カテゴリー「機材」の5件の記事

2018年12月20日 (木)

レデューサー付き顕微鏡アダプター

虫もプランクトンも目新しいものはなかなか撮れないので、今回は趣向を変えて顕微鏡撮影機材の紹介です。

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上は昨年頃まで使っていた機材で、オリンパスBHに半自作のアダプターを介してニコンのD7000を載せています。アダプターの中の撮影レンズ(リレーレンズ)はオリンパスのFK2.5×ですが、それとカメラとの間にレデューサーとしてケンコーのACクローズアップレンズNo.5を加えています。
FK2.5×は元来35mm判で使うことを想定した倍率設定なので、センサーの面積が半分以下のAPS-Cサイズのカメラで使用するには倍率が高過ぎ、面積にすれば10×で視野数18の接眼レンズを通して見える視野の僅か23%ほどしか画面に収まりません。中心の良像範囲だけ使っているとも言えますが、それにしてももう少し広く写したい場合も多いでしょう。それならもっと低倍率のレンズを使えば済む話ですが、FKレンズでは2.5×以下の倍率のものはなく、次世代のLB対物レンズ(長頸タイプ)用のNFKなら1.67×がありますが現在では入手困難です。またコリメート法であれば接眼レンズの視野全体を収めることも可能ですが、カメラと接眼レンズの相性によっては中心部にハレーションが出やすい等の問題もあります。そこで、天体写真を撮る方にはお馴染みのレデューサーを入れる方法を試してみることにしました。

Dscn7170
このアダプターの構成ですが、カメラボディ側から説明すると、まず20mmの中間リング、次にニコン純正のBR-2リング(リバースリング)、それに49-52mmのステップアップリングを介してクローズアップレンズを取り付けています。
その下は古いミノルタの顕微鏡アダプターの部品やら不要になったフィルターの枠やらステップダウンリングやら、これまでに溜め込んだがらくたを色々組み合わせたものです。
写真の組み合わせでは、これでちょうど双眼部とカメラ側で同時にピントが合いますが、合わない場合は中間リングの長さを変えたり空のフィルター枠を組み合わせたりして調整する必要があります。

次に撮影結果です。

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まず1枚目は、レデューサー無しで撮ったもの。対物レンズはプランアクロマートの10×、被写体はMWSさんの珪藻プレパラートです。双眼部とカメラのピント位置は合わせてあります。実測で画面長辺が0.93mm、カメラのセンサーが23.6mmなので、対物の倍率が正確であれば撮影レンズによる倍率は2.54×という計算になります。

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2枚目は同じ条件でレデューサーを使用したもの。長辺で1.44mmの範囲が収まっていて、撮影レンズとレデューサーでの倍率は1.64×、35mm判に換算するとぴったり2.5×、つまり35mm判カメラで通常の方法で撮った場合とちょうど同じ画面になりました。周辺画像にはやはり少し像の乱れがありますが、それがレデューサーのせいなのか、対物レンズあるいは撮影レンズの性能なのか、35mmフルサイズのデジカメを持っていないので確かめることが出来ません。

_dsc71032
3枚目は2枚目の画像から、レデューサー無しの1枚目と同じ範囲を切り出したものです。この範囲だけに限ればレデューサー使用による像の劣化はほとんど無いと言えそうです。もちろん対物レンズを替えればまた違った結果になるかも知れませんし、画質を最優先にするならこういう余計なレンズを加えない方が良いことは確かでしょうが、ともかくも小サイズセンサーのカメラで十分な撮影範囲を確保できる方法としてそれなりの使い道があると思っています。

最後になりましたが、この記事を途中まで書いたころに念のためレデューサーという言葉で検索をかけてみて、レデューサー入りのマウントアダプターというものが各種販売されていることを知りました。APS-Cやフォーサーズのミラーレスカメラで35mm一眼用のレンズを使うためのものです。中国製のものでは1万円前後からありますが、ミラーレスカメラを使うのならこれが手っ取り早いかも知れません。



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2012年8月 2日 (木)

高倍率ズーム付コンデジ+クローズアップレンズ

まずはお知らせ。

このたび長坂蛾庭のHepotaさんが「Raynoxのクローズアプレンズによる高倍率マクロ撮影」という画期的労作を公開されました。これは必見!です。

この表題だけ見ると知らない人にはなんのことやら分からないと思いますが要するに、近頃大変普及している高倍率ズーム付きのコンデジに、これも高倍率のクローズアップレンズを装着して
手軽に(他の方法に比較して、です)高倍率マクロ撮影(被写体はもちろん昆虫!)を楽しむためのノウハウをまとめたものなのです。

