縮みます。
「歌う生物学者」本川達雄さんのベストセラー「ゾウの時間 ネズミの時間」にこのスパスモネームの話題が出てきます。これは筋肉とは全く違った機構を持った特別な収縮装置で、その収縮速度はこれまでに知られている最も速い筋肉のさらに10倍も速いのだそうです。
この本の主題に関わるのはなぜそれほどの装置が進化したのかということなのですが、大雑把に要約すると、これくらい小さなサイズの生き物は粘性力の支配する世界に住んでいる。つまりツリガネムシにとって周囲の水は水飴のように粘っこいものなので、その環境の中で捕食者から逃げようとしてもその環境もろとも捕食者もズルズル引っ張っていくことになって逃げきれない。そこで一瞬でも逃げる速度をうんと速くすれば、その間だけ粘性力の支配する世界から慣性力の世界へ移行し、環境ごと捕食者を引きずることなく振りきることができる、ということになります。
顕微鏡でこれらの微生物の運動や、それによって引き起こされる周囲の微粒子の動きを眺めていると、著者の「環境がベタベタと粘りついてくる」という表現が頷けます。
同時に撮った動画です。
(2014.04.18・明石公園桜堀にて採集)
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