レデューサー付き顕微鏡アダプター
虫もプランクトンも目新しいものはなかなか撮れないので、今回は趣向を変えて顕微鏡撮影機材の紹介です。
上は昨年頃まで使っていた機材で、オリンパスBHに半自作のアダプターを介してニコンのD7000を載せています。アダプターの中の撮影レンズ(リレーレンズ)はオリンパスのFK2.5×ですが、それとカメラとの間にレデューサーとしてケンコーのACクローズアップレンズNo.5を加えています。
FK2.5×は元来35mm判で使うことを想定した倍率設定なので、センサーの面積が半分以下のAPS-Cサイズのカメラで使用するには倍率が高過ぎ、面積にすれば10×で視野数18の接眼レンズを通して見える視野の僅か23%ほどしか画面に収まりません。中心の良像範囲だけ使っているとも言えますが、それにしてももう少し広く写したい場合も多いでしょう。それならもっと低倍率のレンズを使えば済む話ですが、FKレンズでは2.5×以下の倍率のものはなく、次世代のLB対物レンズ(長頸タイプ)用のNFKなら1.67×がありますが現在では入手困難です。またコリメート法であれば接眼レンズの視野全体を収めることも可能ですが、カメラと接眼レンズの相性によっては中心部にハレーションが出やすい等の問題もあります。そこで、天体写真を撮る方にはお馴染みのレデューサーを入れる方法を試してみることにしました。
FK2.5×は元来35mm判で使うことを想定した倍率設定なので、センサーの面積が半分以下のAPS-Cサイズのカメラで使用するには倍率が高過ぎ、面積にすれば10×で視野数18の接眼レンズを通して見える視野の僅か23%ほどしか画面に収まりません。中心の良像範囲だけ使っているとも言えますが、それにしてももう少し広く写したい場合も多いでしょう。それならもっと低倍率のレンズを使えば済む話ですが、FKレンズでは2.5×以下の倍率のものはなく、次世代のLB対物レンズ(長頸タイプ)用のNFKなら1.67×がありますが現在では入手困難です。またコリメート法であれば接眼レンズの視野全体を収めることも可能ですが、カメラと接眼レンズの相性によっては中心部にハレーションが出やすい等の問題もあります。そこで、天体写真を撮る方にはお馴染みのレデューサーを入れる方法を試してみることにしました。
このアダプターの構成ですが、カメラボディ側から説明すると、まず20mmの中間リング、次にニコン純正のBR-2リング(リバースリング)、それに49-52mmのステップアップリングを介してクローズアップレンズを取り付けています。
その下は古いミノルタの顕微鏡アダプターの部品やら不要になったフィルターの枠やらステップダウンリングやら、これまでに溜め込んだがらくたを色々組み合わせたものです。
写真の組み合わせでは、これでちょうど双眼部とカメラ側で同時にピントが合いますが、合わない場合は中間リングの長さを変えたり空のフィルター枠を組み合わせたりして調整する必要があります。
次に撮影結果です。
まず1枚目は、レデューサー無しで撮ったもの。対物レンズはプランアクロマートの10×、被写体はMWSさんの珪藻プレパラートです。双眼部とカメラのピント位置は合わせてあります。実測で画面長辺が0.93mm、カメラのセンサーが23.6mmなので、対物の倍率が正確であれば撮影レンズによる倍率は2.54×という計算になります。
2枚目は同じ条件でレデューサーを使用したもの。長辺で1.44mmの範囲が収まっていて、撮影レンズとレデューサーでの倍率は1.64×、35mm判に換算するとぴったり2.5×、つまり35mm判カメラで通常の方法で撮った場合とちょうど同じ画面になりました。周辺画像にはやはり少し像の乱れがありますが、それがレデューサーのせいなのか、対物レンズあるいは撮影レンズの性能なのか、35mmフルサイズのデジカメを持っていないので確かめることが出来ません。
3枚目は2枚目の画像から、レデューサー無しの1枚目と同じ範囲を切り出したものです。この範囲だけに限ればレデューサー使用による像の劣化はほとんど無いと言えそうです。もちろん対物レンズを替えればまた違った結果になるかも知れませんし、画質を最優先にするならこういう余計なレンズを加えない方が良いことは確かでしょうが、ともかくも小サイズセンサーのカメラで十分な撮影範囲を確保できる方法としてそれなりの使い道があると思っています。
最後になりましたが、この記事を途中まで書いたころに念のためレデューサーという言葉で検索をかけてみて、レデューサー入りのマウントアダプターというものが各種販売されていることを知りました。APS-Cやフォーサーズのミラーレスカメラで35mm一眼用のレンズを使うためのものです。中国製のものでは1万円前後からありますが、ミラーレスカメラを使うのならこれが手っ取り早いかも知れません。
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コメント
淡路島の生き物uni2です。
私も微生物が好きで顕微鏡にカメラを乗せるのですが、工夫不足でなかなか思うような写真を撮れず、また時間がかかるので最近は触らなくなりました
ここで見せてもらう顕微鏡写真は本当に素晴らしいです。
顕微鏡撮影に限らず、日々試行錯誤されながらこの域に達せられたのだと思います。
私もまた顕微鏡撮影をしたくなってきました!