手軽に、と言ってももちろんメーカー非推奨の方法なので標準的な教科書があるわけでもなく、満足な結果を出すためにはかなりの試行錯誤が必要でしょう。このHepotaさんの記事には機材の選び方からその組み合わせや取り付け方法、そして実際の撮影法に至るまでのすべてが手際よくまとめられていて、これを読めばその手間と労力を大幅に省くことが出来ることは間違いありません。しかし最大の特徴は、どうすれば良いのかということだけでなく、なぜそうなるのかという理由が明快に説明されているところだろうと思います。
その点、写真やカメラやにあまり興味のない人が読むと少しばかり理屈っぽい印象を受けるかも知れませんが、いくら手軽に楽しみたいと言っても実地面での条件は千差万別なので、それらに対応するには最低限の理屈は不可欠でしょう。
また表題の撮影方法に限らず広く昆虫写真やマクロ撮影に応用できる色々な知識やアイデアも含まれているので、現在の機材と撮影法に満足している方にとっても参考になる部分が多いと思います。

ということで、これから昆虫写真を始めたい、あるいはより高倍率で撮る方法を探しているという方には是非読んでいただきたい記事だと思ったので、お節介ながらここで紹介させていただきました。

次は作例。

紹介文だけでは寂しいので、私の撮った実例写真を何枚かお目にかけます。
実は2年ばかり前に虫の動画が撮れないかと思って用意した機材があって、結局一通りテスト撮影をしただけでお蔵入りになっていたのですが、今回それをあらためて引っ張り出してきて手近な虫をいくつか撮ってみたものです。
使っているクローズアップレンズがHepotaさんの記事のRaynoxではなく、また
3枚重ねというかなり強引なことをやっているので画質は落ちるかも知れませんが、基本的に同じ方法なので、参考程度に見ていただけたらと思います。

カメラのパナソニックのDSC-FZ28 DMC-FZ28は、35mm版換算で27~486mmの18倍ズーム付、有効画素数1010万画素のコンパクトデジタルカメラ。それにケンコーのACクローズアップレンズNo.5を逆向きに3枚重ねて取り付けています。(この場合なぜか逆向きの方が収差が少ないのです。)
カメラレンズを無限大に合わせた時の最大倍率(35mm版換算・以下同じ)は約5.8倍、画面周辺がけられずに撮れる最低倍率は1.2倍くらいです。すべて最小絞りのF8.0で撮っています。
すべてjpegで撮っていますが、色調やコントラスト、シャープネスは編集ソフトで多少いじっています。

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最初はクサギカメムシの幼虫。約3.3倍、ノートリミングです。

P1070927
クマゼミの顔、約1.3倍、ノートリミング。

P1070948
クマゼミの単眼部、最大倍率の約5.8倍ノートリミング。画面周辺部がかなり乱れています。

P10709143
クロタマゴバチの一種、最大倍率の画像から50%(長さで)にトリミングして約9.6 10.6倍。被写界深度が浅いです。

P1080016
昨日も登場したヒゲナガカメムシ、約2倍、ノートリミング。

P1080009
上の幼虫、約5.8倍、ノートリミング。

P10709812
キイロテントウ、約5.8倍から70%にトリミングして約7.1倍。

P1080042
イトカメムシ、約2.9倍、ノートリミング。

P10800483
同上、約5.8倍から50%にトリミングして約9.6 10.6倍。

P10801003
アワダチソウグンバイの幼虫、これもトリミングで約9.6 10.6倍。トリミングしているのに周辺部の乱れが目立ちます。

(2012.08.01・神戸市中央区)

 

 

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2012年3月21日 (水)

ヒメコバチ科の一種(?Quadrastichus sp. 雌)(改題)

私もやってみました。
CombineZ
というフリーソフトによる深度合成はHepotaさんの紹介記事を見て以来一度試して見ようと思いながら機会がなかったのですが、先日のBABAさんの記事でPediobius atamiensisの素晴らしい画像を見てこれは是非やってみなければという気になりました。

Himekobachi_1

Himekobachi_2

Himekobachi_3_2
体長1.4mmほどのヒメコバチです。こちらの記事のその1.(
Tetrastichinae 亜科)と同種だと思います。
使った枚数は上から66・38・8060枚で
、CombineZPで合成しました。なかなか思いどおりには行きませんが、そのうちコツがつかめてくればもう少しましなものが出来ると思います。

