「どんぐりの呼び名事典」
このたび世界文化社から「~拾って楽しむ~どんぐりの呼び名事典」(写真・文/宮國晋一)という本が出ました。
この日本で子供のころ、秋の林の中でどんぐりを集めた経験をお持ちでない方はほとんどないと思うのですが、特にどんぐりそのものに関心があるという人は少ないかも知れません。私自身もどんぐりと言えば木の種類によって形が異なり、中には食べられるものもあるという程度の知識しかなく、またそれ以上の興味を惹かれることもありませんでした。昆虫好きの人の中には意外に私と同じような植物音痴の方が多いらしいので、どんぐりに対する認識も同じようなものではないかと思うのですが、そういう人がこの本を一読すれば考えを改めること必定です。
たとえば各樹種について多数のどんぐりの写真が載せられていて、同じ種のどんぐりにも非常に多様な形や色、大きさの違いがあることが分かります。中でも見開き2頁に並べられた様々な形態のクヌギの殻斗は圧巻でしょう。これらの写真はフラットベッドスキャナーで撮影されたということですが、どんぐりの色や質感がとても美しく再現されています。
またどんぐりの成長曲線や時間の経過による色の変化、珍しい多果どんぐりや交雑による殻斗の形の変化、電子顕微鏡による花柱の形、さらに採集や保存のための手引きなど、著者独自の調査研究による知見が随所に盛り込まれていて、非常に多面的で充実した内容のどんぐり入門書になっています。
実はこの本の中の「どんぐりに寄生するタマバチ」というコラムで、以前このブログに掲載した写真を使って貰ったのですが、そのご縁でここに紹介させていただくことにしました。
著者の宮國晋一さんは「すばらしいドングリの世界」というホームページを運営されている方ですが、そのサイトをご覧になればこの本が長年にわたる詳細な調査の蓄積の上で書かれたものであることが納得されるでしょう。もちろん限られた紙数に収めきれなかった知見も多いはずで、続編が期待されます。
大きめのコートのポケットに入るくらいの大きさでお値段も手ごろなので、ちょうどこれから始まるどんぐりの季節、この本を手に公園や雑木林でも歩いてみるのはいかがでしょうか。
世界文化社刊・A5判 112ページ・定価1620円(本体1500円)
出版社の案内はこちらです。
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コメント
・・・・やっぱり本になりましたか。HPでは内容が多岐にわたっていたので、絞り込みに苦労したでしょうね。
題名は「ー拾って楽しむーどんぐり大事典」ではダメだったのでしょうかねー。
ところで、Synergus itoensisに「カシノドングリタマバチ」という和名は採用されていましたか?
投稿: ezo-aphid | 2014年9月 3日 (水) 21時20分
ezo-aphidさん、おはようございます。
確かにこの内容なら「大事典」がふさわしい気がしますが、すでに数冊出ているシリーズの一つとして出版するためにこのようなタイトルになったようです。
「ドングリタマバチ」については、限られた紙数で種名まで紹介することは出来なかったようです。実際にはすでに和名はつけられているんでしょうか。
投稿: おちゃたてむし | 2014年9月 4日 (木) 06時43分