少し前に、明石で写真を展示されてたとき(K新聞に載ってらしたのそうですよね)、タイミングが合わず行けませんでした。お会いできず残念です。
投稿: uni2 | 2018年12月20日 (木) 17時08分
uni2さん、こんばんは。お久しぶりです。
「淡路島の生き物たちブログ」、タルマワシの写真には驚嘆しました。楽しみにしていますので、お忙しいでしょうがちょくちょく更新してくださいね!
顕微鏡写真は確かに時間も手間もかかるので、私も準備や後片付けを思うとやる気がなくなることが度々です。でも面白いですよね。
明石の写真展は多分アスピアでのものだと思いますが、私ではありません。明石周辺で鳥や昆虫を撮っている方で、明石公園でよくお会いするのですが、精力的に写真展を開いておられます。
私も機会があればと思っていますが、無精者なのでなかなか具体化しません。いつか実現することになれば当ブログでもお知らせしますので、その時はよろしくお願いいたします。
今後とも、時々覗いていただければ嬉しいです。ありがとうございました。
投稿: おちゃたてむし | 2018年12月20日 (木) 20時10分
おちゃたてむしさんこんにちは。これまで、「おもちゃたてむし」という面白い名前の昆虫がいるのだろうと思い込んでいました。失礼しました。
顕微鏡の撮影範囲を広げるとのこと。何故クローズアップレンズで広がるのか理解できていません。それができるのであれば、夢のような話です。できれば、一度試してみたいと思います。木材で筒を作るとして、カメラからクローズアップレンズを何ミリ離せば良いのでしょうか。その他に注意点などありますでしょうか。現状ではFK2.5を使うしかないので諦めていましたが、撮影範囲が広がるのであれば是非作ってみたいと思います。差し支えない範囲で教えていただければ嬉しいです。
投稿: 顕微鏡道楽 | 2018年12月28日 (金) 07時11分
顕微鏡道楽さん、こんばんは。
レデューサーは天体写真を撮る人にはよく知られていて、対物レンズの焦点距離を短くし、倍率を下げて視野(画角)を拡げるために使われるます。上記のアダプターの場合は撮影レンズとカメラの間に凸レンズを挿入しているわけですが、対物レンズの作る像と撮影レンズの位置は変わりませんから、カメラ側にできる像の位置が近くなり、その分小さくなる(写る範囲は広くなる)わけです。もちろん、レデューサー無しの場合よりカメラを撮影レンズに近づけなければなりません。FK2.5Xはもともと35mm判をカバーするように作られているので、適当な凸レンズを加えれば余り画質を落とさずに像を小さくすることが可能なのではないかと考えた次第です。
ご質問のカメラとクローズアップレンズ間の距離ですが、記事の組み合わせの場合前者のマウント面から後者の金枠上端までが約28.5mm、カメラのフランジバックが46.5mmなのでセンサー面までは約75mmとなります。ただこれは撮影レンズとクローズアップレンズ間の距離によっても変わります。上のアダプターではぶつからない程度に接近させていますが、これが最適かどうかについては実はよく分かりません。
順序としてはまずレデューサー(クローズアップレンズ)の位置を決め、その状態で接眼レンズを通して見た像とカメラ側の像に同時にピントが来るように、カメラ位置を調整します。
もし同様のアダプターを作られるのであれば、上にあげた数字はあくまで参考程度に考えていただいて、カメラ位置はある程度調節できるようにされた方が良いでしょう。その際、プラスマイナス1~2ミリ以下の微調整は必要ないようです(差が分からないという意味で)。また上の写真ではクローズアップレンズが普通とは逆の向きに付いています。比較テストをしたわけではありませんが、この方が収差は少なくなるはずです。ケンコーのACクローズアップレンズにはNo.5の他に2,3,4もあるので、縮小率がより低い方がよければこれらが使えると思います。アクロマートでない普通のクローズアップレンズは画質の点から使えないでしょう。
因みに、先日コメントをいただいたオナガミジンコの写真はニコンのオプチフォトに同様のアダプターを使って撮ったものです。撮影レンズはニコンのCF-PL2Xと4Xで、すべてトリミングなしです。
