« クダアザミウマ科の一種(?Liothrips sp.)・交尾行動?(改題) | トップページ | ムツトゲイセキグモの幼体 »

2015年7月22日 (水)

獲物を運ぶヒゲクモバチの一種(Dipogon sp.)

アラカシの幹を、クモをぶら下げて上って行くハチがいました。

_dsc3237b2
近づくと獲物をくわえたまま右に左に逃げ回るのですが、垂直面を重い荷物をぶら下げたままにしては驚くほどの速さで走るのでカメラの視野に捉えることすら難しいほどです。

_dsc32492
獲物の出糸突起をくわえているのでヒメクモバチ(ヒメベッコウ)ではないかと思ったのですが、その仲間なら普通は(全てかどうか知りませんが)獲物に馬乗りになった格好で運ぶはずです。

_dsc3250b
2、3度獲物を取り落としましたが、その度に速やかに枯葉の間から見つけ出し、すぐまた木を上りはじめます。

_dsc32642
獲物はヤチグモの一種でしょう。

_dsc3261b2
幹の窪みでひと休み。
獲物の口器に自分の口をつけているのは、こちらと同じように口器からにじみ出るクモの体液を吸収しているのだろうと思います。

_dsc3268b3
上の写真をよく見れば、ハチの大顎の下に褐色の長い毛が多数生えていることが分かります。この特徴と獲物の運び方から、このハチはヒゲクロバチ(ヒゲベッコウ)属(Dipogon)の一種であると判断しました。
森林総合研究所の竹筒ハチ図鑑によればヒゲベッコウ属はヒメベッコウ属にとよく似ているが、メスの小腮基部に多数の長毛を密生する、ということです。そして同属の2種の標本写真が掲載されていますが、この属は日本で10種以上記録されているが、いずれも形態的に非常によく似ており、同定は難しい、とあります。
また「狩蜂生態図鑑」(田中義弘著)のコシボソヒゲクモバチの項には獲物は糸イボをくわえ後退運搬、とあり、ヒゲクモバチ類は既存坑を利用、甲虫の脱出坑を利用するものが多い、と説明されています。

(2015.07.13・明石公園)

* * *

上の「甲虫の脱出坑を利用」という記述を読んで、6年前に同じ場所で見たハチを思い出しました。
以下、その時の写真です。

_dsc78752_2
立ち枯れのエノキで巣穴の閉塞作業をしていたハチです。周囲にはタマムシやキバチ、ヒメバチ類の脱出坑があくさんあり、この巣もそれらの坑の一つを利用して作られたものでしょう。
腹部の先を鏝のように使っていることからクモバチ(ベッコウバチ)の仲間であることまでは見当がついたのですが、そこから先が分かりませんでした。

_dsc78883_2
巣穴を塞ぐ材料は木屑を唾液で捏ねたようなものでしょうか。

_dsc78932_2
やはり大顎の下には長毛が密生しています。
撮影場所も同じで、翅の斑紋もよく似ているので今回のものと同種である可能性は高いと思います。

_dsc79122_2
6年越しの疑問が(多分)解決して、めでたしめでたし(?)

(2009.08.21・明石公園)

|

« クダアザミウマ科の一種(?Liothrips sp.)・交尾行動?(改題) | トップページ | ムツトゲイセキグモの幼体 »

クモ類」カテゴリの記事

膜翅目」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 獲物を運ぶヒゲクモバチの一種(Dipogon sp.):

« クダアザミウマ科の一種(?Liothrips sp.)・交尾行動?(改題) | トップページ | ムツトゲイセキグモの幼体 »