(2012.03.19・明石公園で採集)

* 2012.03.21:3枚目の写真を入れ替えました。あまり変わりはないんですが・・・。 *

* 2012.03.26・追記とタイトル変更 *

ezo-aphidさんより、上條先生のコメントをいただきました。「?Quadrastichus sp. 雌としておきます」ということで、詳しくはコメントをご覧下さい。タイトルの「ヒメコバチ科の一種」に属名を加えました。 

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2011年3月13日 (日)

高倍率撮影解像力テスト

Hepotaさんに薦められていた「諭吉ホログラムテスト」を手持ちのレンズで試みてみました。本当はもう少し広範囲のデータを出したかったのですが、始めてみると思いのほか時間がかかり、またつまらないミスも重なって、今回お見せできるのはとりあえずレンズ4本、倍率は4倍の結果だけになります。条件が同じでないので正確な比較は出来ませんが、興味のある方はHepotaさんの記事と併せてご覧いただければ幸いです。

使用レンズは下記の通りです。

a. FUJINON-EX 50mm F2.8(35mm判引き伸ばし用レンズ・逆向き使用)
b. Micro-NIKKOR Auto 55mm F3.5(35mm判フィルムカメラ用マクロレンズ・逆向き使用)
c. ZUIKO AUTO-MACRO 38mm F2.8 (35mmフィルムカメラ用・拡大撮影専用レンズ)
d. E.ROKKOR 30mm F4.5(ハーフ判引き伸ばし用レンズ・逆向き使用)

等倍以上の高倍率撮影に使えそうなレンズという基準で選びました。使用カメラボディはニコンD200で、ベローズを介してレンズを取り付けています。

被写体はHepotaさんのテストに準じて現行一万円札のホログラム部分です。
掲載した画像は3872×2592ピクセルの画面中央部の200×200ピクセルの部分を切り取ったもので、画面をクリックすると等倍表示となります。

X4

ここに写っているNの文字は高さが約0.25mmあります。そのNの字を構成しているたくさんの正方形をどの程度明瞭に分解しているかで解像力を判断しようというわけですが、いくつか問題があります。

まず、困ったことにホログラムは照明の角度の僅かな違いで写り具合が大きく変わってきます。今回はそのあたりを統一することが出来なかったので、文字の色もレンズごとに変わってしまい、そのことが見た目の解像度にも影響しているかも知れません。
更に、こういう厚みのない被写体を撮影した場合、最良のピント位置を見つけ出すのが難しいという問題もあります。いわゆる前ピン、後ピンが確認出来ないので、例えばピントが外れているのかレンズの解像力の問題であるのかが1枚の画像だけでは判断出来ないということです。このテストではモニターで確認しながら少しずつピントをずらせて何枚も撮影し、最良のピント位置を探すという方法をとりましたが、これで万全かと言えば自信がありません。
最後に、テストしたレンズはどれも古いものです。見た目にはどのレンズも目立った傷や曇りは見られませんが、正直なところ新品時の性能をどの程度保っているかは不明です。現行製品にはZUIKOの38mmやROKKORの30mmに相当するレンズは存在しないので仕方ないのですが、ある程度のフレアの増加やコントラストの低下はあると思います。

以上のように断った上でテスト結果を見ると、やはりZUIKOの38mmの結果が良いようです。NIKONの55mmは昔よく使っていたレンズで、とてもシャープだという印象を持っていたのですが以外に思わしくない結果です。ROKKORの30mmは解像力は悪くないのですがかなりフレアっぽくてコントラストがありません。少し曇りが生じているのかも知れません。

どのレンズもある程度以上絞り込むと解像度が目に見えて低下しますが、その落ち方がレンズによって違うようです。例えばZUIKO38mmではF4までが最良です。ただ、実際に昆虫撮影に使ってみればF4ではピントが浅くて実用的ではありません。

標本ならともかく、野外で昆虫の生態を撮るのにこのようなレンズを使う人は今ではほとんどいないと思いますが、個人的に興味があったのでこの機会にテストをしてみました。どなたか物好きな方の参考にでもなればと思います。

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2011年1月28日 (金)

