クワナケクダアブラムシ(Greenidea kuwanai)(改題)
* 2014.12.09・追記と画像追加、タイトル修正 *
ニホンケクダアブラムシでもご教示をいただいた杉本さんから、写真の種はクワナケクダアブラムシGreenidea kuwanaiと思う、とのコメントをいただきました。決め手は脛節の色と幼虫の角状管の間にある硬化板の形だということですが、後者の特徴は先に掲載した写真では見えにくいので、記事の最後に1枚画像を追加しました。詳しくはコメントをご覧ください。タイトルを再度変更しました。
* 2014.06.28・追記とタイトル修正 *
記事中の植物名を間違えていたので直しました。
ezo-aphidさんからいただいたコメントによれば、国内産のGreenidea属10種の中で寄主植物の情報などからG.nigraの可能性が高いようなので、タイトルを変更しました。この種の寄主は常緑カシ類で、対してG.kuwanaiではクヌギ・クリに限定されるそうです。また、最後の写真で成虫の腹端に見える、白い突起を備えた部分がやはり尾片だそうです。
マテバシイ ウバメガシの新梢についていたアブラムシです。
いつものように「アブラムシ入門図鑑」で調べてみて、寄主植物と絵合わせからニホンケクダアブラムシ Greenidea nipponica だろうとまず見当をつけたのですが、「脛節全体が淡色」という説明に合いません。近似種のクワナケクダアブラムシ G.kuwanai は「周年クヌギで生活する」とされていますが、脛節は「中央より先端部が淡色」とあって、これなら下の写真に一致します。寄主植物については同じブナ科のウバメガシについていても不思議はないような気もするので、とりあえず疑問符つきでクワナケクダアブラムシとしておきます。
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コメント
うーん、苦手なやつが出てきましたね。
Sugimoto(2008)によれば、Greenidea属は国内に10種いることが判っています(「Greeinidea Sugimoto」で検索してください)。
そこの検索表は、生体での判別点が少ないので使えませんが、寄主がマテバシイ(Lithocarpus)はただ1種、G. nigra だけです。聞きなれない名前ですが、ながらくクワナケクダと混同されてきた種とのことです。その特徴に、脛節が全長にわたって暗褐色とある点がひっかかりますが、寄主植物が常緑カシ類という点で、クヌギ・クリに限定されるkuwanaiと区別できるようです。ちなみに、森津図鑑のニホンケクダはnigraとのことです。
尾片は、お示しの通り、側面から見て突起がみえる物です。背面から見て幼虫の頭部をかすめて見えるのは、尾片より前方にある第8背板のようです(側面からも見えていますね)。
投稿: ezo-aphid | 2014年6月28日 (土) 08時36分
ezo-aphidさん、
すみません、コメントを拝見して慌てたのですが、「ウバメガシの新梢に」とすべきところをうっかりマテバシイと書いていました。訂正しておきます。でもG. nigraの寄主植物が常緑カシ類ということであれば候補としては充分ですね。ながらくkuwanaiと混同されたいたというくらいなら生態写真で判別するのはまず不可能なんでしょうが、寄主植物の情報からひとまず?nigraとしておいてよろしいでしょうか。
投稿: おちゃたてむし | 2014年6月28日 (土) 17時32分
杉本さんの観察によると、nigra (Maki)の脛節は全長が暗褐色、マテバシイ・アカガシ・アラカシ・シラカシ・ウラジロガシが寄主。一方、nipponica Suenaga の脛節は淡色、ウバメガシ・クヌギが寄主、となっています。すこし悩むところですが、「ひとまず?nigra」でよろしいかと。
常緑カシ類は、まったく見わけがつかないので、言われるがままです。
投稿: ezo-aphid | 2014年6月28日 (土) 18時12分
ezo-aphidさん、
ご検討いただきありがとうございます。
ご助言にしたがって「?nigra」としておきます。
マテバシイとウバメガシは、実物を見間違うわけはないんですが、なぜかよく名前を取り違えてしまいます。失礼しました。
投稿: おちゃたてむし | 2014年6月28日 (土) 19時53分
昨日、ニホンケクダでコメントした杉本です。昨日も上記画像を拝見していたのですが、書き込む自身がありませんでした。本日手元の標本を確認したので私の見立てをお知らせします。私はクワナケクダGreenidea kuwanaiと思います。決め手は脛節の着色状況、基部が濃く、先端に向かって淡色になることです。もう一つの決め手は、幼虫の角状管間に存在する硬化板の形状で、クワナケクダは写真のように「富士山型」(尾片側が裾野、頭部側が山頂)を呈していることです。これに対しnigraでは頭部側の辺が長い「台形状」で、上片(長い辺)中央部にV字状のスリットができます。この形状はニホンケクダと同様ですので、ニホンケクダで映っている幼虫でご確認ください。疑問だったのはホスト。私も各地のウバメガシで採集したことがありますが、初めて見ました。これまでクヌギで採集し、最近の4年半ほど神戸に住んでいた時に、アベマキでも採集しました。クヌギ・アベマキともにコナラ属の中のクヌギ節であることから、クワナケクダはクヌギ節を選好するアブラムシと思っていたところでした。私ももう少しウバメガシを見てみようと思いました。
投稿: 杉本 | 2014年12月 8日 (月) 22時34分
杉本さん、
このような生態写真で確認できる特徴は多くないと思いますが、丁寧に見ていただき本当にありがとうございます。
「幼虫の角状管間に存在する硬化板」というのが最初よく理解できなかったのですが、ニホンケクダの画像と見比べて納得しました。ただ先に掲載した写真では分かりにくいと思いますので、この部分のよく見える画像を1枚追加しておきます。
これまでにクヌギやアベマキで確認されているとのことですが、この写真を撮影した明石公園ではアベマキが非常に多いので、今回のウバメガシの集団は偶然アベマキから移ってきて一時的に繁殖していただけと言うことは考えられないでしょうか。今後この場所のウバメガシは注意して見ておきたいと思います。
コメントをいただいてから過去の写真を見直すと、11月のニホンケクダと同じ日にアラカシの枝で撮った幼虫がG.nigraの特徴に合うことに気づきました。当初はこのウバメガシの種と見分けがつかず同種と考えていたのですが、硬化板の形が逆で、ニホンケクダと同じです。次の記事に掲載しますのでご覧いただければ幸いです。
投稿: おちゃたてむし | 2014年12月 9日 (火) 22時30分