以上、あまり上手く説明できたとは思えませんが、ご不明の点があれば何なりとご質問ください。
投稿: おちゃたてむし | 2018年12月28日 (金) 22時50分
おちゃたてむしさんこんにちは。非常に詳しく解説していただきましてありがとうございました。何故クローズアップレンズを使うのか、疑問に思っていましたが良く分かりました。レデューサー入りのマウントアダプターをネットで調べてみましたが、製品を比べたリポートがありました。価格も1万円から5万円台までありまして、低価格の商品はかなり眠い写真になるようです。周辺部の劣化は高価格商品ほど少ないようでした。おちゃたてむしさんのACクローズアップレンズを利用する方が、高価格マウントアダプターに近いような感じがしました。オナガミジンコの写真は素晴らしいので、クローズアップレンズ使用で十分と思います。私の方は、クイック交換ステージを作っていましたが、注文していた外付けメカニカルステージが来ましたので、一応今日で終わります。次は、是非レデューサーを作りたいと思います。工作途中で迷ってしまったら、是非アドバイスをお願いします。
今年は、おちゃたてむしさんの素晴らしい写真を拝見できたし、アドバイスもいただけて嬉しかったです。来年もよろしくお願いいたします。良いお年をお迎え下さい。
投稿: 顕微鏡道楽 | 2018年12月29日 (土) 07時50分
ありがとうございます。こちらこそ、同じ趣味をお持ちの方がおられることが分かって喜んでいます。
来年もよろしくお願いいたします。
投稿: おちゃたてむし | 2018年12月29日 (土) 13時36分
おちゃたてむしさん、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。新年早々申し訳ありませんが、教えていただきたい事があります。レデューサーの件です。早速ACクローズアップレンズを購入しまして、現在はカメラに取り付けるためのレンズアダプターの到着待ちをしています。それ以外の部品は木材で作れそうです。ほとんどの図面は出来たのですが、一つ疑問な寸法があります。FK2.5の上面からACクローズアップレンズの枠下面までの寸法です。出来るだけ近づけるとのことですが、ACクローズアップレンズの枠下面とFK2.5の上面の位置を同一面にした方が良いのでしょうか。それとも何ミリか離した方が良いのでしょうか。その部分の寸法が分かれば、すぐに加工に入れそうです。お忙しいところ申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。
投稿: 顕微鏡道楽 | 2019年1月 2日 (水) 15時35分
顕微鏡道楽さん、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお付き合いお願いいたします。
私の作ったものでは、FK2.5の上端からクローズアップレンズ金枠下面まで約2mmです。ただし、これは成り行きで決まったようなもので、他の寸法で試していないのでこれが最適かどうかは実のところ分かりません。本来はこの寸法と、それに伴ってクローズアップレンズとカメラボディの間隔を調整しながらテスト撮影を繰り返し、最良の位置を決めるべきなのでしょうが、それにはかなりの手間がかかりそうです。とりあえず上記の寸法を参考に組み上げてみて、結果が思わしくなければ少々面倒ですがそれぞれの位置を変えてテストしてみるという方針をとられたらいかがでしょうか。機材の違いもあり、実際にやってみなければ分からない要素が多いと思います。
投稿: おちゃたてむし | 2019年1月 3日 (木) 16時36分
返信ありがとうございます。私の方も偶然に2mmで図面を描いていました。0mmではあまりにも近すぎる気がしていました。ほとんど木製で考えていますので、修正変更も簡単です。レンズアダプターは中国から送られてくるようなので、2週間ほど待たなければなりません。その部分だけを残して、制作に入るつもりでいます。思い立ったら吉日ですね。
投稿: 顕微鏡道楽 | 2019年1月 3日 (木) 17時32分
良いものが出来るといいですね。
また結果を教えてください。
投稿: おちゃたてむし | 2019年1月 3日 (木) 20時07分