虫撮りカメラ

冬場で少々ネタ切れ気味なので、今回は一休みして私の使っているカメラを紹介します。こういうものに興味のない方には、こんな大層なものをぶら下げて虫撮りをしている苦労を察していただければ充分です。
比較的倍率の低い撮影にはごく普通の60mmF2.8のマクロレンズを使っているので、特に説明することもありません。ここでは主に等倍以上の撮影に使っているものを紹介します。

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カメラはニコンD200、レンズはズイコー1:1マクロ80mmF4とズイコーマクロ38mmF2.8の2本を自作ベローズを介して取り付けています。これらのレンズは昔のオリンパスOMシリーズ(35mm判フィルムカメラ)用で、ベローズか中間リングを併用することが前提の接写専用レンズです。
写真のレンズは38mmの方で、ベローズは一杯に伸ばした状態です。ストロボはニコン製では一番小型のSB-400で、延長コードを併用します。

センサー上での撮影倍率は、80mmでは約×0.25~×1.8、このレンズに専用のクローズアップレンズを取り付けると約×1.0~×2.8、38mmでは約×2.7~×6.0の範囲になります。
80mmは製品名が表しているように等倍(1:1)撮影を設計の基準にしたレンズで、メーカーは×0.5以上での使用を推奨していますが、複写のような撮影でなければ×0.25でも画質の低下は感じられません。
このセットで撮る場合はほとんどストロボ使用(自動調光)で、感度設定はISO200、
絞りは80mmでF11~16、38mmでF5.6~8くらいです。
ベローズには微動装置はなく、レンズには微調整用としてヘリコイドもついていますがストロークはごく短いので、ピント合わせにはカメラ全体を前後させる方法しかありません。レールには撮影倍率の目盛りを入れてあって、被写体を見てまず倍率を決めてからカメラを近づけるという手順になります。不便なようですが慣れればそうでもなく、ピント合わせで倍率が変化しないというのは便利でもあります。

_dsc0258_2 
ベローズはもともと1990年に当時入手したオリンパスOM2用に作ったものでアルミ製、マウント部はメーカー製の中間リングから取り外し、蛇腹はやはりメーカー製のものの交換部品を使っています。
レール部は20mm角のコの字型のアルミチャンネル材で、簡単なリンク機構を内蔵して自動絞りが連動するように工夫しています。
3年ちょっと前からカメラをニコンD200に換えたのですが、このままではニコンには使えないので、更にアダプタを作って間に挟んであります。かなり無理のある方法なので自動絞りの連動が複雑になり、たまに調整しないと動作が不安定になることがあります。いずれ新たに本体を作り直すことを予定して一時しのぎのつもりで使っているのですが、ひまがなくて本体にはまだ手をつけられません。
この構造では絞り値の情報がボディー側に伝わらず、露出計やストロボの調光が正常に機能しなくなりますが、それは露出補正で誤魔化しています。要は開放絞り値と実絞り値の差が必要なので、例えばF4のレンズをF11で使う場合、プラス3EVの補正をかければいいわけです。
ストロボ用のシューは光軸の周囲を回転します。またシューとストロボは可動式の金具でつないでいて、被写体の真上や、逆光気味の照明が欲しい時に伸ばして使います。SB-400は発光部を上方90度まで回転できるので便利です。シューが2個あるのはオリンパス時代に2灯式のマクロストロボを取り付けていたためで、余った方はピント合わせ用のLEDライトなどをつけるのに使っています。
ストロボには簡単なディフューザーをつけます。百円ショップのクリアファイルの表紙やアルミテープ、マジックテープ等、材料も安くかさばらないのでレンズや倍率に合わせて何種類か作っています。リングライト型のディフューザーも作っていますがあまり使いません。

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ベローズのレールの中には伸縮式の支え棒のようなものを収めていて、上はそれを一杯に伸ばした状態です。棒の先を木の幹や地面、あるいはその上においた自分の手に押し付けてカメラを安定させるためのものです。また木の枝や葉を片手で持って撮影しなければならないような時に、その手のひら
に先をのせるようにすればかなり楽になります。
三脚を使うときにはジャンク品を改造したフォーカシングレールを取り付けますが、野外で三脚を使うことはまずありません。
ベローズ本体に38mmをつけて約770g、上の写真の組み合わせだとほぼ2kgとなります。コンデジで同程度の倍率の撮影をしている方もあることを考えればほとんど苦行ですが、メーカー製で唯一高倍率の撮影の可能なキャノン65mmF2.8が710gなので、これくらいは仕方がないとあきらめています。

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